番外編:神隠し4
「九条、お前と初めてやり合った時、千暁があるものを使っていただろう」
その言葉に、俺と未玖は、はっと視線を合わせ、同時に口を開いた。
「「瓢箪!!」」
「そうだ。あの魔術道具は、魔力だけを吸い取るもの。妖の体内にある魔力ーーつまりは、奪われた記憶も吸収できる。それに」
「それに?」
「やつは特殊な妖。やつの魔力の根源は、自身の記憶。いわば、それが魔術の媒体、回路となっている。記憶そのものが魔術でもあるのだ。瓢箪を使えばやつの記憶もろとも全ての魔力を吸い取れる。やつは自分の生まれも、名前も、全てを忘れることにはなるが、自分が邪悪な妖だったことも忘れる。悪さを続けることはできなくなるだろうさ」
琥珀の見解に、俺は思わず感嘆の息を漏らす。
確かに、一部分に強い魔力を宿す妖は数多く存在する。
例えば、目に魔力が宿り、見ただけで相手を麻痺させられる妖もいれば、耳に魔力が宿り、遥か遠くの場所まで音を聞き取ることができる妖もいる。
単純な猫(もとい、妖)ではあるが、さすがは古くから畏れられている大妖怪なだけはある。
「致命傷を与えることができずとも、あの瓢箪があれば、隙をつけば記憶を取り戻せる」
琥珀のその言葉に俺と未玖はしっかりと頷いた。だが。ふと、まだ解決していない疑問を思い出す。
「記憶を失った子ども達は、皆一様に雪見神社の境内で見つかった。その理由はなんだ?」
すると、琥珀は再び、深い深い溜息を吐き出した。
「本当にお前達は千暁と違って頭の回転が鈍いな」
「悪かったわね」
隣で話を聞いていた未玖が不機嫌さを隠そうともせず、呟いた。
「神社とは、神の神聖な力が宿る場所。神にゆかりのある妖ならともかく、普通の妖は神社を嫌う。当然だ。妖というだけで、神の祟りに見舞われることもあるからな。災いを避けるため、多くの妖はあまり神社仏閣には立ち寄らない。邪悪な力を持った妖なら尚更だろう。だとすれば」
「子ども達を神社に運んだのは別の人物。あるいは妖」
「ようやく気がついたか。今回はおそらく、後者だろう。人間ならまず、警察を呼ぶだろうからな。目的までは分からんが」
「なるほど。子どもをさらった者と、神社に連れて来た者は別々にいる。盲点だったわ」
未玖の言葉に、俺も頷き返して同意する。
「千暁にも伝えるか?」
「いや、いい。忙しい時に余計な心配はさせたくないし、今回は俺達だけで十分だ」
「気を抜くなよ」
「分かってる」
琥珀との通信を切り、未玖と視線を交わす。
「行くか」
「えぇ」
そして俺達は次なる一手に出た。
※次回更新は明日の予定です。
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