第五十二話:最終決戦7
黄金の剣により、身体を引き裂かれたドラゴンは、小さな光の粒へと姿を変えた。眩いばかりの光が、視界を覆う。
その内側に閉じ込められていた多くの妖達の魂が、解き放たれていく。
「そんな馬鹿な……」
絶句して立ち尽くす九条深琴に近づいた私は、剣を振り上げる。しかし、手が震えて動かない。魔術を人間にぶつけるのは初めてだからだ。なにより、この人は真琴さんのたった一人の兄だ。
その手を私よりも大きく、温かな力強い手が包み込んだ。
真琴さんの手だ。彼は小さく頷くと、握る手に力を込める。
「……ここでお前が温情を与えたところで、魔術師界の掟は深琴を見逃さない。必ず処分が下される。だったら、せめて。俺達の手でかたをつけよう」
真琴さんの覚悟を確かに感じた私は、一つ頷きを返す。そして、私達は同時に剣を振り下ろした。
彼は動かなかった。否、動けなかった。いつの間にか琥珀が深琴の手を結界で固め、同じようにして足を結界で地面に縫いつけていたからだ。
「ぐあ……っ!!」
引き裂かれた胸を押さえながら、深琴は私達を睨む。赤い鮮血が、地面を伝う。まだ戦う余力があるのか、彼は私達に向かって手を翳す。おそらくは私達に向けて攻撃を放とうとしたのだろう。しかし、一向に魔術は展開されない。
「なぜだ!?」
叫ぶ深琴を無視して、私はデビルファング達をその主である魔術師達もろとも剣を一閃し、薙ぎ払った。どんな攻撃が来ようが、相手がどんな行動に出ようが、今の私には関係ない。彼らは負ける。その事実に変わりはない。そして、次の瞬間にはもう、魔術師達もデビルファング達も、跡形もなく姿を消していた。残るのはただ、宙を舞う小さな光の残滓だけ。何体ものデビルファングが一瞬で消えたことに真琴さんと未玖さんは目を丸くしていたが、私は気にせず深琴に向き直った。
※次回更新は明日の予定です。
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