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『AGISS -対神機関-』  作者: 羽吹南瓜
シン章
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第61話『観測者』

――AGISS日本本部・地下第七区画・研究室。


巨大な古代端末の前で、久城透真は立ち尽くしていた。


画面に表示されているのは、たった一つの文字列。


OBSERVATION : CONTINUED

適合者:確認


「……適合者って、誰のことだ?」


透真が呟く。


隣に立つ神代八重が、画面を見つめる。


「この遺跡が作られた時代の人……でしょうか」


その瞬間。


――ズゥン。


透真の胸元に、黒い光が走った。


「っ……!」


「透真くん!?」


八重が駆け寄る。


しかし。


ヴァルグレイヴの装甲は出現していない。


それなのに――


何かが、応答していた。


『…………』


「ヴァルグレイヴ?」


返事はない。


だが、透真の脳裏に一瞬だけ――


知らない景色が映った。


青い空。


巨大な都市。


そして、その都市を見下ろす一人の少年。


オレンジ色の髪。


「……誰だ?」


映像は一瞬で消えた。


「久城君?」


「いや……なんでもない」


透真は頭を振った。


まだ、自分でも何が起きたのか分からない。


その時だった。


――カチ。


古代端末の横にあった小さな装置が起動する。


「え?」


画面が切り替わる。


OBSERVATION LOG


観測対象:HX-01


状態:継続


記録時間:――


そこで文字が途切れる。


そして新たな文字が浮かんだ。


観測対象は現在も存在する。


透真の表情が変わった。


「……現在も?」


神崎ミサキが端末を覗き込む。


「おかしい……」


「何が?」


「この装置、古代文明のものなんだよね」


「……ああ」


「なのに、この文章……まるで今この瞬間を見ているみたい」


――沈黙。


その時。


研究室の奥。


誰も触れていない端末が、一つ。


また一つ。


次々と起動していく。


――ピッ。


――ピッ。


――ピッ。


「なんだ……?」


レオンが腰の剣に手を添える。


鳴海も銃を構えた。


「おいおい、また怪異とか勘弁してくれよ……」


だが。


敵は現れない。


代わりに、壁一面のモニターへ同じ文字が表示された。


OBSERVATION : CONTINUED


そして――


観測対象:HX-01

適合者:久城透真


「…………」


透真が息を呑む。


「俺……?」


その直後。


――ドンッ!!


施設全体が揺れた。


「うわっ!」


天井から埃が落ちてくる。


警報が鳴り響く。


『警告。地下深層区画において、未知のエネルギー反応を確認』


「Genesisか!?」


レオンが振り返る。


さらに警報。


『エネルギー反応、増大』


『増大』


『増大――』


「まずい!」


伊藤の声が通信機から飛び込んできた。


『久城! そこから離れろ!』


「伊藤さん?」


『今すぐだ! その遺跡は――』


通信が途切れる。


――バチッ!


「伊藤さん!?」


暗闇。


そして。


研究室中央の床が、ゆっくりと開いた。


そこから現れたのは――


巨大な円形の装置。


機械なのか、遺跡なのかすら分からない。


中央には、何もない。


ただ黒い空間だけが広がっている。


「……何だ、これ」


透真が一歩近づく。


すると。


黒い空間の奥から――


声が聞こえた。


『……ようやく』


透真が固まる。


「……誰だ?」


『……戻った』


「戻った?」


声は続かない。


しかし。


ヴァルグレイグが反応する。


――ギィン。


透真の右腕に、黒い装甲が一瞬だけ浮かび上がった。


その装甲を見た瞬間。


南瓜が、初めて明確に表情を変えた。


「……やっぱり」


「南瓜?」


「いや……」


南瓜は端末を見る。


そこには、いつの間にか新しい文字が表示されていた。


OBSERVATION TARGET : HX-01

VESSEL : ACCEPTED


そして最後に。


NEXT OBSERVATION――


文字が消える。


代わりに、一つの名前だけが表示された。


――SOLANUM


「…………ソラナム…ってヴァルグレイブの…」


透真には、その名前に心当たりがあった。


その隣で南瓜が静かに目を伏せる。


「……南瓜?」


「……今は、まだ知らなくていいよ」


「え?」


南瓜はいつもの笑顔に戻った。


「その名前の意味は――」


一瞬だけ、彼の目が真剣になる。


「君が自分で知ることになる。」


――その頃。


AGISS本部・中央管制室。


大量の古代文明データを監視していた伊藤は、一つの波形を見つめていた。


それは二億年前の記録。


そして現在の記録。


本来なら絶対に一致するはずのない二つの波形が――


完全に重なっていた。


伊藤が呟く。


「……二億年経っても、終わっていなかったのか」


誰も答えない。


彼は画面に表示された一枚の古い写真を睨む。


そこには――


現代のAGISS隊員ではない。


見たこともない格好の人間たちと、

一機の黒いHXが写っていた。


写真の端には、古代文字で一言。


『|3+÷$「×○0^(観測は続いている)』


そして今。


その視線は、確かに――


久城透真へ向けられていた。

次回予告

『二億年前の記憶』


古代文明の記録を調べる中で、透真たちは「HX適合者」という言葉の本当の意味に近づいていく。


しかし、調査を進めるほど――


ヴァルグレイヴが、反応を見せ始める。


そして南瓜の前に現れる、一人のAGISS上層部。


「羽吹南瓜。君は――神についてどう思う?」

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