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Ep25:国王の頼み

 鉱山採掘場で働いてから暫く経った頃の話である。


 王国エイドカントリーズからとある御触れが届いたと宿舎の主・アンから報せがあった。

 どうやら俺の様な王国勤めの者に用があるらしい事を聞いた。併せて一通の伝報が届けられていた。


~王国親展~

現在、我々は新たな計画に手を伸ばそうとしている。ある時、上空から雨が降ってきた時に新たな水源が上空の遥か向こうから現れている事に気付いた。残念ながら現状ではパヘクワードで生成されている水源は、地上大陸ランガスモーから虹の鉱石の浮遊力を使い、汲み上げている状態だ。その水源は我が国だけでなく、他の国でも“ろ過”し、蒸留しているものである。よって、世界はとてつもなく広い。

特に鉱山区で働いている者も虹の鉱石について研究中である。可能な限り調査をし、その報せを王国へ渡せ。

  ~王国エイドカントリーズ国王代理・発掘大臣アデュビス・ネルサン~


「アンさん、この報せは?」

「大役よ。あなたは今、鉱山採掘場での功績を認められたの」


 大役と言われてもピンとこなかったが、「大役」と言われて改めて気掛かりな内容だった事に気付き、今から王国構内にあるアントマニーヌ鉱山責任者のデミューラ・マキシマスの元へ向かう事をアンに告げた。


「俺は今から鉱山区へ向かいます」

「分かったわ。行ってきなさい」


 俺は、報せを伝えてくれたアンに一言礼を述べると、そのまま王国証明証を持ち、現場へ向かうこととした。本来なら家族にこの一報を知らせたくもなるが、帰るその時まで王国側の指示に従う。それまではお互いの元気を祈るのみだ。


――アントマニーヌ鉱山採掘場――

 鉱石を発掘する鉄の音、静かに回る歯車が坑内を響かせている。俺は責任者のデミューラを読んで欲しい旨を仲間へと伝えた。報告義務はこの鉱山の中で俺一人となり、その報せはデミューラが付き添いで行う事となっている。話は助手と合わせて3名となっている。


「これは王国の“新天地計画”かな?」

「新天地計画・・・?」

「いいかい、ライズ。この世界を支えている虹の鉱石はグレイローの灰を生むんだ」

「そうですね。たしか、グレイローの灰を吸い続けると寿命が短くなるという、伝説を生んでいたわ」

「しかしデミューラさん、ここの鉱山の空気は涼しい。しかもそのグレイローを排出している気配すら感じられない・・・。それでは、食糧を保管するために国が動いていた訳とは・・・?」

「一応、虹の鉱石の流出を避けるため。食糧は二の次なんだよ。水質汚染を避けるためにわざと生物を棲息させる事にしている。すると水質が浄化されるという仕組みが与えられるんだよ。グレイローの灰は沈殿して生物の活路を作っている。それが藻草や魚にさ」


(王国が民を隔てている訳ではないのか?すると・・・)


――――

 我々は生存しなければならない。

 地上ランガスモーから得られる素材もそう多くなく、小さな天空都市で弱肉強食をしている。この様な事態をいつまでも長引かせる訳には行かない。


 もちろん現状で解読不能な遺跡もあったとの報告も受けている。地上と新天地に繋がる浮遊エネルギーが水源を守っている筈が違うというのかと、時折、王国の使者は虹の鉱石で製造された飛行物体で巡礼に遣わされているという話も聞く。


 ――だが、現状的に救われなければ意味がない。


 デミューラ曰く意味が無ければただの脅しだと発言していた。以前、このような報せがあった時に、『つまらぬ愛情など捨てるんだな』等と大臣は言っていたらしい。これ以上貧困が続くと人が減り、新天地計画の礎とならない。どうすればいいのかと報告の内容を考える。


 それは虹の鉱石の王国にある機械念動力装置のエネルギーを使用して食肉の水分に含ませるという話にもなるからだ。


「だから、ライズ・・・その様に言われてしまっては元も子もない。何時だって一人で生きている訳じゃない。誰かと共に意志を張り巡らせているのだろう、という事だよ」

「そうよねぇ。以前、大臣達に取り立てて貰った時には余りにも虹の鉱石との関連性が無いからと言って突き返された報告書は山ほどありましたから・・・」

「ふぅん・・・、これでは上層と貧困との殴り合いですね・・・」

「そういう事だ。まだ時間はあるから素直に書くだけでいいと思うよ」


 察するに、話は全て中央に位置する大臣たちでの話である。

 過ちに気付いたのか、とも伺わせる。


 貧困から民を救う。それはそれでいいかも知れない。だが、俺は己の甘さに気付いた。単にエイドカントリーズの中で政治を質すだけではいけない、と。貴族が王国との手引きをしている訳でなく、忠義さえ尽くしていればいいのかと、考えさせられる部分は多々ある。


 俺は唯々、アンジェル高等学校までの過程を組んできた訳ではない。


 今はそっと王国側の言い分通りに動くしかない。


 正直、正しいかどうか、いつかその日がやってくるまで指示に従うべきだろう。


 肩の力を抜いて・・・。


 ――そして、


「ライズ、報告書は出来たかな?」

「はい。今から王国の執務室へ届け出る内容を纏めているので大丈夫ですよ」

「では、向かおうか」

「はい」


 こうして俺達は、王国側へ虹の鉱石の原理と貧困に対する決定的問題を提出する事にした。これからこの様な出来事は多々あるため、あと数年間はこの鉱山での働きを認められるまで俺は動けないだろう。


 そういえば、今頃ジグルにイーターやミヘル達はどうして居るだろうか、等と頭から離れられない記憶の奥底が疼くのであった。


 いつか、貧困から民だけでなく政治を見直し、世界を救うその時まで俺はこのエイドカントリーズで勤めよう。その時に俺の意志がこのように告げたのを感じている。天文学に在る人類や宇宙の頂きに到達するまでになる・・・のだと――。


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