↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/37

元宮廷料理長の『極上デザート』

「ふふふ……私の腕の見せ所ですな!」


神聖果樹園から摘みたてのリンゴとブドウを抱え、専属シェフとなったマルクが白いコック服の袖を捲り上げた。


「アルト様、この至高のフルーツを使って、かつて王立宮廷でも振る舞ったことのない『極上のデザート』をお作りいたしましょう!」


「わあ、本当ですか!?マルクさん、楽しみです!」


アルトが目を輝かせると、マルクは鋭い眼光で庭を見回した。


「ですがアルト様、果実を焼くための『完璧な火加減の窯』と、ゼリーを冷やし固める『冷たい設備』が必要です。この二つがなければ、この神聖な食材の潜在能力を完璧に引き出すことは……」


「あ、それならすぐ作れますよ!」


アルトは愛用のクワを握ると、庭の土と粘土を手際よくこね始めた。


「熱を逃がさない焼き立て用の土オーブンと、ひんやり冷える魔法の冷やし壺……はい、できました!」


ほんの数分で、完璧な熱循環を誇る『特製土窯』と、氷なしで中身を一瞬で冷やし固める『神涼土の冷却壺』が完成した。


「な……なにぃぃぃ!?魔法具の国宝レベルの調理設備を、土を捏ねただけで作り上げただと……!?」


マルクは絶句しながらも、料理人魂に火がついた。


「素晴らしい……!アルト様、最高の環境をありがとうございます!腕が鳴りますぞー!」


マルクは素早い包丁さばきで神聖リンゴを薄切りにし、自家製小麦とバターで作った生地で優しく包むと、熱々の土窯へと投入。さらに、絞りたての神聖ブドウ果汁を特製の冷却壺へと流し込んだ。


しばらくすると、土窯から甘く香ばしい極上の香りが漂い始めた。


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!??!?な、なにこの甘く優しい幸せな香りは……!?」


香りに引き寄せられ、アリサとルナリア、そして巨大な赤竜ポチが吸い寄せられるように集まってきた。全員の口から「ゴクリ」と生唾を飲み込む音が鳴る。


「お待たせいたしました!マルク特製『神聖リンゴの極上アップルパイ』と『神聖ブドウのぷるぷるゼリー』でございます!」


「「「「うわぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」」」」


テーブルの上に並べられたのは、きつね色に香ばしく焼き上がったサクサクのパイと、宝石のように紫に輝くぷるぷるのゼリーであった。


「ささ、冷めないうちに召し上がりください!」


「い、いただきます……!」


元Sランク冒険者のアリサが、震えるフォークで熱々のアップルパイを一口含んだ。


サクッ……ジュワァァァァン!


((((ドカァァァァァァン!!!!))))


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!??!?!」


アリサの脳内で、至高の甘みが弾けた!


「な、なんだこれはぁぁぁぁぁ!!??パイ生地の香ばしさと、中のリンゴのとろけるような甘み……そして爽やかな酸味が完璧に調和している!?一口食べただけで、全身の全魔力が溢れ出して止まらないぞ……!!」


あまりの旨さに、元最強騎士としての誇りも吹き飛び、頬を真っ赤にしてパイを貪り食うアリサ。


一方、エルフ姫のルナリアは冷たいブドウゼリーをスプーンですくって口へ運んだ。


んむっ……ぷるんっ!


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっ!??!?んんんん〜〜〜〜っっ!!美味しすぎますわぁぁぁ!!」


ルナリアは至福の表情で涙をぽろぽろとこぼした。


「口の中でゼリーが一瞬で果汁となってとろけていきますわ……!濃厚なのに後味はすっきり爽やか……!疲れた心と身体が、完全に洗い流されていきますわ〜〜〜っ!!」


「ぐるるぅ〜〜〜〜〜〜っ!!(最高だぁぁぁ!)」


ポチも特大サイズのアップルパイを一口でパクリと平らげ、幸せそうに巨体をゴロゴロと転がして尾をぶんぶん振り回している。


「ふふ、みんな喜んでくれて良かった!マルクさん、本当にお菓子作りも天才ですね!」


アルトが笑顔で称えると、マルクは感無量といった様子で目頭を熱くした。


「いいえ……!私の腕などほんの添え物に過ぎません。すべてはアルト様の育てた至高の食材と、素晴らしい調理設備のおかげです!料理人として、これ以上の幸せはありませんぞ……!」


「うむ……このパイとゼリーは至高だ……!アルト、マルク、おかわりはあるか!?」

「私もですわ!最後のゼリーは渡しませんわよ!」


「ぐるぁ!(私のだ!)」


最後の1個のゼリーを巡り、アリサ・ルナリア・ポチが本気で目力をぶつけ合う賑やかなティータイム。


そんなみんなの幸せそうな姿を見つめながら、アルトはふと果樹園のブドウを見上げて微笑んだ。


「こんなに美味しいブドウがたくさんあるなら……次はじっくり熟成させて、みんなで飲める美味しい『ジュース』や、大人の『果実酒』も仕込んでみようかな!」


「お、お酒だと……!?」


アリサとマルクが同時に目を輝かせ、更なる至高の食文化(神酒)の誕生へと物語は続いていくのだった。

アリサ

「待てルナリア!最後のブドウゼリーは用心棒である私のものだ!」


ルナリア

「いいえ!配膳を担当したわたくしのものですわ!」


ポチ

『ぐるるぅ〜!(すきを突いてゼリーを一口でパクリ)』


アリサ

「あぁっ、ポチずるい!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。