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『AGISS -対神機関-』  作者: 羽吹南瓜
シン章
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第58話 「AGISS――その正義の裏側」

特殊探索班を乗せた輸送機が、格納庫へ着陸する。


ハッチが開く。


「……日本、帰ってきたぁー!」


鳴海が大きく伸びをした。


「長かったな……」


レオンが荷物を持ち上げる。


カズキもその後ろから降りてくる。


「皆さん、お疲れ様でした」


「お疲れー」


透真が軽く手を上げる。


いつもなら、ここで終わる。


任務完了。


報告書を書いて、装備を整備して、次の任務を待つ。


――だが。


今日は違った。


格納庫の出口に、武装したAGISS隊員が並んでいた。


「……来たか」


透真の足が止まる。


鳴海も表情を変えた。


「ずいぶんと派手なお出迎えやねぇ?」


隊員たちは無言で銃を特殊探索班に向けて構えている。


「……おい」

透真が一歩前へ出る。

「味方に銃を向けるとはどういうつもりだ?」

隊列の中央から、一人の男が歩いてくる。


黒いスーツ。


AGISSの制服ではない。


年齢は五十代ほど。


眼鏡の奥から、こちらを冷静に見つめている。


「久城透真」


「……誰だ?」


「AGISS本部管理局所属。伊藤宗麟だ」


男は淡々と告げる。


「君たちには、これから事情聴取を受けてもらう」


「全員?」


「全員だ」


御堂の視線が移る。


最後に――


羽吹南瓜へ。


「ただし、彼だけは別だ」


「……」


南瓜が黙る。


透真が南瓜の前に立った。


「輸送機の連絡で話は聞いたけどさ、一体どういうつもり?」


「彼には確認しなければならないことがある」


「何を?」


御堂は答えない。


代わりに、後ろの隊員へ視線を送った。


「羽吹南瓜を連行しろ」


「待てよ!」


透真が腕を伸ばす。


だが――


南瓜が透真の腕を振り払った。


「離して」


「えっ…」


「大丈夫だから」


南瓜は笑った。


「僕なら平気だから」


「でも――」


「透真」


南瓜は少しだけ声を落とす。


「AGISSが僕をどう扱うつもりなのか……僕自身も知りたい」


「……」


「だから、行ってくる」


南瓜は隊員たちの間を歩いていく。


その背中を見ながら、透真は拳を握った。


――同時刻・AGISS本部地下


「ここだ」


伊藤に案内され、南瓜はエレベーターに乗せられる。


地下へ。


地下へ。


さらに地下へ。


表示される階数が、どんどん減っていく。


B1。


B2。


B3。


――B7。


扉が開いた。


そこには、普通の施設とは明らかに違う空間が広がっていた。


無機質な白い壁。


大量の観測モニター。


そして――


ガラス張りの資料保管室。


南瓜が足を止める。


「……ここ」


「知っているか?」


「いや」


南瓜は首を横に振る。


「知らない」


少し間を置いて。


「……でも」


胸元を押さえる。


「なんか、嫌な感じがする」


伊藤はその反応を見逃さなかった。


「やはりか」


「……?」


「入れ」


扉が開く。


中央に、一つの机。


その上に置かれていたのは――


古びた写真。


南瓜が手に取る。


「……僕?」


そこには、幼い南瓜が写っていた。


だが。


その隣には――


白い装甲。


Genesisによく似た姿。


「……これ」


南瓜の指が震える。


「僕、こんなの知らない」


「当然だ」


伊藤が言う。


「その写真を撮影した時点で、君の記憶はすでに処理されている」


「……記憶を?」


「そうだ。」


伊藤はモニターを操作する。


画面に古いデータが表示される。


PROJECT GENESIS

被験者:AG-00

状態:適合

記憶処理:実施済み


南瓜の顔から、笑みが消えた。


「……AG-00?」


「そうだ」


「これ……僕なの?」


伊藤は答えなかった。


代わりに別の資料を表示する。


AG-00――羽吹南瓜


特殊能力:世界の変容


特記事項:HXとの異常な親和性を確認。


南瓜が画面を見つめる。


「……」


そして。


その文字を見た瞬間――


頭の奥で。


何かが弾けた。


『――次』


『もっと強く』


『世界を書き換えろ』


『君ならできる』


『Genesisを――』


「……っ!」


南瓜が頭を押さえる。


「う……!」


「羽吹」


伊藤が近づく。


しかし南瓜は手を振った。


「触るな……!」


息を整える。


「今……何か……」


「思い出したか?」


「……分からない」


南瓜は顔を上げる。


「でも、一つだけ」


「何だ?」


「この計画……」


南瓜の視線がモニターへ向く。


「僕という存在に深く関わってる。」


伊藤の表情が初めて変わった。


「……そうか」


「え?」


「いや」


伊藤は静かにモニターを閉じる。


「今日はここまでだ」


「待って」


南瓜が振り返る。


「Genesisって何なんだ?」


伊藤は扉の前で立ち止まった。


「それを知りたいのは、我々も同じだ」


「……え?」


「ただし」


伊藤は南瓜を見る。


「確かなことがある」


「何?」


「Genesisは、今回初めて現れたわけではない」


南瓜の目が見開かれる。


「……じゃあ」


「過去にも一度――」


伊藤は言った。


「君の前に現れている。」


扉が閉まる。


南瓜だけが、その部屋に残された。


「……僕の前に?」


静まり返った部屋。


南瓜は写真を見つめる。


幼い自分。


その隣に立つ白い影。


そして――


写真の端。


ほんの小さく。


現在の特殊探索班のエンブレムと同じマークが刻まれていた。


――その頃、別室


「遅いな」


透真が腕を組んでいる。


八重、レオン、鳴海、カズキ。


全員が同じ部屋に集められていた。


机の上には、分厚い資料。


「これ……全部俺たちの任務記録か?」


透真がページをめくる。


黒瀬特区。


裏部屋。


HX争奪戦。


そして――


ヴァルグレイヴ。


「……なんか、おかしくないですか?」


八重が呟く。


「何がです?」


「ここ」


八重が資料の一部分を指す。


そこには――


HX-01 ヴァルグレイヴ


AGISS確認日:XXXX年


透真が固まる。


「……待て」


レオンも眉をひそめる。


「ヴァルグレイヴが確認されたのは、透真が適合した時ではなかったのか?」


「そうだよ」


透真が答える。


「俺が初めてヴァルグレイヴを使った時が――」


「じゃあ」


八重がページをめくる。


そこには透真が生まれるより前の日付。


「……なんで?」


部屋の空気が凍る。


その瞬間。


天井のスピーカーから声が響いた。


『特殊探索班の諸君』


伊藤の声。


『君たちには、まだ伝えていない情報がある』


透真が立ち上がる。


『これから話すことは、AGISSそのものに関わる』


一拍。


『そして――』


『君たちが信じてきた「HX」という存在についてもだ』


通信が切れる。


透真は資料を握りしめた。


「……一体、何なんだよ」


その問いに答える者は――


まだ、誰もいなかった。

次回予告


AGISSに残された、過去の記録。


存在しないはずのヴァルグレイヴ。


記憶から消された羽吹南瓜。


そして、AGISS創設以前から存在していた謎の計画。


「俺たちが知らないAGISSが……あるってことか?」


次回、


『封印された記録』


AGISSの過去が、少しずつ姿を現す。

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