第二話 『白翼の適合者』
「オランダやー!」と鳴海が叫ぶ。
俺にとって初の海外だ、だが観光気分になれる空気じゃなかった。
目の前にはAGISSオランダ支部。
神戸支部の何倍もある巨大な白い施設だ。
「デカいな……」
とたじろぐと
「流石ヨーロッパ支部やな。」
鳴海が感心したように言う。
「感心している場合ではありません。」
八重はいつも通りだった。
その時、支部上空に光が舞った。
白い粒子羽がまるで雪のように降り注ぐ。
「綺麗……」
八重が思わず呟く。
すると、次の瞬間空から人影が降りてくる。
白銀の装甲。
背中には六枚の光翼。
純白のアーマー。
頭部には金色のリング状ユニット。
まるで天使だった。
静かに着地する。
ガシャンと音を立てて装甲が解除される。
中から現れたのは。
銀髪の少女。
蒼い瞳。
白いコート。
「ようこそ。」
少女は俺たちを見る。
「AGISSオランダ支部へ。」
「私はエル・ファン・ローゼンベルク。」
「特殊探索班班長です。」
鳴海。
「特殊捜査班って俺等と同じ…」
八重。
「オランダ支部のですか。」
レオン。
「その都市で班長とは優秀なのだろう。」
エルは小さく頷いた。
そしてその視線が俺に向く。
「あなたがHX-01Cヴァルグレイヴの適合者。久城透真ですね?」
空気が変わる。
「そうだけど。」
エルは迷いなく言った。
「確認したいことがあります。」
「なんだ。」
「ヴァルグレイヴは。」
一拍置く。
「起動中に声が聞こえますか?」
全員が固まる。
「……聞こえる。」
と答えるとエルの顔色が変わった。
「やっぱり。」
「お前もか?」
「はい。」
その瞬間。
彼女の背後。
白い光が集まる。
『当然だ。』
全員。
「!?」
声。
どこからともなく聞こえた。
光が人の形になる。
白い半透明の人影。
天使のようなシルエット。
『我はHX-02セラフィム。』
『高位戦略機。』
カズキ。
「喋ったぁぁぁ!!」
レオンですら驚いていた。
「人格AI……なのか?」
羽吹だけは納得した顔だった。
「やっぱりね。」
俺は羽吹を見る。
「知ってたのか。」
「HXは元々そういうものだから。」
「は?」
「全部に人格がある。」
静寂。
「全部?」
「全部。」
つまり。
ヴァルグレイヴにも人格がある。
俺は思わず呟いた。
「聞いたことないんだけど。」
『説明を要求されなかった。』
頭の中から声がした。
ヴァルグレイヴだった。
「!?今なんか聞こえた!」
「いまさらかい!」
と鳴海が笑い転げる。
だがその空気は長く続かなかった。
セラフィムが俺を見る。
『終焉因子封印機ヴァルグレイヴ』
『危険。』
『監視対象。』
場の空気が凍る。
「監視?」
『適合者の暴走確率。』
『高。』
『世界滅亡リスクあり。』
「おい。」
透真。
「それ本気で言ってるのか?」
エルが答える。
「本気です。」
「だから私は。」
「あなたを見極めに来ました。」
俺を見る瞳。
敵意はないが警戒はある。
かなり。
その時。
支部中に警報が鳴り響いた。
ビーッ!!
ビーッ!!
ビーッ!!
オペレーターが叫ぶ。
「市街地に怪異出現!!」
「A級反応!!」
「複数確認!!」
全員が振り向く。
エルは即座に装甲を再展開した。
六枚の翼が広がる。
「話は後です。」
俺も右腕を構える。
ヴァルグレイヴ起動。
「だな。」
セラフィム。
ヴァルグレイヴ。
二機のHXが並ぶ。
だが。
その時。
セラフィムが一言。
『注意。』
『怪異反応ではない。』
全員。
「なに?」
モニターに映る。
謎のエネルギー波形。
研究員が青ざめる。
「そんな……」
「HX反応です!」
静寂。
そして表示された。
UNKNOWN HX
位置。
オランダ国内。
AGISS管理区域外。
羽吹の表情が曇る。
「まさか……」
俺はその顔を見逃さなかった。
次回予告
オランダ市街地で暴れる怪異。
共闘するヴァルグレイヴとセラフィム。
そして観測された第三のHX反応。
第三話
『獣は空から来る』




