九体祭編Ⅻ:自分に酔う
遮蔽物の無い雪原のマップでは、普通にしてると身を隠す場所が無い。火力はランクEXの斎統 総真率いる大阪校に軍配が上がる。
「だったら、どうするか?危険行為で失格になるからあまり過剰火力の攻撃はして来ないと思ってたが・・・」
当たる気は無かったとは言え、普通に過剰火力で攻撃して来た。
長崎 勝也は読みを外して、作戦を考え直す。
「ねえ、勝也。勇牙にステゴロさせたら?」
早坂 零斗が勝也に作戦を提案する。
「近づけば過剰火力を使えないだろうし。万が一過剰火力が当たっちゃったら、それはそれで斎統総真の失格になる。」
「れ、零斗?過剰火力が勇牙に当たったら、勇牙もただじゃ済まないと思うが!?」
「うん、まあそこは、勇牙なら大丈夫そうだなって・・・」
「作戦はちゃんとしてるのに勇牙の安否だけ適当じゃないか!!!?」
勝也が零斗に音霊 勇牙の扱いを指摘すると・・・
「いや、それで行こう!」
無線越しに勇牙が作戦を了承する。
「勇牙!!!?正気か!?」
「多分、過剰火力は当ててこないと思う。」
「根拠は?」
「第六感。」
論理性のかけらも無い根拠だが・・・
「・・・わかった。」
勝也は了承する。
「本人がそれで良いと言ってる以上止められない。」
「応!じゃ行ってくる!」
「ん?なんだ?」
総真が吹雪の中から誰かが突っ込んで来るのを感じ取る。
「うおおおおおおおお!!!!!行くぞ!ランクいいえっくすううううう!!!」
勇牙だ。
勇牙は全速力一直線に総真に突っ込んで殴りかかる。
「三人とも下がって!あのステゴロ野郎が来る!」
「どおおおりゃあ!!!」
総真は自身の左胸のコアの手前で勇牙の拳を受け止める。
「ようやく戦況が動きそうだね。」
「ああ!ぶん殴ってやるよ!」
勇牙は総真のアーマを掴み、他の大阪校のメンバーから引き離す。
「とりあえず、斎藤総真と他メンバーを分断したぜ!」
無線による勇牙の報告を受け・・・
「じゃあ、俺は楓太と合流して他の三人を仕留める。未来予測相手に単独はちょっと厳しい。」
「わかった。」
「了解。じゃ一旦合流しよう、勝也。」
零斗は勇牙と、勝也は楓太と合流する為、一旦別れる。
勇牙は総真と1体1を繰り広げる。楓太によって吹雪き続ける雪原にも負けずに炎熱系の炎がぶつかり合う。
「どおおありゃ!!!」
「はあああああ!!!」
「助かったよ楓太。流石に未来予測は手強かった。」
勝也と楓太は他の三人を撃破した。
「ねえ、勝也。なんで僕が実力隠してたってわかったの?」
「零斗にも言ったが、似たもの同士だからだよ。だから、わかった。」
勝也の返答に対して楓太は疑問が生じる。
「へえ・・・ねえ、勝也。具体的にどこが似てる?僕あんまり、勝也と似たもの同士だと思わないんだけど?」
勝也は黙り込む。
「ねえ、勝也。答えてくれないの?勝也は僕達に
何を隠してるの?」
炎を纏う勇牙と総真のラッシュがぶつかり合う。
「どりゃどりゃどりゃどりゃどりゃどりゃあああ!!!」
「はああああああああああああああああああああ!!!」
二人は少し距離を取る。
「いや、最弱でここまで張り合われるとは思わなかったよ。最強の俺相手にさあ。『ランク』って、思ってたより『純粋な戦闘力の物差し』としては欠陥だね。」
「そりゃあ、そうだろ。わざわざ難しい計算しなくても、火を使いたけりゃライター、何かを分解したきゃドライバーがあれば良い。」
勇牙は思うままの疑問を口にする。
「異能力者って、生体プログラム『BASIC』って何のためにあるんだ?戦争の為か?」
「そうじゃなきゃ、こんな異能競技は生まれないだろ。」
そうだ。
「『何のために作られたか?』は『BASIC』作った神宮寺理事長しかわからないが、『何のために在るのか?』なら、それは戦争の為だ。」
その為に、俺たちの青春は塗り潰されて来た。
「20年前の憲法改正で日本は決定的な変貌を遂げた!戦争放棄国でなくなった日本は自衛隊を日本国防衛軍として作り替え、戦争の道具として、異能力者を、生体プログラムを取り入れた!」
20年前には当たり前にあったはずの青春はもう無い。
「その、俺たちの人生を左右する分岐点に、その瞬間に俺達は生まれてすらなかった!たった・・・たった4年、生まれるのが遅かっただけで、そのツケを払わされてる!理不尽だ!理不尽だろ!なぁ!」
「ああ、だったらなんだ?」
総真はその勇牙の言葉に時が止まってような感覚に陥る。
「は?」
「世界を賭けて戦ってるつもりか?厨二病が!被害者トークで気持ち良くなってんじゃねえ!今、俺たちが戦ってるのは、ただの体育祭だぜ!」
「お前は!!!お前は、戦争を肯定するのか!」
「だから!それをここで言い争っても、意味ねえって言ってんだよ!」
勇牙は右手に炎を纏わせ、総真に突撃する。
「自分に酔ってる様なら、俺が目を覚まさせてやる!」
頭部のコアに向かって、勇牙の燃え盛る拳が繰り出される。
だが・・・
「黙れえええ!!!」
雪原の下から土の壁が現れ、勇牙の拳が阻まれる。土木系だ。
そして土壁を砕きながら、水流系の水鉄炮が勇牙の左胸のコアを破壊する。
「ぐっ!!!」
「・・・・・口だけだったな。」
「まだ終わってねえよ!
行けええええ!零斗おおお!!!」
零斗が構えた指鉄炮が総真に照準を合わせている。




