番外編:未玖と暁人2
「あの子から」
いいながら、彼が視線を移したのは悠里だった。
まだ幼い烏天狗の妖が依頼?どんな依頼にせよこんな小さな妖が魔術師に依頼を持ちかけるとはよほどのなにかがあるに違いない。一族や、周囲の妖ではなく、魔術師を頼らざるを得ないなにかが。
「依頼ってどんな?」
「だから、そこまで説明必要か?お前には関係のない話だろ」
どこか呆れたように吐き出された言葉に私は苛立ちを覚える。すると、どこからともなく懐かしい声が聞こえてきた。
「諦めろ。暁人。こやつは頑固でしつこいぞ」
「あら。琥珀、いたの。久しぶりね」
「琥珀、知り合いか?」
白い猫の姿をした相棒に水無瀬暁人は視線を落とす。
どうやら、白河家と琥珀の関係性までは聞かされていないらしい。
「白河家とは先代当主の時から付き合いがある。私は水無瀬家に代々仕える妖だからな。そこの未玖は頑固でしつこいがバカ真面目なやつだから、依頼の内容を話しても支障はなかろう。御三家の魔術師でもあるしな」
「ちょっと、誰がバカ真面目よ」
しれっと聞き捨てならないことをいわれた気がするが、琥珀はそれをさらりと無視して続ける。相変わらず小賢しい猫だな。いや、妖か。
「おそらく、まだ子どもであるあやつらがなにを依頼したのか気になるのだろう」
琥珀から援護射撃を受けるとは思っていなかったが、水無瀬暁人は諦めたように溜息を吐き出して、ことの成り行きを話してくれた。
ーー水無瀬暁人の話はこうだった。
烏天狗の兄妹が住まう村には、禁忌とされるある掟があるらしい。それは、双子は存在してはならないこと。
その村では双子は禁忌とされている。故に双子が誕生した場合は妖として優秀な方を選び、そうでない方を始末する。そういった物騒な掟があるとのことだった。
この掟ができたのは、数百年前のこと。村で初めて双子を出産した母親は出産直後に亡くなり、双子の片割れもまた生まれてすぐに亡くなってしまったそうだ。
もちろん、全くの偶然だろうが、村の者はそうは思わなかった。生き残った双子の一人が生気を全て吸い取ったと思った。これは呪いだと。双子を産み落とし、村をより繁栄させようと欲をかいた罰なのだと。
なんともむちゃくちゃな思考回路だと思うが、昔の人間、いや、妖故、古い時代を生きる妖の思考としては有り得なくもない。なにせ、人間の世界でも一昔前まではなにか不幸が訪れると呪いだ、祟りだ、といわれていたのだから。
それ以来、双子の誕生は禁忌とされ、その村では双子の優秀な方を残し、そうでない方を始末するという過激な掟ができたらしい。
その優劣を決めるのは、十歳を迎えた日に双子同士が戦い、勝った方が勝者として生き残る。つまりは、先に相手を始末した方の勝ち。残酷極まりない掟だ。
もうお分かりかと思うが、先程出会った烏天狗の兄妹も双子である。四日後に十歳の誕生日を迎える。そうなれば兄か妹、どちらかが確実に死ぬことになる。
けれど、烏天狗の兄妹は互いが互いを生かしたい。そこで助けを求めたのが水無瀬暁人だったという訳だ。
もちろん、依頼の内容は「二人が生き残る方法を探して欲しい」というもの。
※次回更新は明日の予定です。
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