新ソ連侵軍攻編I:零斗が見た世界
九体祭、最終日。
全てのプログラムを終え、閉会式の最中。
「それではここで好評をいただきます。九校統一理事会、神宮寺理事長。よろしくお願いします。」
表彰台に神宮寺が登壇する。
「よし、来た!神宮寺 世界!絶好の狙撃チャンスだ!!!」
狙撃が神宮寺を襲うが、
「世界:時間を停止せよ・・・」
神宮寺がそう呟くが何も起こらない。
「いや、起こらない方がおかしい!俺は確実に神宮寺の心臓を狙撃した!」
───俺は新ソ連軍でもぶっちぎり一位のスナイパーだぞ!狙撃が当たるか外れるかなど、最早打つ前にわかるレベルだ!
「その俺が当たるのを確信して打った狙撃が気付かれる事すらなく外しただと!!!?・・・もう一度だ!もう一度心臓を潰す!」
「世界:狙撃手を殺害せよ。」
再び神宮寺を狙撃する前に、先程どこかへ消えた一発目の弾丸が狙撃手の脳を貫通する。
早坂 零斗は『今、一体何が起こったのか』を理解出来なかった。
「だるい」とか、「暑い」とか、「話長い」「早く終わらないかな」「帰りたい」など私語をしていたクラスメイトが
一瞬にして黙り、それどころか他の生徒も、先生達も、観客達ですら、誰一人として動かなくなった。
自分は何事もなく動ける。声も、多分出せる。なのに、自分以外は誰も動かない。
いや、一人だけ動いた。
神宮寺理事長が一人だけ。
「ふむ、素晴らしい精度の狙撃だ。このまま進めば、しっかり私の心臓を貫くだろう。新ソ連など所詮、異能後進国と侮っていたが、異能以外のところでしっかり軍としての力を持っていたか。さすが、異能が発明される前までは世界第二位の軍として名を馳せただけはある。」
そう言って、目の前に浮かぶ弾丸と思われるものを指で弾き飛ばす。
「だが、私は私の生徒達を信頼している。負けてやる気は無いよ・・・・・世界:時間停止を解除せよ。」
そして、今まで一切動かなかった皆んなは、神宮寺のその言葉と共に何事も無かったように動き出した。
「だめです、狙撃は失敗のようです。連絡が取れません。」
「突撃させろ!このチャンスを逃すな!」
「了解!狙撃失敗!突入せよ!」
「零斗さん、ちゃんと理事長のお話聞かないとダメですよ?」
「い、いや、でも・・・」
櫻井 紡理が零斗を注意していると、会場入り口から銃声が鳴り響く。
「動くな!」
「大人しくしろ!」
突撃銃を持った軍服の集団が会場に突入して来る。
「神宮寺世界!投降しろ!そうすれば生徒たちは傷つけない!」
神宮寺はため息をついて、言い放つ。
「侮られたものだな、この場には現役の高専生、教職員が勢揃いしているというのに・・・」
神宮寺に向けられた突撃銃がパーツごとに分解された。
そして、軍服の集団は一瞬で足元から氷漬けにされる。
「私が居る場で、生徒に危害を及ぼそうとは・・・命知らずなことだな。」
巡戸 進次郎がそう言って前に出る。
「末席とは言え、これでもランクEXだ。私が居る限り、生徒達に手出しはさせない。」
「そいつから仕留めろおおおお!!!」
氷漬けにされていない軍服達が刃物を取り出し、巡戸先生に突撃する。
「メガネ、キラーーーン!!!」
「「「「「なんじゃそりゃーーーーーー!!!」」」」」
メガネ・・・いや、目から放たれた冷凍光線が突撃してくる軍服達を凍結する。
「今のうちに避難を!早く!!!」
巡戸先生は生徒や神宮寺の避難を促す。
「巡戸先生。」
「理事長?なんでしょう。」
「この襲撃は新生ソビエト社会主義連邦軍によるものです。国際問題、いや国際戦争に発展する前に対処をお願いします。」
「・・・分かりました。」
