第十五話:冷たい真実4
※前回からの続きになります。
私のいってる意味が分からないのか、クロノさんは目をぱちくりさせている。私はそれを気にすることなく、墓石を中心に、魔術を展開する。墓石に、青い光を放つ陣が浮かび上がった。そして空に浮かぶ、ミズキさんに関する最期の記憶。
薄らと血に濡れ、呼吸が浅くなったミズキさんがうつ伏せで横たわっている姿が映る。
ーークロノ……ごめんよ。これまで沢山見てきたものや、経験してきたことを……故郷に帰って……君に聞かせてやりたかった……。
紡がれる最愛の友人への思い。一筋の涙がミズキさんの頬を伝って、地面に落ちる。
ーーもう一度だけ……クロノに会いたかったなぁ……。
涙を流しながら悲しそうに笑う。そして、彼はそれきり動かなくなった。
陣の効力が消え、墓石に宿った記憶はそこで途切れた。
やるせない気持ちでクロノさんを見つめると、彼は、はらはらと静かに涙を流していた。そっと膝をついて墓石を優しく撫でる。
「ここに、ここにいたんだな、ミズキ。遅くなってすまない。一緒に帰ろう」
そこまでいって、堰を切ったように嗚咽を漏らす。静かな朝の森にクロノさんの悲しい泣き声が響き渡った。
「……これで、良かったのかな」
悲しみに暮れるクロノさんを見ながら私は誰に問うでもなく呟いた。
それに答えたのは低い音をした、けれどもはっきりとよく聞こえる声を持つ、小さな主だった。誰かなんて聞かずとも分かる。琥珀の声だ。
「この結果は誰にも予測できなかったことだ。お前は良くやった。お前がこの事実を突き止めなければ、クロノは真実を知らずにいた。もう帰っては来ない友の帰りを永遠と待ち続け、ミズキが帰ってこないことを嘆き続けただろう」
クロノさんに目を向けたまま、私は黙って琥珀の話を聞く。
「お前がミズキの居場所を見つけたから、クロノは踏ん切りをつけることができた。そして、友の心を、魂を、故郷へと還すことができる。それは、お前の手柄があってのものだ。もっと胸を張れ。相棒」
力強い言葉に、涙腺が緩みそうになったが、それをなんとか堪える。
「ありがとう……琥珀」
精一杯の謝意を込めてそう返せば、なにをいうでもなく、琥珀は一度だけしっかりと頷いて見せた。
それでも、私がこの依頼の結末と正面から向き合えるようになるにはまだ少し時間がかかるようで、胸に熱いものが込み上げてくる。目頭は熱いし、鼻がツンとする。友を失い、悲しんでいるクロノさんに余計な気を遣わせてはならないと、潤む瞳に気づかれないように見上げた空はどこまでも青く、その眩しさに思わず目を細めた。
ーーこうして、私の初任務は幕を閉じたのだった。
※次回、第二章の完結です。
次回更新は明日になります。
Copyright(C)2023-音愛




