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『AGISS -対神機関-』  作者: 羽吹南瓜
シン章
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第60話「八年前の亡霊」

――AGISS日本本部・地下第七区画。


「……八年前の事件?」


南瓜は、目の前の男を睨んでいた。


「君がAGISSから姿を消した事件だ」


「僕が?」


「ああ」


男は淡々と答える。


「君は当時、AGISSの研究施設にいた。そしてある事故の後、行方不明になった」


「事故……」


南瓜の頭に、断片的な映像が浮かぶ。


白い部屋。


赤い警告灯。


誰かの叫び声。


そして――


巨大な光。


「……っ」


南瓜が額を押さえる。


男は一歩近づく。


「無理に思い出す必要はない」


「だったら、なんで僕をここに連れてきた?」


「確認したかっただけだ」


「何を?」


「君が――」


男の言葉が止まる。


その瞬間。


地下施設全体に警報が響き渡った。


『警告! 第七区画に異常反応!』


『未確認エネルギー反応を検知!』


男の表情が変わる。


「……まさか」


神崎が端末を見る。


「この反応……HX?」


「違う」


男が即答した。


「これは――」


モニターに表示された数値が跳ね上がる。


「……Genesis反応だ」


南瓜の目が細くなる。


「Genesis……」


その言葉を聞いた瞬間。


南瓜の胸の奥が、微かに熱くなった。


――同時刻・本部中央管制室


「地下七区画で異常反応だと!?」


透真たちにも警報が届いていた。


鳴海が立ち上がる。


「なんやなんや! 帰ってきたばっかやぞ!?」


「羽吹さんが地下にいます!」


八重が叫ぶ。


透真は即座に走り出した。


「南瓜を助ける!」


「待て!」


伊藤の声が響く。


「久城!」


透真が振り返る。


「これは君たちの任務ではない」


「仲間が地下にいるんだぞ!」


「だからどうした!」


伊藤が強い口調で言う。


「地下第七区画は、君たちが勝手に入っていい場所ではない!」


「だったら――」


透真が拳を握る。


「俺たちが入らなきゃ、南瓜はどうなる?」


沈黙。


伊藤は答えない。


その反応だけで十分だった。


「……やっぱりな」


透真は踵を返す。


「行くぞ!」


「了解」


八重、レオン、鳴海、カズキが続く。


そして全員が地下へ向かった。


――地下第七区画


「これは……」


南瓜は周囲を見回した。


壁面に埋め込まれていた古い装置が、次々と起動していく。


しかし、それらはAGISS製の機械ではない。


もっと古い。


何十年。


何百年。


そんな単位ではない。


明らかに現代の文明とは異なる技術。


「これ……AGISSの施設じゃないよね」


神崎が答える。


「この区画そのものは、AGISSが作った」


「じゃあ、この装置は?」


「……発掘されたものよ」


南瓜が振り返る。


「発掘?」


神崎は頷く。


「この施設を建設したとき、地下から出てきた」


「いつの?」


「分からない」


神崎は少し困ったように笑う。


「年代測定が成立しないの」


「……どういうこと?」


「素材そのものは古い。でも、構造だけを見ると現在の技術より遥かに高度」


南瓜は壁に触れる。


「変なの」


その瞬間。


壁面に刻まれた文字が――


淡く光った。


「……!」


南瓜が手を離す。


「今、光った?」


神崎が駆け寄る。


「触って!」


「え?」


「もう一度!」


南瓜が恐る恐る壁に触れる。


――光。


今度ははっきりと反応した。


古代文字が一つずつ浮かび上がっていく。


神崎の顔色が変わる。


「……これ、石板で発見された文字と同じ……」


男も画面を確認する。


「解析班を呼べ!」


だが――


壁面の文字が変化する。


神崎が読み上げる。


「……『器』?」


南瓜が固まる。


「器……?」


その直後。


壁の一部が開いた。


中から出てきたのは――


小さな金属製のプレート。


表面には、一つの文字。


GENESIS


南瓜がそれを見つめる。


「……また、この言葉?」


その時。


――ドクン。


地下全体が揺れた。


「何!?」


壁面の装置が一斉に発光する。


そして南瓜の目の前に――


一瞬だけ、映像が浮かび上がった。


荒野。


巨大な建造物。


空を覆う無数の光。


そして、その中央に立つ――


一体の巨大な人型兵器。


南瓜には分からない。


だが。


その姿を見た瞬間。


南瓜の口から、無意識に言葉が漏れた。


「……ヴァルグレイヴ?」


「……え?」


神崎が振り返る。


「今、何て?」


南瓜自身も驚いていた。


「……分からない」


映像は消える。


「僕……なんで、あの名前を……」


その瞬間。


地下への扉が吹き飛んだ。


「南瓜!」


透真たちが飛び込んでくる。


「透真!」


南瓜が振り返る。


透真は周囲を見回す。


「何があった!?」


「それが――」


神崎が答えようとした、その時。


ヴァルグレイヴが――


透真の右腕の中で、突然反応した。


「っ!?」


赤い光が走る。


《……》


透真が息を呑む。


「ヴァルグレイヴか?能力を使おうとしてないのになんで…?」


その声が――


一瞬だけ、聞こえた。


《……懐かしい》


「……え?」


透真には、それが自分の幻聴なのか分からなかった。


しかし南瓜も、同時に顔を上げていた。


「……今」


「南瓜?」


「ううん」


南瓜は笑う。


けれど、その表情は少しだけ不安そうだった。


「……なんでもない」


――地下施設の奥。


誰にも気づかれない場所で。


古代装置の一つが再び起動する。


そこに表示された文字は――


OBSERVATION : CONTINUED


そして、その下に。


適合者:確認


次回予告


古代遺跡から発見された、Genesisの記録。


そして透真のヴァルグレイヴが見せた、初めての異変。


「……懐かしいって、どういう意味だ?」


一方、AGISS上層部では特殊探索班に対する処分が検討され始めていた。


「HXを持つ者たちを、これ以上自由にしておくわけにはいかない」

次回――


『観測者』


二億年の時を越えた視線が、静かに動き始める。

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