無茶苦茶言い出す神宮寺に巡戸先生は苦い顔だ。
音霊 勇牙、五十嵐 楓太、長崎 勝也、氷川 七姫、司馬 一歌、櫻井 紡理美川 ゆうま、零斗の8人は、避難所のキャパオーバーによって戦場と化した札幌郊外を逃げていた。
「どうすんだよ!マジで避難できないぞ!」
勇牙が焦る。
「土地勘が無いからどこに行けばどこに着くかも分からないからな。マップアプリがあるとは言え。」
楓太はまだ落ち着いているが、それでもやはり少し焦りがある。
「みんな、こっちだ。」
勝也が、外れの公園を指差す。
戦場から少し外れ、ひとまずの安全を確保する。
「出来れば、建物に入りたかったね。」
七姫が口を開く。
「そうだね・・・これから、どうしようか。」
一歌がここから先をどうするか、皆に問いかける。
「悪いが、ここで皆んなとは別行動だ。」
「勝也君?何言ってるの?」
いきなり勝也の発言に、ゆうまが反応する。だが、
「お、おい!戦車だ!やべえ、こっちに来るぞ!」
勝也の返答の前に、勇牙が遮る。
「大丈夫。あれは国防軍だ。」
到着した戦車から、中年男性軍人と若い女性軍人が降りてくる。
「久しぶりだな、早坂特尉の弟君。そして他の皆さんは初めまして、私は国防陸軍、第零異能戦闘部隊、通称『零異』の隊長。中佐、比留間 玄徳です。」
「同じく少尉、藤堂 春香です。」
「第、零・・・」
一歌が反応する。
「比留間さん、説明してください!退職されたんじゃなかったんですか!?第零ってどう言う・・・」
「一つづつ説明しよう、零斗君。はぐらかしても、不信感が残るだろうからね。」
比留間中佐が説明する。
「我々、第零異能戦闘部隊は世間に公表されている、第一から第三の異能戦闘部隊とは違い、世間に秘匿されている。これは国防法13条に基づくものだ。」
「姉さん、早坂特尉からは退職されたと聞いていたのですが?」
「我々、第零異能戦闘部隊に所属しているもの達は軍人の身分を隠さなくてはならない。退職偽装もそのためのものだ。」
「分かりました。」
零斗が納得・・・仕切れないが、無理矢理納得する。
「では、君たちを保護する。いいかな?」
「「「「「「よろしくお願いします」」」」」」
「勝也、早く乗ろう!」
楓太が勝也に呼びかける。比留間中佐が口を開く。
「准尉、君も名乗りたまえ。」
「了解しました・・・俺は、
自分は第零異能戦闘部隊、准尉、長崎勝也です。」
登場キャラクター紹介
早坂 零斗
性別男、身長170cm、体重57kg、誕生日3/3年齢15歳
東京校の一年生。茶髪に碧眼。
ランクEX第一位の早坂一途を姉に持つ。
周囲からの姉の評価を嬉しく思っているが、同時に自分との実力の差から来る姉へのコンプレックスを抱えている。
一途もそのことを理解しているため姉弟関係はそれほど悪くない。
三歳の時に両親を『自動運転型自動車』の暴走事故で亡くし、それから二年ほど親戚の中でたらい回しにされていた。
その後は、中1まで母親の妹の早坂桜に育てられた。今の早坂の性はその時の名残りであり、父親の性ではない。
若干人見知りで、入学初日に勇牙が話しかけてくれなかったら、しばらく友達が出来なかった。かなり寂しがり。
好きなものはスイーツ、洋食、みかん、姉さん。
嫌いなものは姉さん、辛い物、パイン入りの酢豚、カボチャ、ホラー。
特技は料理(主に洋食)。
苦手なことはゲーム。
異能は固定硬化(仮)。正体不明の異能で、高専の科学者は分子の相対的位置を固定するものと推測した。空気を刃状に固定して斬撃を放ったり、見えない壁を作ったり出来る。異能演算ではなくイメージで発動する。




