Ep23:鉱山での働きと対価
俺はライズ・フォングラン。王国エイドカントリーズから召集をかけられ、平民区から貴族の学校を卒業した事を認められていた。そして、今はその王国の地へ足を着けている。
――鉱山採掘場前
ここは、虹の鉱石が採掘されている鉱山だ。坑内周辺には鉄製のバケツや木製の歯車が回っており、水脈の水を城内へ回している様子。そのお陰か、温かみは感じられるのに、熱さを感じない。アクスドリーマヌ領内では、漁区の水源でなければ汲めず、不便をしていたものの、この形式での流れだと人手が少なくて済む。
そういえば、エイドカントリーズへ来てからというもの、やや、赤みがかった髪の毛も遥か遠き蒼がかった色へと変化していた。恐らく何処かの遺伝粒子が虹の鉱石によって変化したのだろう・・・。
――アントマニーヌ鉱山
まずは王国証明証を持って、鉱山の中に居る一人の女性に声を掛けた。
「んっと、あんたは、誰?」
俺は、エイドカントリーズの王から伝令を下されたことを伝え、入坑許可を得る事にする。まだ責任者が、近くで仕事をしている事を伝えられると、そこで大人しく待って居ればやって来るだろうとも云われていく。俺が「冷えますね」というと、「何言ってんだい?普通だよ」と日常会話的なやり取りを行う。そうしている内に、一人の男性がこちらへやって来る。
「やぁ、よろしく!」
「あの・・・」
「私がここの責任者だ」
「そうでしたか。宜しくお願いします」
「君が新人のライズ・フォングラン君だね?」
「ライズで大丈夫です。新人ですが――」
「あぁ、礼儀は弁えなくてもいい!私はただ、早く作業の出来る環境にしたいんだ。その手伝いを君にお願いしたくて、ついパアッと話しかける癖がある!」
「大丈夫ですよ」
「そうかァ!じゃぁ、改めてライズ、宜しくな!私はデミューラ・マキシマスだよッ」
俺はこの、デミューラ・マキシマスという人にお世話になる。俺は社会的にはまだ幼い。貴族の作法を少しずつ他所へ置いておき、とにかく手元にあるのものは近くの棚にでも置いておく様に、と言われたので長剣と短剣を置いておき、王国証明証は紐を括りつけていたので首元にかけておく。
「君の長剣と短剣は長くて細いんだね。しかも丈夫そうだった」
「これは、鍛冶屋の専門のひとに頼んだ特注品なので・・・」
「なるほど、そうかい」
挨拶の方は、まずまずといったところか。お互い調子を合わせる様に会話を弾ませる。自己紹介として、虹の鉱石によってこの空中大陸が浮いている事を調べて、マジェス王に報告する機会も現れるだろうから、知識として持っていこう。
「まぁ、知識として捗るならいいが、あまり一杯にしなくていいよ」
「しかし・・・」
彼は、俺が若い事を悟ると、もっとゆっくり覚える事を奨めてくれた。俺が一歩譲って話を聞く事を理解している様にも感じ取れた。なぜか、親の様な、家族の様な温かみを感じ取れる瞬間を味わっている気がしてならない。
「デミューラさん、俺はこれから王国に勤める為に、仕事をした事を証明しなくてはなりません」
「ここに居るだけじゃ駄目かな?」
身近な欲求、行動、意欲を覚える度に、それ等を汲み取ってくれる彼の言動一つ一つが俺の心を揺さぶっている。少しずつ解れるような感触を覚える。
「いえ、そんな訳じゃ・・・」
「これまでの事を一旦置いておく事だ。それに、どこの出身だろうと関係ないよ」
彼は近くにある小さな岩石を押し車に乗せて、そのように話をしてくれる。貴族ならあまり、身の上話をしない方だが、平民区出であることを知っていて知らないフリをしてくれているのだろうか、と俺は感じた。息の乱れもあまり感じさせる動作をしていないが、それが社会的に貢献している事を理解すると、俺はまだ幼く在った。
「俺はまだ幼いのでしょうか・・・少し自信がありません」
「なんだ。ここへ来て急におとなしくなったと思ったら、心の封印でもしているのか?折角来て、一の日をじっと過ごすのが気に食わないかな?ね、肩を固めずじっと私の仕事を見ていてくれ。話しかけてくれてもいいよ。用件があれば幾らでも話しかけるからさ」
「・・・はぁ、」
この心の広さというか、意志の安否がどうであろうが、唯々、ここで見ていれば自ずと分かるという感じがした。自ら課した王国による貧困から民を救うためには、己の意志の封印を解かねばならないような言い方だった。俺に封印があるとしたら、これまで培った小さき時代の言葉の荒さかと思ってしまう。まるで、もう少し・・・
「そうだ。気楽に王国で勤める事が最初の第一歩だろう?その姿勢が買われるんだよ。君にとってね」
「なるほど・・・」
この職場で勉強してから余り日時が経っていない。この日はこれで引き返し、アンさんの居る宿舎でお世話になるとしよう。




