『世界樹の神実と、小さくなった仲間たち』
翌朝、爽やかな朝陽が差し込む『アルト農園村』。
アルトが日課の畑仕事に向かおうと外へ出ると、村の中央でエルフの長老エレノアが激しく全身を震わせて立ち尽くしていた。
「神農アルト様、ご覧くだされ!世界樹の枝に……伝説の果実が実っておりますぞ!!」
長老エレノアが指差した先には、黄金色に急成長した【世界樹】の大枝に、まるで七色の宝石のように神秘的な光を放つ小さな実が数個、静かに実っていた。
「わあ、綺麗な果物だね!まるでブドウとリンゴが合わさったみたいだ」
アルトが背伸びをして『世界樹の神実』を1つ摘み取ると、エレノアは目ん玉を飛び出させて叫んだ。
「ひぇぇぇっ!?軽々しく摘み取られましたぞ!?それは数千年に一度、世界に満ちる聖気が極限に達した時のみ実るという幻の『神実』!一口かじれば神々の祝福を受け、潜在する能力が目覚めると伝えられる伝説中の伝説の果実ですじゃーっ!」
「へぇ〜、そんなにすごい果物なんだ!それなら、みんなで少しずつ分けて食べようか!」
アルトはそう言うと、手際よく包丁で『世界樹の神実』を一口サイズに切り分け、集まってきたアリサ、ルナリア、エレノアたち、そしてポチ、シロ、クラーケンに手渡した。
「ふむ、世界樹の実か。ありがたくいただこう」
アリサとお世話になった仲間たちが、おそるおそるその宝石のような一片を口に含んだ、その瞬間!
(((((ドッカァァァァァァン!!!!)))))
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!??!?!」
言葉を失うほどの至福と、澄み切った甘みが全身の細胞を突き抜けた!
「美味い!美味しすぎるぞアルト!魂が浄化されて、身体の奥から未知の力が満ちあふれてくるようだ!」
アリサが感涙にむせび、ルナリアも「あぁぁぁ……全魔力が洗われて、植物たちの声がもっと優しく聴こえるようですわぁぁぁ!」と頬を染めて崩れ落ちた。
全員が究極の味にうっとりとする中、アルトは「ポチたちも召し上がれ!」と、特大ドラゴンポチ、神狼シロ、そして海水池に浮くクラーケンにも実の一片を差し出した。
『ぐるるぅ〜♪』『くぅ〜ん♪』『きゅ〜ぅ♪』
3匹が嬉しそうに実をペロリと平らげた直後!
パァァァァァァァァ……!!
まばゆい黄金の聖光が3匹の巨体を包み込んだ!
「きゃぁっ!?ポチ様たちが光に包まれて……!?」
ルナリアが悲鳴を上げる中、光が徐々に収まっていくと、そこには信じられない光景が広がっていた。
「あれ……?みんな、小さくなってる!?」
なんと、体長10メートル超の巨大赤竜だったポチが、アルトの肩にチョコンと乗れる手のひらサイズの「ミニドラゴン姿」に!
体長数メートルの神狼シロは、アルトの膝の上にすっぽり収まる子犬のような「極上モフモフ子狼姿」に!
そして巨大クラーケンは、空中をフワフワと可愛らしく浮遊する「手のひらサイズのミニタコ姿」へと変貌を遂げていたのだ!
しかも——。
「わぁい!アルト、声が出せるようになったぞ!おいら、アルトとお話ししたかったんだぞ!」
パタパタと小さな羽を羽ばたかせ、ミニポチが愛くるしい声でアルトの頬にすりすり寄ってきた!
「あうぅ♪アルト様!しろ、アルト様と直接お話しできます♪撫でてください、アルト様♪」
ミニシロが愛嬌たっぷりに尾を振って、アルトの膝の上で甘えるように喉を鳴らす。
「アルト様、大変聞き取りやすいお声になりました。これからは陸上の散歩やお給仕も快適にこなせそうでございます」
ミニクラーケンがフワフワと宙を舞い、非常に理知的で丁寧なお辞儀をして見せた。
「「「「ち、小さくなって喋り出しましたわぁぁぁぁぁ!!????」」」」
アリサ、ルナリア、エレノア、人魚のコーラ姫たちが目を丸くして大絶叫!
「な、なんて愛くるしいのですか……!か、可愛すぎますわぁぁぁ!!」
「うむ!小型化してもとの巨大な姿に戻ることも自由自在のようだが……このミニ姿は反則的な愛らしさだなっ!」
アリサとルナリアたちが悶絶しながら、ミニシロのモフモフ毛並みを撫で回し、ミニポチに果物を差し出し、空中を飛ぶミニクラーケンに歓声を上げる。
さらに、実を食べた全員の身体の奥底で、それぞれの潜在能力(固有能力)が静かに覚醒の芽を吹き始めていることなど、誰もがまだ気づいていなかった。
「あはは!ポチもシロもクラーケンも、すごく可愛いね!これからは家の中でもずっと一緒だね!」
アルトが破顔すると、肩の上のミニポチ、膝の上のミニシロ、空中でお茶の準備を手伝うミニクラーケンが、大食堂の特等席を嬉しそうに奪い合うのだった。
だがその頃——。
魔境のさらに奥深くで、アルト農園村から溢れ出る凄まじい聖気を感知し、古代から眠っていた“ある大物”が目を覚まそうとしていることなど、まだ誰も知る由もなかった。




