第十一話:現実と幻想の狭間で4
※未玖と真琴視点です。
「真琴!真琴、起きなさいったら」
聞き慣れた声が耳に届いて、沈んでいた意識が徐々に浮上する。
目を開くと、そこには未玖の姿があった。
「未玖……?」
「そうよ。いつまで寝ぼけてるつもり?そんな余裕ないわよ」
その言葉で一気に意識が覚醒する。そして、周囲に広がる真っ白な空間を見てはっとする。
ここはどこだ?俺達は確か、森の中にいたはず。それにーー。
「千暁は!?」
「いないわ。私達とは別の空間に飛ばされたみたい。琥珀の姿も見えないから、一緒だといいけれど」
「ここは……」
見渡す限り、見えるのは真っ白な色だけ。他にはなにもない。
「赤羽の術式か」
「おそらくね」
「異空間を創り出すあいつの能力で俺達は異空間に閉じ込められたって訳か」
「相変わらず、頭の回転は早いわね。そこまで分かってるなら、ここを抜け出す方法を早く見つけないと」
「術が発動するトリガーはおそらくあの霧だな。だとすると、同じようにここから抜け出すための条件がなにかあるはずだ」
いいながら、思考を巡らせようとした時。突然、どこからともなく声が聞こえてきた。
「未玖……?」
声がした方に視線を向けると、そこにいたのは、俺達と同じくらいの歳の青年だった。
「暁人……?」
呆然としながらそう発する未玖を見て、その人物が誰だか分かった。千暁の兄ーー水無瀬暁人だ。
いわれて見れば、どことなく顔つきが千暁に似ている。
「暁人なの……?」
わなわなと唇を震わせる未玖に、水無瀬暁人は優しい笑みを浮かべる。
「そうだよ。久しぶりだな。未玖」
「おい。待て、未玖。これは現実じゃない。創られた幻だ」
そういって、彼女の肩に触れようとした時。懐かしい声が耳に届いた。
「真琴」
その声に、ドクンと鼓動が高鳴る。まさか。そんな訳がない。
そう思いながら振り返ると、予想通り、そこにはもう会うことはない、たった一人の兄がいた。
「深琴……」
有り得ない。これは幻想だ。だって、深琴はもう、この世にはいない。
「真琴……また会えた。禁忌を犯したが、俺がどれだけお前のことを思っていたか」
目の前にいる深琴は、記憶の中と変わらぬ姿、変わらぬ声で俺に近づいてくる。
「苦労かけてすまない……真琴」
違う。ここにいるのは深琴じゃない。そう分かっているのに、身体がいうことを聞かない。
深琴はゆっくりと水無瀬暁人に近づき、横に立つ。
「二人は知らなかったかもしれないが、昔は、俺達も仲が良かったんだ。今は、仲違いしてしまったことを悔いている」
その言葉に、水無瀬暁人が頷く。
「未玖や千暁にも、辛い思いをさせてしまったこと、悔やんでも悔やみきれない。だけど、もう強がって頑張らなくていいんだ。ここにいれば、皆一緒に幸せに暮らせる」
※次回更新は明日の予定です。
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