南瓜王の花嫁2
時刻は18時04分頃。
ヨム達一行はリオが沈んだカボチャ畑へ向かった。
それに伴うジャックスのレベルは45。怒れる南瓜王(推奨レベル30)との戦闘になったとしても苦戦はしないだろう。
緊張で喉が渇き張り付く。
畑へ向かう道中町中を歩くが町の住民からの態度は何やらよそよそしく、視線が冷たい。暴れ瓜の討伐がうまくいかなかったからだろうか。
それとも……仲間一人助けられなくて冒険者失格だとでも思われているのだろうか。
(確かに倒せなかったのは事実だけれど、敵の情報を与えずに丸投げしてくるのもどうなのよ……)
「都合よく使われるのが冒険者ってやつだ。気にすんな」
思わずムッとするカナメの頭をジャックスは大きな獣の手でワシャワシャと撫でた。
あまりにも大きな手だから、ぷにぷにした肉球が頬に押し付けられる。
『そうよぉ、旅をしていたらこんな空気にもなれちゃうわ』
ジャックスの肩からヨムの肩へヒョイッと飛び移るとスプライトはヨムの頬へ頬ずりをする。毛並が柔らかく気持ちいいのだが、オニキスがヤキモチを妬くから反応に困るな、と戸惑うヨムだったが。
『……』
予想通りヨムの腕に抱かれたオニキスがヨムとスプライトを睨みつけてくる。
「誤解だよぉ……」と言いたげなヨムに対しスプライトは気にするそぶりもなく勝ち誇るように鼻で笑った。
『あのさ……むぐぅ!!』
オニキスがスプライトに飛びかかろうともがいた矢先、ヨムの足が止まり、オニキスの顔が胸に埋まる。
『ちょっと!!ヨム!急に止まらないで……よ……』
ヨムに抗議の声を上げ、オニキスはヨムの視線の先へ目を向けた。
カボチャ畑は確かに此処にあったはず……なのだが、一行の目の前には植物の蔓と古くひび割れた石で作られた教会が建っていた。
教会の入り口や至る所にカボチャや蜘蛛の飾りつけが施されている。
「何……これ……」
「おいおいおいおい、たかがクエストでダンジョンが建つなんて聞いてねえぞ!!」
戸惑うカナメにジャックスはダンジョン情報を読み込む。
[魔秋瓜燈:サワンの礼拝堂
推奨レベル:35]
「これは……」と思わずジャックスの言葉が止まった。
ダンジョンは系統にもよるが大抵は数人PTを組んで攻略をする。
ヨムもカナメも推奨レベルの半分だ。自分はかろうじて推奨レベルを超えてはいるが……。
ダンジョン情報を見たスプライトが目の色を変えてヨムとカナメに詰め寄る。
『アンタ達一体何をやったの?!』
『僕等が知るわけないだろう!!』
「どうして、こんな……」
(なんでよりによってお化け屋敷みたいな見た目なんだよおおお!!!)
叫びだしたい気持ちを堪え、カナメは「どうする?」とヨムへ視線を送るがヨムは「素敵……!!」とでも言いたげに目を爛々と輝かせていた。
(そうだった……コイツの将来の夢は魔女だった)
勿論、起床世界での将来の夢の話である。
正しくは「魔女のように自分の生き方や考え方を決め、昔の教えや言い伝えを大切に後世に残していけるような人物になりたい」という理由があるのだが、何せ言葉が足りない故に「魔女になりたい」の一言で現実が見えていないヤツ。と学生時代から周囲から変な人を見る目で見られていた。
余談であるがホラー映画は好きだがビックリしたり内臓が出るのは好きではないらしい。
『やあ!やあ!これはこれは僕の花嫁達じゃあない・か☆』
使えないヨム知識に頭痛を起こし始めた頃、閉じられていたダンジョンの扉が勢いよく放たれ、長身のカボチャ紳士が現れた。
『約束の時間よりも早く来るなんてせっかちさ・ん☆』
「リオは何処にいるの?」
『ちゃあんとドレスに着替えて出番を待っている所だよ☆
さあさあ!キミ達もお着替えの時間だ・よ☆』
カボチャ紳士はクスクスと笑い声を上げると右腕をまっすぐに上げ、パチンと指を鳴らした。
扉の奥から植物の根とミミズや蜘蛛の大群が波のようにヨムとカナメ目掛けて押し寄せてくる。
「ヒィィィィィィイイイ!!!」
声にならない悲鳴と共にカナメは意識を失った。
「ジャックスさん!!」
波に呑まれながらもどうにかオニキスをジャックス目掛けて放りなげるとヨムは波に沈んでいった。
『ヨムーーー!!!』
「落ち着けって……花嫁って事は悪いようには扱われねえだろうさ。
……だろう?南瓜王さんよ」
オニキスを摘み上げ、ジャックスはカボチャ紳士……南瓜王に尋ねる。
『んっふっふ☆いかにも
花嫁達の準備が終わるまで暫し獅子頭クンには付き合ってもらおうか・な☆』
『さ、どうぞ』と南瓜王はうやうやしくお辞儀をし、ジャックスを招き入れた。
いちいち動作が演技臭い奴だな……とおもいつつジャックスはダンジョン[魔秋瓜燈:サロメの礼拝堂]へ南瓜王と共に足を踏み入れた。
※起床世界のヨムの好きなホラー映画は『アダムスファミリー』『ビートルジュース』『スウィーニートッド』です。




