九体祭編F:信頼と言う呪い
俺の固定硬化(仮)は少しおかしい。
みんなが異能演算で異能を使う中、俺はなんとなくのイメージで異能を使っている。
いや、生体プログラムと異能演算領域を接続して異能を使う以上、演算をイメージで代用できるとは思えないんだが・・・俺の異能ってなんなんだ?
「行けええええ!零斗おおお!!!」
早坂 零斗が構えた指鉄炮が|斎統 総真《さいとう そうまに照準を合わせている。
イメージはピストル!!!
空気を弾丸状に固定して、アーマーを砕かないギリギリの速度で打ち出す!
「零斗、信じてるよ。零斗なら、きっと勝てるって!」
この信頼は裏切れない!だから、ここで外せない!
「はあああああああ!!!」
打ち出される空気弾は、こちらに振り向く総真の額のコアに向かって真っ直ぐ打ち出された。
だが、吹雪続ける現在のマップ上では、空気弾はあまりにも軽すぎた。
楓太の起こした、マップ全域を覆い尽くす風に流されて、空気弾はあらぬ方向に飛んで行く。
「あっ・・・」
風を計算に入れなかった零斗のミスだ。
試合後の零斗に早坂 一途が駆け寄る。
「お疲れ様・・・零斗、惜しかったね!あとちょっとのところまで追い詰めたのに!・・・・・零斗?」
「姉さん・・・ごめん。勝てなかった・・・・・」
零斗が空気弾を外した後、意気消沈の零斗の左胸のコアを破壊した総真は、勝也と楓太を撃破し、試合は大阪校の勝利に終わった。
そして、その後はそのまま大阪校が優勝する形で、新人戦バトルスクワッドは幕を閉じた。
「ごめんね・・・私も、余計なプレッシャーをかけちゃったよね・・・」
『信頼を裏切ったこと』、『もう少しまでと言うところまで追い込めてしまったこと』、そして何より『一途に「ごめん」と言わせてしまったこと』。これらは今後しばらく、零斗の心に傷として残り続け、零斗のコンプレックスを加速させた。
「姉さんは1日目のエキシビジョンマッチで、手を抜きながらも斎統総真を相手に余裕の勝利だった。なのに俺は、『バトルスクワッドのルール』と言うハンデを相手に背負わせた状態でも、勝てなかった・・・」
確かに自分に酔ってたな。悲劇の主人公ぶって、ちょっと厨二病だった。
「自分に酔ってる様なら、俺が目を覚まさせてやる!」
確かに覚まされた。振り返ると、死にたくなるくらい恥ずかしい。
・・・早坂零斗。異能は固定硬化(仮)か。
「障害物の無い雪原のマップじゃなかったら、あいつの空気弾は風に流されなかった。そもそも吹雪を起こさなくても隠れる場所があるからな。雪原マップじゃなかったら、負けたのは俺だった。」
早坂零斗の姿を思い出す。
「ランク、『計測不能』より『X』の方がいいんじゃない?」
翌日、九体祭最終日。
長崎 勝也が客席を歩いていると、
「あの女、外国人だな?どこかの企業の人事関係だろうか?無線で誰かと話してる。」
スーツ姿の外国人女性を発見する。
その女性、少々ガタイがいい気がするが・・・
「ダース。」
「なっ!」
その女性が勝也とすれ違う際、無線通信の相手に対して『ダース』と返答した。
『ダース』とは、ロシア語で了解を意味する。ただし、民間では既に死語になっており、現在は軍事用語として残っている。
つまり、先程の女性は新ソ連軍の軍人であり、無線の相手は恐らく、新生ソビエト社会主義連邦軍ということになるはずだ。
日本の将来を担う、異能力者達を視察しに来た?軍人なら有り得ない話では無いが、『魔天牢』が受けた多額の匿名依頼もある。何より、嫌な予感がする。
「・・・・・一応、比留間少佐に報告しておくか。」
新生ソビエト社会主義連邦、作戦室。
「時は満ちた!作戦を実行する!目標は日本、国立異能高等専門学校、九校統一理事会理事長、神宮寺 世界!!!本作戦は本国、引いては社会主義国家全体のの存亡に関わる重要なものだ!総員、心して作戦に当たれ!」
無線で海軍全軍に司令が伝わる。
「全軍、侵攻を開始せよ!」
「「「「「ダース!!!」」」」」
新ソ連、海軍が日本に向けて出撃を開始した。
次回、新章新ソ連軍侵攻編、開幕!
来週は休み、次回から更新を日曜とさせていただきます。次の投稿は9/17です。




