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我儘令嬢と飼い犬執事  作者: あらまき
7-ずっと昔の大切な約束(後編)

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危険な香りのする普通な闇に染まった家族想いの邪悪な艦長(無能)

「つまり……あの馬鹿はピタスのわんころで、そんでわんころは今のピタスにとって奴隷って事か?」

 何となく事情をかいつまみ、テイカーはそう言葉にした。

 何となく理解出来て来たけど、何となくしか理解出来ない。


 いまいち背景が飲み込めないのはアメリアの口数が少ない事も理由にある。

 プライバシーに関わるから口が重いのと、混乱して上手く話せないのと、二つの理由で。

 ただ、ピタスは唯一奴隷を合法的に売買できる国という事実は、商売人として知っていた。

 知っていたからこそ、テイカーはピタスには近づこうともしなかった。

 奴隷というのは彼にとって、触れられたくない傷そのものであった。


「まあ、大体そんな感じ。もっと言えば、殺しても問題ない相手って事で」

 その言葉を聞いてテイカーは何故ヴォルフとダチになれたか理解した。

 馬鹿馬鹿しい程に、同じ境遇だった。


「……良い時代ってやつなんだよな。今は。……そう言ってる。皆そうだって。何だこれは……何が良い時代だ! ふざけるな!」

 テイカーは吼える様に叫ぶ。

 怒らない訳がない。

 こんな物が、世界にありふれて良い訳がない。


 自分だけだと思っていた。

 だけど、自分だけじゃなかった。


 この時代は、不幸な人は限りなく少ないと言われている。

 飢えるという言葉は死語に等しく、幸せなまま死ねる人が人類の九割であるとさえ。

 それでも尚、救われない人はいる。


 全ての人が救われる時代が来るには、人類はまだまだ若すぎた。


「だから、俺がいる」

 ジャックはそう、はっきりと断言した。

「……何?」

「俺は別に辛い過去になかった。両親にも感謝してるし、友達もそれなりにいたりする。部下は皆使える奴で助かっている。つまり……俺は闇の住民だが、不幸じゃなかった」

「闇とは一体……」

「そこはそっとしておいて……ややこしくというか空気がふわっとするから」

 アメリアの言葉にテイカーは困惑しながら頷いた。


「それで、どうしてお前がいるって話になる? 艦長さんよ」

「俺は世界を混沌に浸す邪悪な男だ。それは事実だろう。くっく。俺は俺の事が怖い。だけどな、俺は普通を知っている。光と闇が合わさりって完璧な悪って奴になる。だからまあ……」

 ジャックは小さく、ゆっくりと息を吐く。

 そして……。


「悲しい過去しかない奴らに、お前らに普通を教えてやれる。普通に扱ってやれる。……そういう俺みたいな奴が最低でも世界に一人はいる。そういう話だ」

 テイカーはきょとんとしてからジャックを見た後、ルビィとガーネットの方に目を向けた。


「お前らも、そうなのか?」

 ルビィは自分の手を開き、機械の身体を見せた。

「八割機械化して生きているわ。かかった費用は文字通り天文的っすよ。なにせ成長に合わせ毎年作り直しているんだから。ねぇアニキ」

「必要経費だ」

 ジャックは当然の様にそう言い捨てた。


 ガーネットは耳からプラグを出し、脳をとんとんと叩いた。

「半分以上が電脳化してる。法的に私は人間かどうか微妙な辺りっすね」

「誰が何と言おうとお前は人間で、俺の片腕だ」

「という事でルビィ程じゃないけど私もそれなりに迷惑かけてるっす」

「誰にかけてるか知らんがかければ良い。俺達は海賊なんだからな!」

 恰好つけてジャックはそんな事を口にする。

 ただ空気が読めない能天気な馬鹿と言えばそうであるのだが、気持ちの良い馬鹿である事に違いはなかった。


「そんで私は我儘追放お嬢様で、もう一人はヴォルフ。凄いね。全員厄介な事情持ち」

「はっ。良くもまあ集めたもんだな。……艦長さんよ。一つ良いかい?」

「何だ?」

「クルーを募集してないのかい?」

「……何?」

「あんたの部下にだったらなっても良い。らしくねーけど、そう思えてな」

「――はっ。好きにしな。だけど、一つだけ言っておくぞ」

「何だいキャプテン」

「歓迎会はあいつを救ってからだ」

「ああ、全くもって同意見だ。……本当に」

 テイカーは小さく苦笑する。


 独りで生きていくつもりだった。

 だったけれど、居心地が良さそうと思ってしまった。

 そう思ったら、もう駄目だった。


「ああ、そうだ。我儘お嬢様で思い出した」

 アメリアはぽんと手鼓を打った。

「どうしたんすかアメリアちゃん」

「いや、もう今更だけどキャプテン達に言い忘れてた事があったからさ」

「何すか? まだ何か爆弾でもあるんすか?」

「ううん。ただ、私のファミリーネームレーヴェルって言うんだ。テイカーは知ってるけど皆に言ってなかったよね?」

「へー。そうなんすか。聞いてないっすね。あれ? アニキ、どうしたんすか? そんな今日一番驚いたみたいな顔して」

「……おまえ、それ、侯爵の名じゃねーかよ……」

 ルビィとガーネットの感想は『やっぱり』だったが、何も察していなかったジャックにとってそれは、雷鳴に撃たれた程の衝撃であった。


「私としては、はキャプテンがうちの名前知ってたって事に驚いてるかなー」

 のほほんと、アメリアはそんな失礼な事を口にした。

ありがとうございました。

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