表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/115

第十話:現実と幻想の狭間で3

※続きです。

泣き笑いのような笑みを浮かべながら兄貴を見つめると、彼は驚いたように目を見開いた。

「兄貴がいない世界は今でも辛いし、魔術師として任務をこなすことだって楽しいことばかりじゃない。でも、私には琥珀や未玖さん、真琴さん……互いに支え合える仲間がいる。全部、兄貴がくれた縁だよ」

分かっている。これは、いつか私が夢見た幻想だ。叶うことのなかったーー否、叶えることのできなかった願い。

この世界が私の願望が創り出した世界なら、それを終わらせることができるのもまた、私だけのはずだ。

「だから、大丈夫。辛いことがあっても、なんとか進んで行けるよ。だからもう、心配しないで。いつも守ってくれてありがとう。愛してくれて、ありがとう」

ずっと、伝えたくて、伝えられなかった言葉を告げる。涙を拭うことなくそう告げれば、兄貴は柔らかな笑顔を浮かべて私を見つめ返した。

「……強くなったな。千暁」

いいながら、兄貴はそっと私を抱きしめる。腕の強さも、抱きしめられている温度も、なにもかもが妙にリアルだった。

「俺の方こそ、お前と過ごせて幸せだった。幸せをありがとう。例えそばにいられなくても、ずっとお前を見守ってる」

「うん……知ってる」

「お前は俺の妹だからなんだってできる」

「なにそれ」

思わず、小さな笑いが漏れる。まるで、昔に戻ったみたいだ。

「だから、いい時計師にもなれるはずだ。めげずに頑張れ」

「私より兄貴の方が作業着似合ってるの、なんだか不服だけどね」

「ははっ。そんなことないさ。俺に似合うなら、お前にも似合う」

兄貴がそっと、身体を離す。

「そろそろ帰る時間だろ」

「……うん」

今の私には、私の帰りを待ってくれている人達がいる。

「頼んだぞ」

兄貴からの視線を受けて、琥珀が力強く頷く。

「それじゃあ、またね」

「あぁ、またな。未玖にもよろしくいっておいてくれ」

私は涙を拭って、兄貴に背を向ける。琥珀と共に時計店の扉の前に行き、そして、一度だけ振り返る。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

※次回更新は明日の予定です。

Copyright(C)2023-音愛

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