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番外編:神隠し6

「もう出てきていいぞ」

しばらくしてから、俺は茂みに向かって声をかけた。未玖も気配に気づいていたようで、俺と同じ方向に視線を向ける。

すると、数秒経ってからおずおずと妖が顔を出した。

茂みから出てきたのは、尖った耳に、二本の尻尾を持った妖だった。ーー猫又だ。

「あなただったのね?子ども達を神社に運んだのは」

未玖の問いに、猫又はこくり、と頷く。

「神社は神聖な力が宿る場所。あの妖の悪事を知っていて、子ども達を助けるために神社に運んだのね?」

「はい……私は昔からこの辺りに住んでいて、あの妖のことも知っていたのです……。封印から復活した妖が、悪事を働いているところも目撃しました。しかし、私では太刀打ちすることはできず……。黙って見過ごすことしかできなかったのです……。ですが、神社なら、神様なら、記憶を失った子ども達を助けてくれるのではないかと思い、運んだのです……」

「お前のおかげで事態が明るみになり、俺達の耳にも入り、凶悪な妖からこの街を守ることができた。勇気ある行動に、感謝する」

俺がそういうと、猫又は涙を浮かべた。

「邪悪な妖を退治して頂き、ありがとうございました」

そういって、深々と頭を下げる。

「またなにかあったらいつでも私達を頼ってね」

未玖のその言葉に、猫又は「……はい」と笑顔を浮かべた。

「一件落着ね」

「そうだな」

事件解決後、俺達は千暁の時計店近くの河原で休憩を取っていた。今日はさすがに疲れた。

もちろん、取り戻した子ども達の記憶はすぐさま解き放ち、その持ち主へと返した。今頃は皆、無事に記憶が元に戻っていることだろう。

「でも、私達だけでなんとかなって良かったわ」

「そうだな」

「ちょっと、そうだな、しかいってないじゃない」

むくれる未玖を横目に、小さく笑いを漏らすと、風に乗って、数日ぶりに聞く、柔らかな少女の声が聞こえてきた。

「あれ。真琴さんに未玖さん?こんなところでどうしたんですか?」

振り返るとそこには、小首を傾げた千暁の姿があった。

すぐそばには、琥珀の姿もある。その姿を見て、俺も未玖も、自然と笑みが零れた。

さて。なにから話そうか。俺達が解決した事件の話をしたら、彼女はとても驚くだろう。しかし、今はまだ、それよりも先に彼女に伝えなくてはならない言葉がある。俺と未玖は同時に口を開いた。

「「おかえり」」

※次回更新は明日の予定です。

Copyright(C)2023-音愛

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