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Ep24:虹の鉱石とのにらみ合い

 俺は新天地パヘクワードの虹の鉱石の原理を知る事から始めるように、と王国エイドカントリーズ構内のアントマニーヌ鉱山にて、責任者のデミューラ・マキシマスと出逢う。社会学習としての任務のはずだったのに、初見で体力を奪われそうだった。まだ俺が幼い証拠である。引き返し、アンの待つ宿舎へと足を運ぶ。


――宿舎

「どうだった?」

「ええ。いきなり体力を奪われかけましたよ」


 本当は、王国で学んでみたくて新天地パヘクワードと虹の鉱石の原理が知りたくなった為だった筈なのに、逆手を取られた感じである。


「王国では新天地計画という話が挙がっているんだそうだ」

「それは貧困から救うという意味ですか?」

「それもある。貧困どころか土地全体が崩れ去るのだそうだ」

「だけど新たな土地を目指さないと“行けない”のでは?」

「まぁね。ただ、虹の鉱石のエネルギーが枯渇すると聞いたよ」

「え・・・?」


 宇宙の真理を先読みすると、岩が運ばれ、幅1メートルの鋼鉄の様な形状の円形研磨機で削られると、鉱石が見えてくる。デミューラによると、研磨機の熱量によって、丸みを帯びた虹色の鉱石の形状が出来るという。仕組みとしては、坑内の温度の調整が、水と歯車によって冷却されているから削り取られ切らずに、丸みを与えることが出来るとの事。

 その影響で、日光の強い季節でも涼しさを得られ、少ない汗で体力的にも労働環境としては楽だという。しかもこれは、エネルギーという仕組みだとも聞いた。


「虹の鉱石で出来た水は甘味を増すんだ。果物と違って香りは無いけど、美味しいよッ」

「では、いただきます」


“ゴクゴクゴクゴク、ゴックン”

(あ・・・甘くて、すっきりとする!)


「そうそう、その目だ。ここは主に発掘調査も兼ねている工場なんだ。眼が覚める様な体験をこれから令状が届くまで続ける事だ」


 なんという広々とした環境なんだ。俺は、このような場所で涼しく汗もかかず、暮らせるというのか?では、あの貧困なる生活をしている家族や民達はどうして、暑い中でも肉体労働を強いられる?俺は「貧困を救う」と言いながら、何故か恥ずかしい思いをする。


 すると、デミューラは「子供の頃と同じか」と尋ねてくる。俺はもちろん「大人の様に」と答えたが、彼にはその言葉が何故か嘘を言っている様に感じ取れたようだ。彼は傍にある虹の鉱石を持ってきて「これはまだ幼い」と俺に教え、「見ていろよ」と言って目の前にある研磨機に挟み込む。すると次第に岩石だった塊が見た事も無い宝のように輝きを放ち出す。


「ライズ、これが虹の鉱石の本体だ。君はこれに水を掛ける役割をする」

「水を掛ける?」

「どの程度削れているか、削った事により、どの程度の圧力を得ても崩れないのかを測るんだ」


 光に照らすと多色変化するその虹の鉱石に蓄えられたエネルギーが膨張する様に、水脈を通って流れてゆく。これがこの大地を浮遊させている動力源となるとして、彼の説明を受けていると、俺も一瞬だけ天文学的な関係で空へ飛び立ちたくなっていく。この透明で蒼灰そうはいなものにどの位の価値が認められているのだろう。するとデミューラは水桶を回す歯車を示し、俺にこのような説明をする。


「歯車が回れば、この水脈を巡って各鉱脈にも虹の鉱石のエネルギーが流れてゆくんだよ。それに準じて水質もきれいになるから、そこへ棲息している魚も美味しくなる筈だと信じられてきた。それにこれは機械工学と呼ばれている文明の一つの欠片カケラさ」


 機械工学とは何だろうか。確かにアクスドリーマヌでの漁区で獲れた魚は、油が少なく生でも食べられた。それも歯車が回る様に鮮明だった。俺の場合は、母・フルレが火で炙って食べさせてくれたが、アンジェル高校までの学園生活では大体が生だった。新鮮で肉厚で美味しいと想えたのは、育てる人の気持ちが籠っていたからか、還元させるという意志を感じられてしまった。そもそも機械という仕組みを俺は知らない。


「機械というのは何も食べ合う事などしなくていい。生物は食べ合い、増幅させることが出来るが、コレは戻せるエネルギーが在るなら戻してやればいい方なんだよ」

「きっと素直なんですね」

「え?そんな事を始めて言われた。私は研究熱心な人間じゃない方だからね」


 デミューラは気恥ずかしそうに、手を後頭部にやり、摩っていた。頭が痛いのかと思っていたがそうではなく、持論について聞いている俺に対して照れているのだった。それはまるで教師に褒めてもらった生徒のような感覚だろう。


「虹の鉱石は輝けば輝くほどに人体などの生命にない、再生の力を宿すんだよ。それは人肌を繋げるように固まるようにね、その粒子が下でなく、中空に留まって固まる特性を持つんだよ」

「つまり、繋がる意味での再生という訳ですか?」

「そうさ。人という生き物はたとえば、他の肉を喰らって自らの体の組織を繋げることが出来るんだ。しかしこの鉱石は自然に融け合い、その体の形を変えることが出来るんだよ」

「つまり、変化を兆す?」

「そう。だから味がする。このパンを作るのにコレの石の力が宿る水を含むと、透けるような甘さと、他の“旨味”を繋げるという効果があるのさ」

「そうですか・・・」


 しかし、この水脈は円を描くように数々の脈となって形を創っている。それ程までに鉱石同士を融かし合い、固め合うというのか。そしてそのエネルギーがこの大地を宙に浮かせているというのか?何れにしろこれだけで貧困から導く贅沢とは異なる形を有する。これを人の手によって流れを変えていけば、他の地区にも均等に栄養を与えることが出来るはず。

 そのときに、俺の肩の付け根に熱の籠った感覚があり、記憶にある強き意志が吹き上がりそうだった。分け与えるのに王国にだけ偏っている。そう、怒りの様な感情だ。


「・・・人の手によるものなら、なぜ貧困を救えない?」

「どうした?ライズ、今は勤務中だろう。貧困が何だというんだ?」

「あ・・・、いえ。俺の過去をくすぐっていたのを思い出したんです」

「過去?それはこの虹の鉱石との流れと関係あるのかい?」

「えぇ、一応は・・・」

「詳しく聞かせてくれよ」


 俺は勤務の場であるのに、貧困に対する一つの疑念をデミューラに話さなくてはならなくなった。だが、彼は「思いが無ければ働く意味がない」といって頭を横へ降り、微笑んでくれるのだった。歓迎されているのか分からない事を感じていると、「とんでもない」と言って家族の様に迎えてくれるのだった。

 他の職人にも同様に接しているという彼にも、貴族だから思いやりが無くていいのかという、苦い思いがあり、ここへ勤務して来るたびに虹の鉱石に願いを込めるという。それも「均等に回れ」という意味だった。


 こうして、俺はこの鉱山で流れぬ汗を衣服へ着けては、アンの待つ宿舎へと戻って4の年の間の日々を王国の為に働くことを約束したのだった。


 皆が救われますように、と―――。


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