第3話『獣は空から来る』
警報が鳴る。
オランダ市街地。
怪異出現。
そう聞いていた。
だから俺たちは出撃した。
ヴァルグレイヴ。
セラフィム。
初の共同任務。
「そっちの班長さん。」
鳴海がエルへ話しかける。
「いつもそんな硬いん?」
「任務中です。」
「うわ。」
「透真より真面目や。」
「比較対象がおかしい。」
美玲が呆れる。
そんなやり取りをしながら。
現場へ到着した。
しかし。
全員が足を止める。
「……怪異は?」
八重が呟く。
いない。
街は静かだった。
避難も終わっている。
怪異の気配もない。
レオンが周囲を警戒する。
「妙だ。」
その時だった。
ゴォォォォォォォ!!
空。
何かが落ちてくる。
「上だ!!」
玄馬が叫ぶ。
反射的に飛び退く。
次の瞬間。
ドォォォォォォン!!!
大地が砕けた。
衝撃波。
建物の窓ガラスが震える。
煙。
土砂。
その中心。
巨大な影。
「……なんだあれ。」
俺は思わず呟く。
獣だった。
巨大な四足獣。
全長十メートル以上。
黒。
金。
鋭い牙。
赤い瞳。
背中には装甲。
そして。
機械だった。
「HX反応確認!!」
オランダ支部のオペレーターが叫ぶ。
全員。
「は?」
静寂。
その時。
セラフィムが喋った。
『識別完了。』
『HX-06』
『BEAST』
空気が凍る。
エルが目を見開く。
「新たなHX……!?」
俺も驚いていた。
「待て。」
「HXって。」
「何機もいるのか?」
羽吹が頭を抱える。
「あー。」
「言うタイミング失った。」
「何をだ。」
羽吹がため息を吐く。
「今まで封印されてたんだよ…それがヴァルグレイブを筆頭に起動しだした。」
「は?」
「しかも世界中に。」
沈黙。
鳴海。
「今言うことか?」
その時。
BEASTが咆哮する。
ガァァァァァァァ!!
大気が震える。
そして。
突撃。
速い。
とんでもなく。
地面が抉れる。
建物が吹き飛ぶ。
一直線。
目標。
エル。
「っ!!」
セラフィムが翼展開。
回避。
だが。
BEASTは止まらない。
『目標確認』
『HX-02』
『捕獲開始』
全員。
「喋った!?」
しかも。
人格AI。
ヴァルグレイヴと同じ。
セラフィムと同じ。
HXだった。
そして。
BEASTの頭部装甲が開く。
中に。
人影。
誰か乗っている。
「搭乗者がいる!?」
エルが驚く。
俺も驚いていた。
その人物は笑っていた。
少女だった。
褐色肌。
長い銀髪。
オレンジ色のゴーグル。
「やっと見つけた!」
楽しそうな声。
「セラフィム!」
「ヴァルグレイヴ!」
「あと知らない人たち!」
鳴海。
「雑やな!!」
少女は笑う。
「私はリア・ハンター!オーストラリアから来たんだよ。」
そして笑顔のままこう言った。
「あなた達のHX貰いに来たよ!」
静寂。
「……貰う?」
透真。
「うん!」
と答えるリア
「全部!」
空気が凍った。
その瞬間。
セラフィムが呟く。
『開始された。』
「何が。」
『HX争奪戦。』
その言葉。
世界が一変する。
HXは兵器ではない。
遺産でもない。
世界中の適合者達が。
互いのHXを巡って争う。
その戦い。
HX争奪戦。
その開幕だった。
次回予告
HX-06 BEAST VS HX-02 セラフィム。
そしてヴァルグレイヴ参戦。
オーストラリアの問題児リア・ハンターが大暴れ。
さらに明かされるHX同士の「捕食」という概念。
次回――
第四話『獣は天使を喰らう』




