第56話『始まりのHX』
――オランダ・ロッテルダム
「HX-00……Genesis。」
羽吹の声は震えていた。
透真が振り返る。
「知ってるのか!?」
「……知ってる。」
羽吹は空を見上げたまま答えた。
「いや。」
「正確には……。」
「僕が知らされていたHX計画の、一番最初の機体。」
その言葉にリアが目を見開く。
「HX-00って、本当に存在したの……?」
エルもセラフィム越しにGenesisを見つめる。
『データ照合開始』
『HX-00』
『Genesis』
『該当記録……閲覧権限不足』
「セラフィムでも知らないのか……。」
レオンが呟く。
その時。
ANGEL PRIMEの声が響く。
『HX-00 Genesis』
『全HXの原型』
『戦闘データ収集を開始します。』
「収集……?」
透真が眉をひそめた。
『適合者の実力を測定します。』
次の瞬間。
Genesisがゆっくり顔を上げた。
顔はない。
真っ白な仮面。
胸部には巨大な青白いコア。
右腕だけ異様に巨大だった。
そして。
一歩。
ドンッ!!
地面が沈む。
「避難してください!」
エルが叫ぶ。
オランダ支部の隊員たちが市民を誘導する。
「第一小隊!西地区を封鎖!」
「第二小隊は住民を地下シェルターへ!」
一方。
怪異の群れはなおも押し寄せる。
「鳴海!」
「任しとき!」
大型機関銃が火を吹く。
ダダダダダダダ!!
怪異を足止めする。
「カズキ!」
「はい!」
紅黒炎が怪異を焼き払い、防衛線を維持する。
八重は結界を維持し続ける。
「もう少し……!」
レオンがその前へ立つ。
「誰一人、通させない。」
聖剣が閃く。
その頃。
Genesisが右腕を持ち上げた。
『模倣開始』
「模倣……?」
次の瞬間。
Genesisの右腕に。
赤いラインが走る。
「まさか!」
羽吹が叫ぶ。
「透真!避けろ!!」
《オーバードライブ》
Genesisが発した音声。
「なっ……!?」
透真の目が見開かれる。
ヴァルグレイヴだけのはずの能力。
それを。
Genesisが使った。
ドォォォォォォン!!
拳が一直線に迫る。
「くっ!」
ギリギリで回避。
ビルが一棟、真っ二つに吹き飛んだ。
「嘘だろ……。」
リアですら笑顔を失う。
「コピーした……?」
『違う。』
ヴァルグレイヴが答える。
『あれが原型。』
『我々が模倣された存在だ。』
静寂。
「……え?」
透真は言葉を失った。
「ヴァルグレイヴが……コピー?」
『肯定。』
『HX-00 Genesis』
『全HXの始祖。』
『全能力の原点。』
その言葉に、戦場全体が凍りつく。
「じゃあ……。」
羽吹が静かに呟く。
「全部。」
「Genesisから生まれたってことか……。」
その時。
Genesisの胸部コアが眩く輝き始める。
ANGEL PRIMEが淡々と告げる。
『第二試験を開始。』
『Genesis』
『戦闘制限を解除します。』
その一言で。
Genesisの全身から、これまでとは比べ物にならないほどの圧倒的なエネルギーが噴き上がった。
リアはBEASTを見上げ、小さく呟く。
「……まずい。」
エルもセラフィム越しに分析を続ける。
『戦闘予測。』
『勝率』
『0.8%。』
「そんな……。」
透真はヴァルグレイヴの操縦桿を強く握りしめた。
「だったら。」
「0.8%を。」
「100%に変えてやる。」
ヴァルグレイヴの赤いバイザーが鋭く輝いた。
次回予告
HXの始祖・Genesisがついに本格始動。
その圧倒的な力に、ヴァルグレイヴ、セラフィム、BEASTの三機ですら追い詰められていく。
敵同士だった透真、エル、リアは、生き残るために一時共闘を決断する。
次回 第九話『共闘、三機のHX』




