第十六話:冷たい真実5
※前回からの続きです。
「千暁殿。この度は本当にお世話になりました」
全てが終わって、河原まで戻って来たところでクロノさんは深々と頭を下げた。
「私はこのまま故郷の山に戻ろうと思います。ミズキと一緒に」
そう微笑むクロノさんの表情に、もう悲しみの色はない。
「千暁殿には感謝してもしきれません。是非、私達の故郷に遊びに来て下さい。出来うる限りのおもてなしをさせて頂きます」
「ありがとうございます。必ず伺います」
私がそういえば、クロノさんは嬉しそうに口角を上げた。
「それから、最後にこれを」
クロノさんが差し出したのは、「依頼完遂認定証」と書かれた小さな紙切れだった。クロノさんのものだろうか。下の方に手書きのサインのようなものも書かれている。
「これは……」
「依頼者が依頼が完遂された時点をもって、その依頼を成し遂げた魔術師に渡す書類です。依頼が無事に遂行されたことを示す書類といえば分かりやすいですかね」
「だから、依頼完遂認定証なんですね」
「はい。これをギルドに持って行けば依頼を遂行したことが認められ、報酬が貰えます。最初に私からの依頼を千暁殿が請け負うことは、未玖殿から話を通してもらっていますので。もちろん、依頼に私が関わることも」
そういえば、個人で依頼を引き受ける場合、その依頼に関係する妖や人に限り、依頼に関わることができると琥珀がいっていた。そして、依頼に関わっても問題ないか否かを判断しするのもギルドだと、そうもいっていた。未玖さんがギルドに対してクロノさんが依頼に関わることについて許可をもらい、その許可を得てクロノさんは私に依頼を持ち込んだということだ。もちろん、琥珀は分かっていたと思うが、初任務のことで頭がいっぱいで、その辺りのルールとも呼ぶべき事柄についてはすっかり頭から抜け落ちていた。
「分かりました。ありがとうございます」
「大変なことも沢山あるとは思いますが、あなたなら、立派な魔術師になれると思います。まだ、魔術師になられたばかりで慣れないことも多いでしょうが、頑張って下さい。あなたなら、きっと大丈夫です」
「クロノさん……ありがとうございます」
「では、私はこれで。また、お会いしましょう」
「はい。道中、お気をつけて」
クロノさんの姿を見送ってから、ゆっくりと河原を歩き、時計店へと続く道を進む。
「疲れた……まずは帰って休みたい」
「お疲れ。よくやった。少しくらい怠けても文句はいわれまい」
てくてくと横を歩く琥珀をそっと抱き上げて、ぎゅっと抱きしめる。直接口には出さないが、感謝の気持ちも込めて。
「こら、やめんかっ。苦しいわっ」
騒ぐ琥珀を無視して、私はその柔らかな毛並みを堪能する。
「もふもふ……癒される……」
「話を聞いとるのかっ!!離せっ」
「あははっ」
笑いながら腕の中で暴れる琥珀を更に強く抱きしめて、私は帰路を急いだのだった。
※第二章完結です。
次回の更新は明日になります。
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