『スラヴ・サーヴァント』
『統一宇宙歴』
それは後悔と反省により生まれた。
他種族同士の根絶戦争が繰り広げられ、それに嫌気が差して異なる種族同士でも互いに尊重しあい、そして二度と戦争は止めようと誓った。
この広大なる宇宙での知的生命体は、たったの三種族しか残っていないのだから。
未だ拡張し続けても果ての見えない無限に広がる広大な宇宙であるから、きっとどこかには宇宙人と呼ばれる異なる種族が居て、そして何時の日か接触するだろうとは思われている。
だけど、統一宇宙歴となってから長い年数経過した今でも、その機会には一度も巡り会っていない。
そう……たったの三種類しかいないのだ。
それ以外全てが、戦争という悲劇に食いつぶされた。
だから彼ら三種族は、もう二度と戦争など起こさないと誓いを立てた。
ぶっちゃけて言えば、種族単位で反省し後悔しトラウマになった程に、痛い目を見過ぎたのだ。
それはあの自由でついつい欲望に負けるピタスでさえも例外でなく、未だに禁忌とし破らぬ誓いを結ぶ程。
生き残った種族同士の戦争はこの世界において絶対の禁忌。
ただし……それはあくまで他種族同士の話であり、内政干渉を良しとする様な物ではない。
極端な例を言うならば、他種族に対し戦争をしかけないのなら内乱だって放置する。
三種族同士は戦争の抑止として互いに手を取り合っているが、その間に友好関係があるとはとても言い難い。
そもそも、彼らは元々異なるルール、異なる生体を持つ文字通りの他種族である。
極端な話で言えば、三種族は常識の枠の位置が皆異なっている。
だから、ピタスのその悪癖には二種族共に苦言を示し、改善を要請し続けていた。
二種族はピタスの『それ』に限りなく迷惑を被っているにも関わらず、ただ苦言を伝えるのが関の山であった。
そして他種族に迷惑をかけているとわかって、それでピタスが政治的に不利な立場になっているとわかっていても、それを彼らは改善しようとはしない。
それは彼らにとって己の正当性を示す手段であると同時に、初代王の遺言でもあるからだ。
『スラヴ・サーヴァント』
ピタスにより生じる彼らを簡単な言葉に表すならば……人権を剥奪された棄民である。
それはピタスという人種に含まれない。
それに対しては何をしても罪に問われない。
それを人として扱う事は、それに類する事と同じ行為とされる。
スラヴ・サーヴァントはピタスという国において生きる資格はなく、通報されたらその場で殺処分さえもありえる。
二種族がそんなピタスの非道な扱いに文句を言っているのは特定種族への差別行為が人権侵害であるからというだけでない。
その人権がないという性質により、最悪な使われ方をしているからだ。
即ち――『奴隷』。
奴隷売買なんて遥か昔に禁止されているというのに、ピタスからそいつらが奴隷として出荷され、二種族の暮らす星域の治安をかき乱す。
買う馬鹿がいるのが悪いというのは確かである。
ただ、ピタスより出荷の段階が罪でない以上それを止める手段はなく、もう数百年以上はずっと、こうしてただ抗議をするだけの現状となっていた。
とは言え……問題の起きる頻度は確実に下がってきている。
もう数十年もすればこの問題は消えるだろうという位に。
別にピタスの人権意識が改善されたという訳ではない。
それは単純な話。
取引される『スラヴ・サーヴァント』そのものが絶滅寸前となっていた。
どんな種族でもスラヴ・サーヴァントと成る訳ではなく、彼らが選ばれるのは狼、犬の様な特徴を持つ者のみ。
前王朝の特徴を引き継いだピタス種だけが、スラヴ・サーヴァントと指定される。
『猫を愛で、愛し、犬畜生を駆逐せよ』
それが現ピタス王朝最初の王のお言葉。
前王朝への憎みのみで王へとのし上がった復讐者の終わりなき破滅への悪意。
それこそが彼らにとっての国家の象徴であり正当性であった。
改めるという発想なんてなく、そもそも間違った事をしているという自覚さえない。
それは彼らにとって完璧なまでに正しい事。
スラヴ・サーヴァントを根絶する事は今のピタスという国の国是であった。
既に猫系初代国王の恨みが消え去る程長い年月が経過している。
だけど、その恨みの痕跡は今もなおピタスを蝕み続けていた。
いや……恨みはきっと、もっと昔から。
前王朝である犬系のピタスもまたその前を迫害して、その前もその前も。
それはピタスにとって払拭する事の出来ない、悪しき呪いの様であった。
ありがとうございました。




