モフモフ牧場と、ひんやり『アイスクリーム』
「ふぅ〜!海の底の畑仕事も無事に終わって良かったなぁ!」
地下バイパストンネルを通って『アルト農園村』へと戻ってきたアルトは、爽やかに汗を拭って笑顔を浮かべた。
「ああ、まさか海底に『神聖コンブ』の森が出現するとはな。これで海の国も救われるだろう」
大剣を納めた元Sランク冒険者のアリサが頷き、人魚姫コーラも「本当に感謝してもしきれませんわ……!」と胸の前で手を合わせている。
すると、農園村の広場から「ガオッ!」「くぅ〜ん!」と賑やかな声が響き渡った。
「アルト様、お帰りなさいませ!」
出迎えてくれたのは、エルフの長老エレノアと、巨大な赤竜ポチ、そして銀狼シロであった。
ポチとシロは、誇らしげに胸を張り、千切れんばかりに尾を振ってアルトに駆け寄ってくる。
「あれ?ポチ、シロ、長老さん!なんだかすごく楽しそうだね?」
「ふふふ、神農アルト様!アルト様が海の開拓へ向かわれている間、我ら留守番組も『村のために何か役に立とう』と奮起いたしましてな!」
長老エレノアが嬉しそうに指差した先には、木製のバケツになみなみと注がれた、真珠のように白く輝く新鮮な『神聖ミルク』が大量に並べられていた。
「おおっ!これは神聖放牧地で放牧している聖牛のミルクではないか!」
アリサが驚き声を上げる。
「左様ですじゃ!ポチ様とシロ様が優しく牛たちをエスコートしてくださり、我らエルフの手で極上の聖ミルクをたっぷり搾乳いたしましたぞ!」
ポチとシロが「どうだ!」と言わんばかりにドヤ顔でアルトの左右に鼻先を擦り付けておねだりしてくる。
「わあ、すごい!ポチもシロも、長老さんもありがとう!なでなで!」
アルトが2匹の頭を優しく撫でまわすと、ポチは「んほぉ〜♪」、シロは「くぅ〜ん♪」と幸せそうに目を細めて身悶えした。
「よし!こんなにたくさんの新鮮なミルクがあるなら……コンブ出汁スープの後は、冷たくて甘い“アイスクリーム”を作ってみようか!」
「ア……アイスクリーム……!?」
アリサとルナリアが同時に首をかしげた。
「アルト様、氷や冷気魔法を使わずに、冷たいお菓子を作るなど……」
「大丈夫!【土いじり】で冷気を一切逃がさない特別な土器を作れば、すぐできますよ!」
アルトはそう言うと、愛用のクワを振るい、足元の黒土と粘土を手際よく練り上げた。
カツン!
アルトの権能【土いじり】が発動し、冷気を永久に蓄える『神涼土の魔法氷室(冷凍庫)』と、手でくるくる回すだけで一瞬で中身をキンキンに凍らせる『アイス撹拌土器』が一瞬で完成した!
「な、なんですのその魔法具以上の土器はぁぁぁ!!??氷すら使わずに土の魔力だけで冷却しておりますわ!?」
絶叫するルナリアを横目に、専属シェフのマルクが目を輝かせて腕を捲り上げた。
「素晴らしい!アルト様、手伝わせていただきますぞ!新鮮な神聖ミルクに、自家製ハチミツと神聖卵を加えて……撹拌いたします!」
マルクが特製土器で手際よく材料を混ぜ合わせ、魔法の氷室へ投入して冷やすことわずか数分。
ふんわりと甘く香ばしい、濃厚なバニラの香りが周囲一面に広がった!
「はい、できました!異世界初の『特製手作りアイスクリーム』です!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉっっっ!!!???」」」」
土器の中に出来上がっていたのは、雪のように真っ白で、とろけるように滑らかな極上のアイスクリームであった!
「ささ、まずはがんばってくれたポチとシロからね!」
アルトが特大の土器皿に山盛りのアイスを盛り付けて差し出すと、ポチとシロは大きな舌で勢いよくペロリと舐めとった。
(((((ドッカァァァァァァン!!!!)))))
『んほぉぉぉぉぉぉぉぉ!!??(冷たい!甘い!うますぎるぞぉぉぉぉぉ!!)』
冷たさと濃厚な甘みが口いっぱいに広がり、ポチとシロはあまりの美味さに「もっとくれ!」と大暴れしながらアルトにすりすりと甘え狂った!
「冷たぁ〜い!しかも、すごく美味しいですわぁぁぁ!!」
人魚姫のコーラもスプーンで一口食べ、頬を真っ赤にして大喜びしている。
「口の中でとろけて消えていく!甘みとミルクのコクが極上すぎるぞ!」
元Sランク騎士のアリサも、騎士の威厳を忘れて夢中でアイスを頬張り、ルナリアやエルフたちも「天界の冷やし菓子以上ですわぁぁぁ!」と大狂乱の女子会がスタートした。
「ふふ、みんな喜んでくれて良かった!留守番組のみんなのおかげだね!」
アルトが満面の笑みを浮かべると、エルフたちと仲間たちは【土いじり】で作ったばかりの『中央広場のベンチ』に腰掛け、冷たいアイスを味わいながら幸せな午後のひとときを過ごすのだった。
だがその頃__。
食糧難から救われた海の国『アトランティス』の王宮では、アルトの噂が飛び交っていることなど、まだ誰も知る由もなかった。




