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番外編:神隠し5

※やや長めです。

「お前が、子ども達をさらった妖だな」

池周辺で俺と未玖が張っていると、標的はすぐに姿を現した。

現れたのは、丸々と大きなフォルムの、ひよこのような妖だった。そして、その顔には三つの目玉がある。

「お前達は何者だ?」

妖が、俺達を鋭く睨みつける。その問いに、未玖が答えた。

「悪いやつを成敗しに来た魔術師よ」

その言葉を聞いた妖は、両の羽を大きく広げた。すると、みるみる内に毛先が固まり、硬い鱗のようになる。

まずい。と思った時には、未玖が動いていた。

「なにあれ!?ただの羽じゃない訳!?」

結界で降り注ぐ羽ーーいや、最早、鱗というべきか。相手の攻撃を防ぎながら未玖が悪態をつく。その間にも、鱗はひっきりなしに俺達に向かって飛んでくる。攻撃を放った後、いくらでも羽を再生できるようだ。

「……あの羽、再生するのか……」

「感心してる場合!?」

「悪い」

「この状態でどうやって隙を作るのよ!?あいつ、魔力が思ってたより強いわよ!攻撃を防ぐだけでも一苦労なんだけど!?」

未玖のいう通り、攻撃の威力は思っていたより強い。それなりに魔力を秘めた妖のようだ。

なにか、手立てはないか考えていると、数個の鱗が結界を突き破って、その先端が内側へと入り込んできた。これはまずい。

すると、未玖は「あぁ~~もうっ!!」と叫びながら、結界の内側に、ぴったりと重なるように、更なる結界を張る。

「二重結界か。さすがは未玖」

「だから、感心してる場合!?」

「まぁ、そうカリカリするなって。方法はある」

そういうと、俺は地面に手をつき、魔力を込める。紫色の魔法陣が俺達の足元に浮かび上がった。

「さぁ。反撃開始だ」

瞬間、突如として空中に氷の結晶がいくつも現れる。俺はそれを"重力ごと操作"し、加算された重力によって、勢いと重量を増した氷の結晶は、次々と鱗を弾き飛ばす。

「これは……」

「忘れたのか?未玖。俺の能力は、自然の力を操る能力だってことを」

周辺の空気ーー気体を操り、温度を下げたのだ。結界の外は今、真冬の寒さだろう。

そして、俺は目の前で今起きている現象を呆然と見つめている妖に向かって手を翳す。おそらく、なにが起こっているのか理解できないのだろうが、関係ない。

「日々、成長してるのは、俺も同じなんだよ」

なにも、魔術師として成長しているのは、千暁や未玖だけではない。

翳した手のひらから、青白い雷が放たれる。

その雷は、結界を突き破ってうねるように敵の方へと向かい、ひよこの妖の左脚を直撃する。

「ぎゃあ!?」

妖は、痛みに悲鳴を上げ、その身体がよろめくように傾く。

「未玖!!」

俺が声をかけると、未玖はそれだけでこちらの意図を察してくれたようで、素早く結界を解いた。

その隙に、俺は瓢箪を取り出し、妖へと向けた。

瞬間。瓢箪はひよこの妖から凄まじい勢いで魔力を吸い取っていく。

「や、やめろぉぉぉぉ!!」

妖の抵抗も虚しく、瞬く間に魔力は全て瓢箪に吸い込まれていった。

「よし」

魔力を全て吸い取った後、急いで栓を閉める。

目の前を見ると、ひよこの妖がポカンとしている。

「あ、あれ……?ここでなにを……」

琥珀がいった通り、妖はなにもかも、全ての記憶を失っていた。

「おい……」

俺が声をかけると、びくりと身体を揺らし、ひよこの妖は悲鳴を上げた。

「ひぃぃぃぃ!?何者!?」

記憶を失い、混乱している妖に声をかける。

「おい」

「ひぃぃぃぃ!!!!」

しかし。妖は、俺を見るなり酷く怯えた顔して、勢いよく走り出し、逃げ去って行った。

「足の怪我は大丈夫なのか……」

俺が思わずそうぼやくと、後ろから未玖の声が届いた。

「馬鹿ね。それも含めてあいつの自業自得でしょ。それに、あれだけ元気に走れるなら大丈夫よ。元々、致命傷ではないし」

その言葉を聞いて、それもそうか……とそう思うことにした。

未玖のいう通り、怪我は元々致命傷ではないし、あれだけ走れるならさほど問題はないだろう。妖の治癒力は人間よりも遥かに優れている。

「それはそうと」

「うん?」

「いつの間に重力まで操れるようになった訳?聞いてないんだけど」

「いってないからな」

そういえば、未玖はじとり、と俺を睨んできたが、俺は笑いを漏らし、むくれる未玖を宥めた。

※次回更新は明日の予定です。

Copyright(C)2023-音愛

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