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我儘令嬢と飼い犬執事  作者: あらまき
7-ずっと昔の大切な約束(後編)

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一か八か

 やるべき事は最初からわかっている。

 目指すべき目的の場所も今回でわかった。

 過程と目的が、ようやく一致した。

 だけど、進む為にまだ問題が残っていた。


 これから行う事は国際問題となり得る内容であり、場合によっては犯罪とさえなる。

 いや、ぶっちゃけどの国の法を定めても重罪行為である。

 だけどまあ、それは関係ない。

 それでも止まらない意思が、この船にあるからだ。

 海賊船を名乗っている彼らにとって法なんて物はぶっちゃけ重要じゃない。


 むしろ部下が拉致られたというのはこの誇りの旗に泥を塗られたのと同じ事。

 誇りを取り戻す為。

 ヴォルフの救出は海賊としての当然でありけじめでさえあった。


 テイカーとしても、自分を助けてくれなかった国なんかよりも唯一のダチの方が大切である。


 問題はそこなんかではなく……『どうやって』の方。

 これが時間との勝負である事は想像に難しくない。

 ヴォルフの境遇を考えたら、今このタイミングで殺されていてもおかしくないのだから。


 輸送中という事は、その間は殺されない()()

 もうそう信じるしかない。

 そう信じたとして、理想は追いつきぶつかり突入しての強奪となる。


 軍艦相手と考えたらあまりにも無謀な行動だが、悲しい事にそれが一番マシな成功率となる。


 だけどそれさえも叶わない。

 軍艦だから硬いとか強いとか、それ以前の話。


 なにせ追いつけないのだから。

 こちらよりも早い相手にどう追い付き突撃すれば良いというのだろうか。


 この海賊船は同規模船と速度比較すればそれなりには早い方ではある。

 だが、船全体で言えば平均かそれより若干劣る程度。

 一方相手は最高速度と言われる小型高速船を容易く捕縛出来る様な高速戦可能な軍用戦艦。


 その差は歴然の物である。

 だからこそ、問題はどうやって助けるかとなるが……。


「どうしたら早くなる? 何をすれば良い? 武装捨てればいけないか?」

 ジャックはそう皆に尋ねる。

 その言葉に、ルビィもガーネットも何も返せない。


 これはジャックが魂とも言える物。

 大切な大切な、誇り。

 武装一つでも愛を持って接している。

 それを捨てるという覚悟は尊いが……はっきり言って無意味である。

 この速度はエンジン性能による物の為武装放棄したところで速さは一ミリも変わらない。

 その行動は精々不法廃棄により逮捕される確率が増すだけでしかなかった。


 そう……どうしようもない事でしかなかった。


「俺だけで先に行くのはどうだ? 俺の船なら……」

 テイカーはそう提案する。

 この海賊船に容易に収納できる程小さな個人用の宙船。

 それは高速機動も可能でありもう少し速度が出るのだが……。


「ハイパードライブも出来ない以上余計遅くなるだけっすね。それに、例えこの海賊船でハイパードライブを行い、その後に出たとするっす。それでもぶっちゃけ誤差っす」

 そう、どちらにしても追いつけない。


 ピタス軍最強の白兵戦でかつ姫。

 その軍用艦の性能はちょっとした小細工で埋められる物ではなかった。


 そう……その差は決して浅い物ではなく、こうしている間にもみるみる広がって……。


「キャプテン。一つ、提案良い?」

 アメリアは小さな声で、囁く様にそう告げた。

 顔色は青く、足取りは重く、手は震え暑くもないのに汗を拭いて。

 それでも、その目は力強く。


「好きに言え」

「この海賊船ぶっ壊したら何とか出来るかもって言えば……どうする?」

 ルビィとガーネットは慌ててアメリアの方に目を向ける。

 ジャックがどれだけこの船を大切にしているか、どれだけ愛しているかを知っている。

 だからそれはジャックにとって辛い物で――。


