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『海の国からの大恩返しと、真珠の池』

翌朝、爽やかな風が吹き抜ける『アルト農園村』の入口に、見たこともない豪華絢爛な馬車と、巨大な水槽台車の大行列が到着した。


「命の恩人・神農アルト殿はおられるかぁぁぁ!!」


馬車から降り立ってきたのは、キラキラと輝く王冠を戴いた、海の国『アトランティス』の国王その人であった!


「おや?遠くからたくさんのお客様だね。ようこそ!」


クワを手に朝の作業へ向かおうとしていたアルトが、ニコニコと笑顔で駆け寄る。


「アルト殿!我が国の赤潮を消し去り、絶滅した『神聖コンブ』を蘇らせてくださったこと、心より感謝申し上げる!これは海の国を挙げた感謝の標(しるし)じゃ!受け取ってくだされ!」


国王が合図を送ると、兵士たちが巨大な宝箱を一斉に開け放った。


中から現れたのは、部屋いっぱいに光を放つ手のひら大の『古代の真珠』や、七色に揺らめく国宝級の『純金サンゴ』の山であった!


「なんという眩い輝き!あれは一つで一国の国家予算が吹き飛ぶ伝説の『古代真珠』ではありませんか!?」


居合わせた大商人マルセルが、目を剥いて震え上がっている。


「わあ!すごく綺麗で大きなビーズ(ガラス玉)ですね!」


だが、アルトの反応は違った。


「ちょうど庭の池の底が少し暗いなと思ってたんですよ!このビーズを池の底に敷き詰めたら、お魚たちも明るくて喜びそうだなぁ!」


「こ、国家予算レベルの国宝を池の砂利(底石)にするつもりですかぁぁぁぁ!!??」


あまりの無欲(無自覚)っぷりに、大商人マルセルが白目を剥いてその場で派手に卒倒した。


「お父様!わたくし、決めましたわ!」


そこへ、冷やしトマトをかじりながら人魚姫のコーラがやってきた。


「わたくし、アルト様の美味しい野菜やコンブ、そしてこの温かい農園村が大好きですの!この村にずっと定住いたしますわ!」


「な、なんですってぇぇぇぇーーーっ!!??」


国王の背後から、過保護で有名な侍女長ルチア率いる人魚侍女団が悲鳴を上げて飛び出してきた。


「コーラ様、正気ですの!?陸の村など危険すぎますわ!すぐにお城へお戻りください!」


「そうですわ!お戻りください!」


必死で引き止めようとする侍女たちに、アルトは優しく微笑みかけた。


「まあまあ、遠くからようこそ!朝から長旅で喉が渇いたでしょう?採れたての野菜と冷たいお菓子をどうぞ!」


アルトは井戸水でキンキンに冷やした【神聖冷やしトマト】と、昨日作った【手作りバニラアイスクリーム】を小皿に盛って手渡した。


「ふん!陸の食べ物ごときで、わたくしたちの決意が揺らぐとでも……」


侍女長ルチアが半信半疑で冷やしトマトをかじり、侍女達がアイスクリームを口に含んだ、その瞬間!


(((((ドッカァァァァァァン!!!!)))))


「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!??!?!」


侍女たちの頭上で、雷のような衝撃が駆け抜けた!


「な、ななな、なんですのこの甘みと冷たさはぁぁぁ!!??身体の真ん中から溢れ出るような凄い魔力が湧き上がって……天国が見えますわぁぁぁ!!」


あまりの美味さと至福に、侍女全員が大号泣して大歓声を上げた!


「コーラ様!おっしゃる通りですわ!わたくしたちも今日から一生ここでコーラ様にお仕え(定住)いたしますわぁぁぁ!!」


「ルチア、前言撤回が早すぎますわ……」


コーラ姫が苦笑いする中、あまりに幸せそうに笑う娘たちの姿を見た国王も、目頭を熱くして頷いた。


「うむ……コーラも侍女たちも、これほど幸せそうなら何も言うことはない!アルト殿、娘たちをよろしく頼むぞ!」


「はい!みんなで賑やかに過ごしましょうね!」


さっそくアルトは【土いじり】を発動し、愛用のクワを一振り!


カツン!


アルトの権能が発動し、庭の海水池が何倍にも広大に拡張され、底には献上された『古代の真珠』が美しく敷き詰められた!


さらに、透明な神涼土(ガラス粘土)を使って、水上に浮かぶ「水上コテージ」と、水中でも快適に過ごせる「水中ドーム住宅」を一瞬で建設!


『真珠の池』と名付けられたその美しく快適な住居に、人魚侍女たちが大歓声を上げて飛び込んでいくのだった。


こうして、人魚たちが新たに加わり、いよいよ巨大な『アルト農園村』として新たな一歩を踏み出した仲間たち。

だが翌朝——。

村の中央にそびえる世界樹の枝に、誰も見たことがない不思議な奇跡(異変)が起きようとしていることなど、まだ誰も知る由もなかった。

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