第四十四話:同盟2
※前回からの続きです。
「最っ悪」
未玖さんは嫌悪感を隠そうともせず、吐き捨てるようにいった。そんなに顔を歪めては、綺麗なお顔が台無しですよ。
「揉み消したかっただけでしょうね」
テーブルに肘をついて、肘をついた手に顔を乗せながら未玖さんが続ける。
「本当は九条一族はことの全てを把握していた。けれど、一族の、それも次期当主が禁忌を犯して一族を追放されたとあっては体裁が悪い。どうせなら、誰かの手によって嵌められた。禁忌を犯さざるを得なかった。だから、追放されたとでっち上げた方が、魔術師界でのスキャンダルは小さくなる」
未玖さんの言葉に私は頷く。彼女の見立ては間違っていないだろう。だからこそ、九条一族は九条さんに嘘の真実を信じ込ませるために、でっち上げたでたらめなシナリオを聞かせ続けた。九条さんの兄を思う気持ちを利用した卑劣なやり方だ。
「俺も、今ではなぜ疑いもせずに信じ込んでいたのかと、そう思う。この世界ではなにが起こってもおかしくないのに……そして、その話を信じ込んだ俺は水無瀬家に復讐するために禁忌寸前のやり方で力と地位を得た」
苦しげにそう呟いた九条さんは私に向き直り、深々と頭を下げた。
「お前には多大な迷惑をかけた。本当にすまない」
「顔を上げて下さい。あなたもまた、被害者です」
本当だ。今は素直にそう思うことができる。そして、こう続ける。
「大丈夫ですよ。これからみっちり私達の役に立ってもらいますから」
私がそう言えば、九条さんは大きく目を見開いた。
しかし、やがて、柔らかな笑みを浮かべて私を見た。
こんな表情もできるのかと、今度は私と未玖さんが驚きに目を見開いた。
あれ?もしかして、九条さんって実はかなりのイケメン?
切れ長の目はやや鋭いが、よくよく見ると端正な顔立ちだ。
未玖さんも美人だし、実はこの街の顔面偏差値って相当高い?
そんな場違いなことを考えていると、未玖さんの声が聞こえてきて、我に返る。
「それで?私達に協力してくれるっていうのは間違いないのよね?自分の一族を敵に回すことになると思うけど」
「あぁ。いい加減、九条一族の腐った因習は浄化すべきだ。それに、この件に兄貴が関わっているなら、見過ごせない」
「決まりだな」
頭の中で声が木霊する。ぬいぐるみの姿でこれまで成り行きを黙って見守っていた琥珀の声だ。
「同盟成立ね」
未玖さんの言葉に私と九条さんが頷く。
「なら、来るべき時に向けて、作戦を練らなきゃね」
私は頷きながら「はい」と力強く答えた。
「でもその前に……」
作戦を立てるその前に、と私が新たに得た能力について説明すると、案の定「えぇ!?」という未玖さんの盛大に驚く声が店内に響いたのであった。
※次回更新は明日の予定です。
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