第十四話:冷たい真実3
※前回からの続きです。
翌朝。早朝にクロノさんと待ち合わせた私は、ミズキさんが目撃された森の中に向かった。シロツメクサが咲いていたあの場所だ。他に有益な手がかりはないか、再び聞き込みを開始した。
周辺を聞き込んでいると、ふと、森の中にぽつんと佇む小さな石の塊を見つけた。小さな石が一段、二段、三段……と幾重にも積み重ねられ、まるで遺跡かなにかのように見える。
少しだけ、嫌な思考が私の脳内を占める。
しばらくそれを眺めていると、他で聞き込みをしていた琥珀とクロノさんが合流した。
「どうした?」
「あっ、いや……」
じっと私を見つめる琥珀に答えようと、口を開きかけたその時。突然、背後から声がした。
「あら。あなた達もお参りかしら」
慌てて後ろを見ると、そこにいたのは妖だった。
着物を着て、杖をついた女性だったが、耳が尖っていて、明らかに人間のそれではない。杖を持っていない左手には花束が握られている。彼女は、ゆっくりと告げる。
「私もお参りに来たのよ」
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。先程の嫌な思考を裏づけるように。
「お参り?」
「えぇ。名前は分からないんだけれどね。ここで魔術師に襲われて亡くなった、妖のお墓参りに」
ガツン、と頭を殴られたような衝撃が私を襲う。
どこか確信めいた予感がある。だが、それでも違っていてくれたらいい。そんな願いを込めながら、私は言葉を紡ぐ。
「それって、犬の姿をした妖ですか?」
「そうよ。やっぱり知り合いなのね」
そんな……と横にいたクロノさんが小さく呟く。その顔からは完全に血の気が引いていた。
「魔術師が、他の妖を狩ろうとしてるところに出くわして、襲われていた妖を庇って魔術師の怒りを買ったみたいなの。酷い話よね。その犬の姿をした妖は魔術師に狩られてしまったわ」
残酷な真実が私達を襲う。胸が張り裂けそうなくらいに痛んだ。
「私は物陰に隠れていて、そこからその光景を目撃したのだけれど、あまりに可哀想で私がここに墓石を建てたの。ささやかなものだけれどね」
「ここにいるクロノさんは、襲われた妖……ミズキさんのご友人なんです」
私が放った一言で妖の彼女はなにかを察したようだ。持っていた小さな花束を置き、墓石に向かって手を合わせてから私達に頭を下げ、静かにその場を立ち去った。こちらを気遣っての行動だろう。呆然とするクロノさんをよそに、私は墓石に手を翳す。
「ミズキさん。やっと見つけました。遅くなってすみません。クロノさん、せめてその魂だけでも、故郷に還してあげましょう」
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初任務編、もう少し続きます。次回更新は明日の予定です。
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