「そりゃ、でけぇ借りになるぞ。良いのか?」

「うん。パパにも集るし借金してでも、それこそ身売りしてでも払うわ」

「馬鹿が。そんなんで足りる訳がないだろ」

「……だよね。ごめんなさい」

「ああ。……そんな、誰かに払わせようって魂胆が気に食わん。あいつを助けて相談して、そんで自分で稼いで払いな。方法は任せるからよ」

「それじゃあ……」

「ま、やれるだけやってみな。責任位なら取ってやる」

「……キャプテンがアニキって言われてる理由、ちょっとわかった気がするわ」

 アメリアはそう言った後、今度はテイカーの元へ。


「ごめんテイカー。貴方の船も……」

「何するか知らんがあの馬鹿助ける為なら好きに使え。スペックデータは既に海賊船に送ってある」

「あ、良いの?」

「拘りも別にない。ちょっと痛いが取り戻せる程度の物だ」

「そか。でもごめんね。大切な物を」

 そう言ってから、アメリアは部屋の中央付近に。


 そして床にそっと手を触れると、八角形の円柱がせり上がる。


 船の頭脳部とダイレクトリンク出来る端末。

 そのままアメリアは船と自分の脳を脳波という形で直通で接続した。


「何度見てもやっぱり……」

 単なる一人の人間にみるみる船が支配されていくその様子をコンソールから確認し、ガーネットは呟く。

 化物という言葉が出かかった位には、常軌を逸していた。


「ごめん、ルビィ、ガーネット。手が足りないの」

 アメリアの言葉の真意を、彼女達が気づかない訳がない。

 二人は愛する男の前では隠したいそれを、顕わにする。

 ルビィの両腕は完全開放されて異形なる機械の腕となり、コンソールもまたそれに適した人では操作しきれない物へと変化する。

 ガーネットは人ならざる証明であるプラグを耳から取り出し、船に繋ぎダイレクトリンク状態とした。


「ありがと。……うっわ。何がちょっと痛いけど取り戻せるよ。これ弁償きっついな本当」

 テイカーの船のスペックを見て、アメリアはつい泣き言を漏らす。


 流石に海賊船程ではないが、この船の三分の一位の金額があの小型船には費やされていた。

 リバースエンジニアリング不能の特注制御系統に民間レベルで見れば明らかにオーバースペックな加速バーニア。

 姿隠しの光学迷彩にレーダージャミング等々……ぶっちゃけて言えば、ご禁制の違法パーツがこれでもかとふんだんに使われていた。

 その中にはレーヴェル侯爵領の物もあったから、ちょっとだけ何とも言えない気持ちになった。


 でも、今はそれが助かる。


「アメリアちゃん。結局何しようとしてるか聞いても良い?」

 全力戦闘のバックアップを単身で成し遂げたアメリアが助力を求めてやろうとしている事。

 二十人分以上の同時操作が可能なこの腕を使い、ガーネットを外付け演算回路にしてまで為そうとしている何か。 

 それが何なのか、怖くても聞かない訳にはいかなかった。


「ほいこれ」

 コンソール上にそれが常時され、ルビィは目を丸くする。

「馬鹿じゃないの!? アメリアちゃん馬鹿じゃないの!? というか出来るの?」

「出来るかどうじゃない。やるのよ」

「馬鹿!? えーと、この馬鹿!」

 余りにも狂っていて、ルビィはもうそう言う事しか出来なかった。


 不可能だなんて否定する気はない。

 だけど、普通そんな事考えないし考えたとしても実現なんてしようとする訳がない。 

 そんなあり得ない、馬鹿げ過ぎた事であった。


「おいルビィ。結局何をしようとしているんだあいつは?」

 ジャックはルビィの慌て具合を見て、不思議そうに尋ねた。

「えっと……その、わかりやすく言えば……」

「言えば?」

「……合体と、変形……ですね」

「ほーん。……良いじゃないか」

 どこかワクワクした様子で、ジャックはそう呟いた。


 ルビィは機械と一体化し無反応となったガーネットの隣で、盛大に溜息を吐くという常識的は反応を見せた。




 

ありがとうございました。

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