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『土の通信掲示板と、不法投棄された問題児』

「うーん……。これなら遠くの畑にいても、すぐ連絡が取れるかな」


日差しが心地よい『アルト農園村』。


アルトは庭の黒土を捏ねながら、平べったい土の板を何枚も作っていた。


【土いじり】の権能によって形作られたその粘土板は、表面に指で文字を書くと、別の板にも同じ文字がフワッと浮かび上がる不思議な道具であった。


「アルト様、それは何ですの?」


お茶を運んできたルナリアが、興味深そうに首をかしげる。


「これね、『土の通信板』だよ!」


「村が広くなって広報や伝言が大変でしょ?」


「これに文字や絵を書くと、離れた場所にいるみんなの板にもすぐ伝わるんだ」


アルトが手元の通信板に「お茶の時間だよ」と指で書くと、離れた畑で作業していたモフモフたちの通信板にも、同じ文字がぽっと浮かび上がった。


「わぁ〜! すっごいんだぞ〜!」


「しろの板にも文字が出ました♪ あうぅ♪」


肩の上のミニポチと、膝の上のミニシロが大喜びでパタパタと跳ね回る。


「ちょっとアルト……。離れた板に一瞬で文字を共有するって、王宮の超高級魔導具レベルなんだけど……」


コタツの片付けをしていたアリサが、呆れ顔でツッコミを入れた。


「まあまあ! 連絡が便利になるなら良いじゃないですか!」


しかし、その頃。


外界の王国宮殿では、王宮の首脳たちが真剣な表情で緊急会議を開いていた。


「……例の地底パイプライン騒動以降、あの死の魔境は『絶対不可侵の神域』として確定した」


「うむ。あそこへ下手に兵を出せば返り討ちだ。だが……あそこならば、我が国の『頭の痛い問題』も解決できるのではないか?」


首脳の一人が、ニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


「我が国の手に負えない不法投棄問題……つまり、王立魔導院を追放された『超天才引きこもり魔導士』と、借金まみれで追放された『我儘な元聖女』だ!」


「おお……っ! あの扱いづらい問題児たちを、更生の名目で『アルト農園村』へ押し付けるというのか!」


「フフフ……。あそこならどんな問題児でも骨抜きになるか、おとなしく開墾に励むはずだ!」


こうして、外界の身勝手な思惑により、二人の超絶問題児が馬車に乗せられ、『アルト農園村』へと不法投棄されることになったのだった。


数日後。


『アルト農園村』の案内所前に、高級馬車が荒々しく停まった。


馬車から吐き出されたのは、不機嫌そうに腕を組む二人の男女であった。


一人は、ボサボサ頭で周囲をあざ笑うような目つきの青年——超天才引きこもり魔導士のノエル。


もう一人は、派手なドレスを着てキーキーと文句を言う女性——借金まみれの元聖女セシリア。


「けっ! こんなド田舎の開拓地に押し込めやがって!」


「僕の偉大な魔導研究を理解できないバカどもめ!」


「そうですわよ! 聖女であるこの私をこんな泥臭い村に送るなんて、全員バチが当たりますわ!」


案内所の前で、二人はイキり散らしていた。


だが——。


「おい、新顔か? うるさいぞ」


案内所の横で、巨大な木材を素手で叩き割りながら、元四天王のヴァルザックがぎろりと睨みつける。


「ほう、見慣れぬ若者じゃな。草むしりでも手伝うか?」


麦わら帽子を被った大賢者モーリスが、杖を手にニッコリと微笑む。


さらに、庭の奥からは巨大なハンマーを担いだドワーフのおさバランが、ドスドスと歩み寄ってきた。


(((((ひっ……!!??)))))


ノエルとセシリアの背筋に、凍りつくような激痛が走った!


(な、なんだこの村は……!? 元四天王に、大賢者に、伝説のドワーフ鍛冶屋まで作業着を着て溜まっているだと……!?)


あふれ出る神級の圧力に、二人の膝がガクガクと震え始める。


そこへ、汗をサッと拭ったアルトが、とびきりの笑顔でやってきた。


「あ、遠くから手伝いに来てくれた人たちだね!」


「遠路はるばるありがとう〜!」


「さあ、まずはこの作務衣に着替えて、あっちの畑の草むしりと土起しから始めようか!」


アルトは二人の手へ、当然のように木のクワと竹カゴを握らせた。


「え……? ぼ、僕に土いじりを……?」


「私に泥仕事をさせますの……!?」


二人は呆然と立ち尽くしたが、周囲の最強メンバーたちの無言の圧力に逆らえるはずもなく、涙目で畑へと引きずられていくのだった。


「くっ……なぜ僕のような天才が、こんな泥だらけの作業を……!」


「私の美肌がカサカサになってしまいますわ……!」


文句を言いながらも、二人は必死でクワを振り下ろし始めた。


一方、アルトが村の各所に配置した『土の通信板』は、村の中にとどまらず、地脈を通じて世界中の『土壁』や『粘土層』と密かに共鳴を開始していた。


通信板の表面には、まだ誰も気づいていない謎の文字や、怪しい書き込みの気配がフワフワと浮かび上がり始めていたのだが——。


果たして、不法投棄された問題児たちと、この謎の通信板は、世界にどんな新しい嵐を巻き起こすのか——!?

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