第十一話:友の行方2
※前回からの続きです。
少し長めです。
クロノさんに連れて来られたのは、今朝、私と琥珀がいた河原のその先にある滝だった。滝の周囲には大きな木々が生い茂り、小さな森を創り出していた。
「ここが、最後に目撃されたと思われる場所です」
クロノさんの声を聞きながら、私はしゃがみ込む。
「なにをしている?」
琥珀の問いに、私はちょっぴり得意気に答えた。
「ーー使い道がない訳ではない。琥珀がいってた意味、分かったよ。"こういう時"に役立つのね」
私のいいたいことが分かったのか、琥珀はニッと快活な笑みを見せた。
「お前はやはり、頭の回転が早いな」
そう。私の能力は、使いどころがあるのか否かよく分からないものだったが、今のようになにか「探したい物があったり、探し出したい人がいたりする時」に役に立つ。要は、ミズキさんがいたこの滝周辺の記憶を読み取れば、その後の動向が分かるかもしれない、ということだ。
「どうすればいい?」
「まずは、集中して意識を高めろ」
琥珀の指示通りに私は目を閉じて意識を集中させる。
「それから、頭の中で読み取りたい範囲の場所に魔術陣を描くイメージをして、どこか一点、力を集中させられる場所を決める。手に意識を持っていき、そこに力を集めるのが手っ取り早いだろう」
「えっ。それで術を発動させられるの?」
「集中せんか、阿呆」
ぴしゃりと叱責され、私は慌てて開いてしまった目を閉じ、再び意識を集中させる。
「魔術は、本人の思いや願いによって形を変える。それらの強さによって力の強さも変わるのだ。どういった魔術を扱えるかは、本人の素質によるといったが、本人の思いや願いによって術に変化が訪れることがある。素質による、というのはそういった意味合いも含まれている」
なるほど、と心の中で短く呟く。
「お前が依頼者を思い、その願いを叶えたいと強く願えば、より強く、術を発動させることができるかもしれん。新人とはいえ、お前には魔術師としての素質がある。術を発動させ、操ることにはまだ不慣れかもしれんが、できない訳ではないはずだ。なにより、この琥珀がいうのだ。お前はできる。私を信じろ」
随分と自信家な妖だな。けれど、きっとできるという自信が湧いてくるから不思議だ。
「大事なのは、自身の魔力をどう魔術に表すかをイメージし、そこに意識と思いを乗せること。魔術とは所詮、魔術師が自由自在に操ることのできる力の一つに過ぎない」
琥珀の声に耳を傾けながら、私はイメージを広げる。頭の中に映し出すのは、滝と、その周辺の河原に陣を描く光景。意識を集中させ、いわれた通り、手に力を集めるように精神を統一させる。そして、願う。大切な友達の安否を気にかける、心優しいクロノさんの願いが叶うように。
そう願う私の思いに本当に応えてくれたのか、滝と、その周辺に青く光る大きな陣が浮かび上がった。
そして、まるでスクリーンに映し出された映画のように、空中に記憶の断片が浮かび上がる。
そこに映っていたのは、滝の周囲を囲う森の中を、なにかから逃げるように必死に走る妖の姿。垂れた大きな耳に、黒光りする小さな鼻。犬のような姿をしたこの妖がクロノさんが探す友人、ミズキさんなのだろう。その背後にはいくつかの白い花が咲いている。あれはシロツメクサだ。
視えたのは、たったそれだけだった。彼の身になにが起きたのかまでは分からない。だが、収穫はあった。
「ミズキさんはなにかのトラブルに巻き込まれた可能性が高い。急ごう」
※続きます。次回更新は明日です。
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