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里帰りをしたら実は魔術師の家系だったと知らされたので、今日から魔術師目指します  作者: 音愛
第七章:魔術師としての新たな生活の始まりです。
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番外編:九条真琴の苦悩

※更新が遅くなりました。今回は真琴のお話です。

 俺の名前は九条真琴。魔術師である。御三家である九条家の当主だ。そんな俺は今、心の中で盛大な溜息を吐き出し、目の前にいる少女を見つめた。

彼女の名前は水無瀬千暁。俺と同じく魔術師で、御三家の一つ水無瀬家の当主兼御三家を率いる魔術師達の長でもある。

千暁はキラキラと目を輝かせながらデザートメニューを見つめている。ーー隣に座る白河未玖と一緒に。

「難儀なやつだな。お前も」

頭の中にぬいぐるみの姿に扮した琥珀の声が届く。

「ほっといてくれ……」

心の中でそう返し、俺は思わず項垂れた。

なぜかって?それは一向に俺と彼女の距離が縮まらないからだ。

 九条家と水無瀬家の間にはある因縁があった。それが原因で互いに敵対し、俺は彼女の一族を強く恨んでいた。

だが、それは全て誤解で、心の広い、優しい千暁が九条家を許したことでわだかまりは消え、今では友好的な関係を築いている。

そんな彼女に俺は今、恋心を抱いている。

 最初に意識したのは俺と千暁が対峙した時のこと。

勝負に負け、俺は死を覚悟していた。しかし、彼女は俺を殺さなかった。そればかりか、俺に手を差し伸べ、前を向くきっかけをくれた。

そして、その思いが決定的となったのは、兄貴である九条深琴と相対した時だ。

俺を庇い、瀕死の重傷を負った千暁の姿を見て、心臓が直に握り潰されたかのように痛かった。まるで生きた心地がしなかった。そしてなにより、怖かったのだ。彼女を失うことが。

 それからというもの、彼女の優しさ、芯の強さ、笑顔に触れ、この恋心はいつしか膨れ上がっていた。

だが、それに気づいているのは悲しいことに琥珀だけ。

だから、今回思い切って千暁を近くのカフェに誘い出したのだが。

「いいですね!あっ、未玖さんも誘っていいですか!?」

勢いよくそういわれては断ることもできずに、未玖も一緒に行くことになった。そして、今に至る。

 目の前に座る二人は嬉々とした表情でデザートを頼み、届いたケーキを頬張っている。

気づけばテーブルの上は沢山のケーキで埋まっていた。

いや、そんなに食べるのか。

仕方ない。今日はこの笑顔が見れただけで良しとしよう。

次こそは必ず。そう心の内で闘志を燃やし、俺も頼んだショートケーキを一口、口に含んだ。こっそりとばれないように琥珀にもケーキを差し出しながら。

すると、フルーツケーキを食べていた千暁がチョコレートケーキを差し出してきた。

「真琴さん半分こしませんか」

「えっ」

もしかして彼女は見ていたのだろうか。彼女と同じく甘党な俺がショートケーキを頼むかチョコレートケーキを頼むかで迷っていたことを。

「どうしても食べたくて頼んだのはいいものの、私の場合、食べた分だけ身になってしまうので、一緒に食べて量を減らしてくれたら、ちょっとだけ罪悪感が消えるので、半分こして頂けると嬉しいんですが」

やはり、彼女は俺の様子に気づいたのだろう。

だから、こうして俺に気を遣わせないような、そういう言い回しをしている。

そういうところも、好きだと思う。

「分かった。一緒に食べよう」

ありがとうございます。と微笑んだ彼女に、可愛い。と言いそうになったのをなんとか堪えて、二人で一緒にチョコレートケーキを食べる。

「美味いな」

「はい!」

ニコニコしながらケーキを食べる千暁の口元にクリームがついてしまっているのを俺は発見した。

「ははっ。クリームついてるぞ」

笑いながらそっとクリームを拭ってやると、千暁はポカンとした顔つきになった。だが、やがて、じわじわ広がるように頬に熱がこもり、朱に染まる。

えっ。とその様子を驚きながら見つめていると、今まで黙ってケーキを食べながら様子を見ていた未玖が、「あら?」と小さく笑う。これは。もしかして。

未玖もまた、薄々俺の心情に気づいていたのかもしれない。

「す、すみません!ありがとうございますっ」

早口にそういって、千暁は恥ずかしそうに俯いてしまう。

可愛いな、おい。いや、じゃなくて。

「脈アリなのか!?これは脈アリなのか!?」

心の中で琥珀に問いかける。

「知るか!私に聞くな阿呆め」

辛辣な言葉が返ってきたが、今は気にならない。

なぜなら、目の前の彼女が可愛すぎるからだ。

(気長に頑張るか……)

そう改めて闘志を振るい立たせ、俺は宥めるように千暁の頭を軽く撫でたのだった。

 そんな俺と彼女の距離が縮まり、手を繋いで寄り添い合えるようになるのは……もう少し後の話。

※次回更新は明日の予定です。

Copyright(C)2023-音愛

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