第49話『天使はオランダに舞い降りる』
――久城透真視点
バックルームから帰還して、一週間。
ようやく神戸支部にも日常が戻ってきた。
「はい隊長。」
八重がコーヒーを差し出してきたので
「…ありがとう。」と礼をして受け取る、その向かいでは鳴海が机に突っ伏していた。
「あ゛ぁ゛〜平和って最高やな……。」
「鳴海さん、書類は終わりましたか?」
美玲が冷たく聞く。
「う゛……まだ。」
「ならさっさと終わらせてください。」
「はぁ~、やるか…」
その隣。
レオンが一般女性隊員達に囲まれていた。
「レオンさん!これ差し入れです!」
「今度射撃訓練付き合ってください!」
「サインください!」
レオンは困った顔をする。
「……なぜ俺なんだ?」
鳴海が叫ぶ。
「人が仕事してる横でいちゃつくなや!」
羽吹はソファに寝転がりながら笑う。
「また始まった。」
「お前…なにわろてんねん。」
「沸点が低い男は持てないよ?」
その時だった。
ビーッ!ビーッ!
支部中へ警報が響く。
全員の表情が変わる。
「本部?」
俺が通信を開く。
『こちらAGISS本部、特殊探索班へ緊急招集。』
「了解。」
五分後。
神戸支部ブリーフィングルーム、巨大モニターには世界地図、そこには四つの赤い光が映っていた。
「この赤い点は現在確認されているHX反応です。」
研究主任が説明する。
ロシア・オーストラリア・アメリカ・オランダ。
画面が切り替わる。
HX-02:SERAPHIM
「コレが現在時点で一番反応の強いオランダのHXです。48時間前に完全起動しました。」
静まり返る部屋。
「現地AGISSオランダ支部は交戦中。」
映像が流れる。
白銀に輝く装甲を身にまとったまるで天使のような姿。
「綺麗……。」
八重が呟く。
しかし。
次の映像。
爆発で建物が崩れ、部隊が吹き飛ばされる。
「制御できてないのか。」
レオンが言う。
研究主任は首を振った。
「違います。」
「操縦者がいます。」
画面が切り替わる。
一人の少女。
銀髪。
青い瞳。
白いロングコート。
年齢は透真達と同じくらい。
「名前はエル・ファン・ローゼンベルクです。AGISSオランダ支部の隊員です。」
研究主任が続ける。
「ですが問題があります。」
映像に映るエルがこちらを見て一言。
『ヴァルグレイヴを渡しなさい。』
部屋が静まり返る。
「……は?」
俺は思わず声が漏れた。
『HX-01Cは世界に存在してはいけません、それは終焉を呼ぶ機体です。』
通信が切れる。
羽吹が珍しく真顔になる。
「始まったね。」
「何が。」
「HX争奪戦。」
その時。
研究主任。
「本部命令です。特殊探索班、直ちにオランダへ向かってください。」
八重が頷く。
「了解。」
レオン。
「準備を始めるぞ。」
「海外とか修学旅行以来や。」
鳴海が言うと
「遊びじゃありません。」
と美玲が即座にツッコむ。
「分かっとるって。」
羽吹は立ち上がる。
「……久しぶりだ。」
「AGISSの海外支部に行くの。」
次回予告
HX争奪戦編、本格始動。
舞台はオランダ。
白き天使「セラフィム」と、その適合者エル・ファン・ローゼンベルクが透真たちの前に立ちはだかる。
次回――
第二話『白翼の適合者』




