第一話 「魔道具使い『ミオ』」
ここから本編始まり
中心の城を守るように囲い散在する家々。
荒野の生き物が街を育み。
荒野の生き物が街を破壊する。
荒野の生き物がこの街の未来を掴んでいる。
超大型魔法都市『ブブゼラ』
-ブブゼラのとある見世物小屋-
手品師が手品をする。
一つ一つの出来事に人々は魅了され心踊らされる。
酒を飲んで暴れ堕落した無頼漢共、家や家族を失い絶望するもの達に須臾の安らぎを与える。
ここにはそんな一人の魔道具使いがいた。
しかし魔道具使いというにはあまりにも身軽な姿をしている。
赤い丸帽から黒髪と黒い目を覗かせ、白いインナーに赤い外套を羽織っていており、中央の住民とも漁師とも違う、一目で『下流』と認識できる外観なのだか、その他の情報は何一つ解らない。魔道具使いにありがちな怪奇な魔道具の類は全く身に付けていなかった。
かつて彼はブブゼラの西の街に住む無類の魔道具好きの少年であった。
-過去
「またそんなの弄ってたのか」
自分の背中から聞き慣れた声が響くのを感じ取った。
「わかっていないなサー、でも君がとってきてくれたから何も言わないことにしておくよ」
そんな俺の声を受け、漁師風の少年が照れているかのように右手で顔を覆い、左手で持っているピザを回転させた。
彼は両手首に幅の広い銀の輪を付けており、腰から下は荒野で採れる生き物の蒼い甲殻を札とした縅を着けている。腰から上は何も身に付けておらず、この砂塵の舞い、強い日が差し込む地域に適しているとは云えない格好をしている。
「まぁお前にとって露天商の商品は100%offだからな」
「今日はどこに行く?」
盗りにいくことが大前提で話が淡々と進む。
「西の港の魔晶石売ってるとこに行こう」
弄っていた魔道具を片付け赤い外套を羽織り、赤い丸帽を深く被った。この砂の舞う地域では顔を覆うような服装が一般的である。しかし漁師は機動性を優先しサーのような格好をしている。
「行こうか」
ログハウスを出た。てきとうに西の方に向かって家と家の間を縫うように駆けていった。港に近づくと道が開けブブゼラを円形に囲う大通りに出た。大通りは特別に黒く透明な石が敷き詰められており、なんでも石は魔晶石でできており結界が張られてるなんて噂があるが、いつか試しに自作魔道具をそこら辺にぶっぱなしても何も起こらなかった、正確にはただ魔道具が正常に作動し大炎上し周辺の家々がぶっ飛んだのが道に敷き詰められている黒い石には何も変わりなかった。
さらに大通りを横切り、西に向かって行くと回りには工場や荒野を走るための船ばかりの所に厳つい男達のたまり場が見える。
ブブゼラでは全ての港の中では西の港が一番安全だと言われていた。
通説では東に行くほど環境が厳しく、またその環境に耐えうる生き物がいると言われていたからだ。
比較的治安が良く、人々が鬩ぎ合い血の臭いが漂うことも多くはない。
荒野にある粘土質のものを固め敷き詰められている地面、広々とした港に広がるボロイ露店のなす無数の列は砂煙に巻かれ景色はいつも黄色い。
ここには西の荒野に漁にいく漁夫達が多く、それを生業とするものが多い。
ここではそんな漁夫達を見て、未知の世界を見てみたいと漁師になりたいと息巻く少年達が少なくない、しかし荒野に出たもので命を落としていった者も少なくない。
漁夫達に支えられこの街は回っている。全ての港が崩壊=ブブゼラの終焉だ。
「あれだ」
露店にうず高くつまれ赤く艶めき透明感のある石を眺めた。
「まかしとけ!」
サーは少し身を屈め重心を前に傾け、青金の波紋を全身に纏い、片手に持っていたピザを完食する。
――毎回思うがこいつの速さの仕組むがわからない、どう考えても異常だ。本人曰く荒野の神秘とかのおかげだとか言ってたけど。
「Hurryup!」
何故かサムズアップをかましてくる。
――俺に早く掴まれと
「お前と違って俺は加速すること楽しめる体質ではないんだよ」
手を掴まれた瞬間、サーが加速する。目は風景を追うことができなくなり蒼い閃光がぼんやりと見える。
刹那、視界が急転した。




