番外編:未玖と暁人3
「それで?どうするつもりなの?」
「まずは村の様子を探る。まぁ、期待はできないが話し合う余地があるなら話し合いで解決したい。それができないならちょいとばかり手荒な方法になるな」
「私も行くわ」
そう告げると、水無瀬暁人は少しげんなりした様子を見せながらも諦めたように溜息をつきながらこういった。
「勝手にしろ」
ーーこうして。私と水無瀬暁人の共同任務が始まったのである。
私と水無瀬暁人はまず、悠里と実が住まう村の偵察に向かった。森の鬱蒼とした木々達に囲まれたその村には、大人から子どもまで男女沢山の烏天狗が住んでいた。
私達は森の茂みに隠れて中の様子を探る。すると、一人の女性烏天狗が杖をついた初老の男性烏天狗に泣きながら縋りつくように懇願していた。
「どうか!どうか!あの子達にご慈悲を!私にとっては二人共可愛い我が子です!どちらかを抹殺するなんてあんまりです!」
「これは掟じゃ。いい加減諦めろ。恨むなら双子を身ごもった自分自身を恨むんじゃな」
ぴしゃりと跳ね除けられ、振り払われた女性は力なく崩れ落ち、嗚咽を漏らしていた。
「……母様と長老です」
沈んだ悠里の声を聞いて、なにをいうでもなく水無瀬暁人は立ち上がった。
「行くぞ」
「えっ、ちょっと待って!!」
私は慌ててその背中を追った。
「一つ、確認しておきたいことがある」
静かな森に水無瀬暁人の声が響く。
「あの村を逃げ出して、他の地に住まうこともできる。それは嫌なんだな?」
水無瀬暁人の問いに、悠里が頷く。
「あそこには母様もいるし、今回俺達が逃げおおせることができたとしても、また双子が誕生すればどちらかは必ず殺されてしまう。また、罪のない子どもが殺される」
それじゃあ、意味がない。と悠里は告げる。本当に、まだ幼いとはいえ、しっかりした子だ。その横で悠里の手を実が強く握っていた。
「なら、今回の依頼はお前達が無事に生き延び、尚かつあの村の体制を変えること、でいいんなだな?」
悠里が力強く頷く。
「でも、話はそう単純じゃないわよ。あの村に巣食う因習は最早、それそのものが呪いと化しているわ。さっきの様子を見て分かってると思うけど、説得は不可能。どうやって依頼を進めるの?」
私が問えば、水無瀬暁人はまた呆れたような顔つきになった。
いちいち腹の立つやつだ。
「じゃあ、お前はこの子達見捨てて諦めろっていいたいのか?」
「そうはいってないでしょ」
「ははーん、お前、俺にはこの依頼は遂行できないと思ってるだろ」
ギクリ、と肩が小さく揺れる。確かに水無瀬暁人は魔術師に成り立ての身で経験が浅い。そんな彼に今回の依頼は荷が重いのではないかと、正直なところそう思った。
「なら、お前が引き受けるか?解決できる算段は?」
「それは……」
そう問われると、確かに明確な答えは出てこない。
「なにも考えがまとまってねー癖に中途半端に適当な口出しすんじゃねーよ」
どこか、怒りを含んだ声が私の耳に届く。
「別にそういう訳じゃ……」
「中途半端だろ。俺には依頼がこなせるとは思えない、かといって、自分になにかできるかといわれればそうじゃない。これを中途半端といわずになんていう?」
私は思わず口を閉ざした。返す言葉がなかったからだ。
「そういうお前の方こそ、依頼にちゃんと向き合えてねーんじゃねーの?」
ガツン、と頭を殴られたような衝撃だった。確かにそうかもしれない。私自身、そう思ったからだ。私は依頼を解決する方法を考えるまでもなく、諦めていたのかもしれない。
「……失礼が過ぎたわね。ごめんなさい」
「分かりゃいい」
私の謝罪を素直に受け取り、水無瀬暁人は悠里の頭を撫でる。
「妹を守りたいってその気持ちは分かるよ。俺にも大事な大事な妹がいるからな」
「へぇ。どんな?」
問うた悠里に、水無瀬暁人は恥ずかしげもなくこう答えた。
「目に入れても痛くないほど超絶可愛い妹」
「お兄ちゃんは妹さんのこと大好きなんだね!」
「あったりまえよ!」
目の前で繰り広げられる会話に唖然としていると、琥珀が呆れたように説明してくれた。
「気にするな。暁人は重度のシスコンなだけだ」
「それ……妹さんに嫌われてなきゃいいけど……」
「案ずるな。やつは例え嫌われていたとて、きっと気にしない」
それは、強靭なメンタルを褒めるべきなのだろうか。
「妹自慢はいいが、なにか策はあるんだろうな?」
琥珀の言葉に、こちらに視線を向けた水無瀬暁人はなぜか不敵に笑った。
「いったろ?話し合いができなきゃ、ちょいとばかり手荒な方法になるって」
※次回更新は明日の予定です。
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