第四十五話:作戦会議と束の間の休息
「……まずは、九条深琴の行方を探すところからね」
夕食にと頼んだハンバーグを頬張りながら私は未玖さんに向かって頷いて見せた。
一通り情報共有を終えたところで私達は夕食を共にすることにした。腹が減っては戦はできぬ。というやつである。
料理を食べながら作戦を練ることで一致した私達は、夕食という名の束の間の休息を取っていた。
「ですが、それについては問題ないと思います」
「記憶を辿るんだな?」
九条さんの言葉に私は頷く。
「兄貴の遺体が発見された場所を中心に、その地の記憶を辿って敵のアジトを探します」
「なるほどね。それが一番効率的ね」
私の話を聞いた未玖さんはそう返事を返してからナポリタンを一口、口に含んだ。
「問題はその後だ」
「その後?」
九条さんの言葉に私は首を傾げる。
「一族を追放されたとはいえ、相手は次期九条家当主になるはずだった男だ。魔術師としての実力は本物。それに、本当に禁忌を犯しているのなら、より強い力を得ていてもおかしくない。一筋縄ではいかない相手だ」
「それなんですけど……」
私は考えていた計画を口に出す。
「私が囮になります」
「はぁ!?」
普段の冷静な九条さんからは想像もできない程の驚きに満ちた声が響いた。
口には出さないが、未玖さんも怪訝そうな表情を浮かべている。
「私には、相手の攻撃を無力化する能力があります。私が攻撃を無力化し、敵の目を引き付けている間に、御二方には隙を見て攻撃に転じて欲しいんです。それが一番効果的なやり方だと思います」
頭では理解しているのだろうが、二人の表情は晴れない。納得はしていないようだ。
すると、頭の中で声がする。私の唯一無二の相棒の声だ。
「案ずるな。千暁には私がついている。こやつには指一本触れさせん」
頼もしい言葉に、私は小さく笑う。そして、二人の瞳をしっかりと見つめた。
琥珀にもあとでハンバーグをこっそり分けてあげるとしよう。
やがて、二人は頑固な私を見て諦めたのか、小さな溜息をついてから頷いた。
「分かった。お前に任せる。だが、無茶はするなよ」
「いいわね。約束よ?」
私は未玖さんと九条さんにしっかりと頷いて見せた。
ーーこうして。私達は決戦に向かう準備を整えたのだった。
「じゃあな。しっかり休めよ」
時計店まで送ってくれた九条さんがひらひらと手を振りながら背中を向ける。
「九条さんも」
私がそう返すと彼は肩越しにこちらを振り返った。
「真琴」
「えっ?」
「真琴でいい」
突然の申し出に少し戸惑いつつも、私は頷いた。断る理由はないし、この人は成り行きでそうなったとはいえ、仲間になった人だ。
「では、真琴さん」
初めて名前を呼ぶと、彼は満足そうに頷いてくれた。
「明日はよろしくお願いします」
私がそういうと、真琴さんは軽く右手を上げて応えてくれる。
ゆっくりと遠ざかっていく背中を見つめながら、私は来たるべき時に向けて、気合いを入れた。
※第五章完結になります。
次回更新は明日の予定です。
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