第十三話:冷たい真実2
※前回からの続きになります。
初任務編、佳境です。もう少し続きます。
明日、明け方の六時にクロノさんと滝の下で落ち合う約束をしてその日は帰路に着いた。幸い、明日は定休日で時間はたっぷりとある。だが、私の心は晴れない。有益な情報を得たはずなのに、それによって奈落の底に突き落とされたような気分だからだ。御三家の当主が非人道的なことに手を染めている。到底信じられるものではないが、それが事実であるならば、ミズキさんが生きている可能性は限りなく低くなる。これではまるで、なんのためにこの依頼を引き受けたのか分からない。そんな私の心中を察してか、隣を歩く琥珀は先程から全く口を開かない。
悲壮な思いを抱えて歩いていると聞き覚えのある声が耳に届いた。
「その様子じゃ、収穫はなかったようね」
そこにいたのは未玖さんだった。しかし、なにも答えようとしない私を見て異変を感じ取ったのか、怪訝そうに顔を歪めた。
「なにかあったの?」
時計店の目の前にある道路脇のガードレールに腰かけ、私は未玖さんに今日分かったことを話した。全てを聞き終えた時、未玖さんは悲しげな表情で「そう」と一言だけ呟いた。そして、静かにこう続けた。
「あなたはまだ知らないでしょうけど、九条家は……御三家の中でも特殊な一族なの。卑劣で冷酷な一族よ。彼ら九条一族は、強さと地位を得るためならば、罪のない妖を狩ることも厭わない」
「……そんなことが許されるんですか」
「許される、かどうかは別として。それがまかり通る世界であることは確かよ。魔術師の世界は、力と地位が全てだから」
私が思わず拳を握ると、未玖さんは緩やかに首を左右に振った。
「勘違いしないで。私はそういう卑劣なやり方は認めていない。けれど、当主の九条真琴がそういった卑劣な行為を先導していることは間違いないわ」
そこまで聞いて、これまで黙っていた琥珀が神妙な様子で口を開いた。
「それ故に、九条家の人間と暁人はよく衝突していた。暁人が亡くなっと聞いた時、私は暁人からの頼まれごとでそばにはいなかった。依頼に関する聞き込みを頼まれていたからだ。本当は九条家が暁人を葬ったのではないかと疑ったよ。決定的な証拠はないがな」
「暁人は真面目で誠実な人だったから、九条家のやり方には納得できなかったのね。九条家とは相容れなかったわ」
「そんな……それじゃあ、兄貴の死因は事故死じゃないかもしれないってこと?」
呆然とする私に琥珀は少しバツが悪そうにいった。
「続きはこの依頼をこなしてからだ。まずはミズキの所在を掴まねばならん」
その言葉にはっとする。そうだ。今はミズキさんの行方を突き止めることの方が先だ。私は気合いを入れ直すように両の頬をぱちん、と叩く。
「ミズキさんは私が必ず見つけ出す」
※次回更新は明日になります。
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