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演じていたヒーローが本物になったので、異世界の女勇者を支えることにした~時空騎行グランゼイト異世界英雄譚~  作者: 水辺野かわせみ
第一章

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【第3話】ヒーローと姫騎士

「何だ……?」


「勇者の仲間って、魔法使いと神官の、女二人じゃなかった?」


 青白い肌の男女が、不思議なものを見るように目を細めた。


「……誰だ、オメェは」


 男が問う。


「さあ……通りすがりの、役者、かな?」


 漣は大げさに肩を竦めて、挑発するように笑った。


「面しれェ……」


「それじゃ、こっちから壊してみる?」


 女が指を鳴らす。


 次の瞬間。


 空から、無数の黒い礫。


 地上から、戦棍と斧の一斉攻撃。


「……っと」


 漣が動く。


 まずは、空。


 腰のホルスターから、バスターガンを引き抜いた。


 100m先の自動車を撃ち抜く銃。


「――そうだ」


 違和感はない。


 身体がそれを理解している。


 狙い、引き金を引く。


 グゥォォォォン!!


 エレクトリックサウンドに似た発射音が響き、青い尾を曳いた光弾が四体の鳥型を撃ち抜いた。


「……!?」


 一瞬の出来事。


「魔法……じゃない?」


 女が目を見開く。


「気を付けろ! ちったぁヤルようだ!」


 男が檄を飛ばす。


 ドンッ!


 衝撃が走り、地面が爆ぜる。


 漣の姿が消える。


 一体。


 猪顔の怪物が吹き飛ぶ。


「なっ……!?」


 速すぎて、誰の目にも止まらない。


 残りは、男女を含めて地上の十一体。


 このまま押し切るのは――。


「面倒だな……」


 漣は自分の左手を見た。


 甲から手首にかけて、微かに光るグランゼイトの白い紋章(エンブレム)。


〝何をやるか、誰になるのかは君の自由。主役になれるか脇役で終わるか、それも君の選択次第だ〟


 あの少年の言葉がよぎる。


「……だったら」


 小さく息を吐く。


 覚悟は、もう決まっている。


 意識を集中し、左手を高く掲げた。


 白い紋章が、脈打つように輝きを放つ。


 赤く、眩く。


 息を吸い込み、そして――。


「レイズ・オン!」


 その瞬間。


 世界が止まった。


 風が止み。


 音が消え。


 だが、色だけは鮮やかに。


「……っ」


 少女が息を呑む。


 光が。


 紅と黒の光が漣の身体を包み、形を成してゆく。


 手に装甲。


 脚に力。


 胸に輝き。


 それは、鎧。


 だが、少女の知っている、どんな鎧とも違う。


 最後に、仮面が顔を覆った。


 無機質ははずなのに、そこには確かな〝意志〟が宿っている。


 そして。


 ドンッ!!


 一歩踏み出す。


 それだけで、地面が砕ける。


「なっ……!?」


 怪物たちが反応する前に、消えた。


 ドゴォッ!!


 拳の一撃で猪顔の胴体が爆ぜる。


 振り返りざまに、蹴り。


 もう一体の頭が吹き飛ぶ。


 速い。


 重い。


 止まらない。


 次々と怪物たちを屠ってゆく。


 圧倒する。


 さっきまで拮抗していた戦場が、一瞬で蹂躙に変わる。


「……あれは、何……」


 少女の声が震える。


 理解が追い付かない。


 それなのに、目が離せない。


「チッ……!」


 男が舌打ちする。


「オイオイ、下がってンじゃねぇよ。さっさとアイツを潰せ」


 警戒して距離を取ろうとする怪物たちへ、男は明らかに不機嫌そうな声で指示を飛ばす。


「しっかり、働きなよ。せっかく使ってやってんだし」


 その声を皮切りに、残った鬼顔の二体は狂ったように突進する。


 地鳴りが響き、土煙が舞う。


 二体が同時に戦斧を振り上げた。


 漣はゆったりと見える動作、実際は刹那の動きで構える。


 左の拳を引く。


 紋章が輝き、赤い光が拳へと収束。


 空気が震える。


 足元の土が、木の葉が、弾けるように舞い上がる。


「これで、終わりだ」


 踏み込む。


 地面が爆ぜ、一瞬で距離を詰める。


「グランド・ブレイカー!!」


 輝く拳を叩き込む。


 一体。


 そのまま、もう一体へ。


 連続の衝撃が、二体の鬼を貫く。


 必殺技、時空を突き破るパンチ。


 二体の鬼顔は数十mを吹き飛ぶ。


 そして。


 大爆発を起こし、消えた。


 静寂が戻る。


 拳から、光がゆっくりと消えてゆく。


「……これが」


 漣は、小さく息を吐いた。


「本物の、ヒーロー、か……」


 台本はない。


 やり直しもない。


 用意された舞台ではない。


 命を懸けた、本当の戦い。


「あ~あ、やっぱこんなもンか」


「ま、下等なオークどもじゃあね」


 青白い顔の男女が肩を竦める。


 余裕の態度。


 漣は構えたまま、動かない。


 彼らには、何処か底知れないものを感じる。


 倒した怪物たちとは、明らかに違う威圧感。


 不用意に仕掛けるのは、危険だ。


 だが。


「けどまあ、ちょっとは楽しめたか」


「変わったヤツも見られたしね」


 二人は笑った。


 戦う意志は見えない。


「……ってワケだ。またな、オメェら」


「今度は、本気で遊んであげる。じゃあね」


 二人は黒い空間の歪みに消えていった。


「ふうっ」


 暫く様子を見た後、漣は変身を解く。


 とりあえず、危機は去ったようだ。


 静寂が戻り、風がゆっくりと森を抜けてゆく。


「大丈夫?」


 振り返って、少女に声を掛ける。


「……はい」


 少女は、ゆっくりと立ち上がり、剣を鞘に納めた。


 それから。



 足は自然に漣へと向かう。


「ありがとう、ございます。ご助力、感謝します」


 丁寧に頭を下げた。


「私は、イヴァンジェリン・ミルドレッド・サーフィス。〝神託の六勇者〟の一人です」


 ――勇者。


 イヴァンジェリンは、少しだけ笑った。



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