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我儘令嬢と飼い犬執事  作者: あらまき
1-我儘令嬢と飼い犬執事

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UD

 広大な世界を夢みて人類が宇宙に進出しはや幾億年――。

 そしてその果てに統一宇宙歴(UD)と呼ばれる暦が使われる様にになってから、既に二千と八百年という時間が過ぎ去った。


 人類は、惑星という名の資源をテラフォーミングし、己が望み通りの形に変えられる様になっていた。

 その技術を持って、人類の進歩は最終地点へと到達する。


 技術的な限界はまだまだ果てしなく、また宇宙開拓も全く果てが見えていない。

 宇宙の前では未だ人類は矮小なる生命体でしかない。

 それでも、土地という有限のリソースをテラフォーミングにより無限の資源にする事が可能になった事により、人類という種族はかつてない程の繁栄と安定を見せていた。


 数千光年という距離でさえ一瞬で通信できる亜空間通信。

 エンジンと船体の革新的技術更新により生まれた超高速惑星間輸送技術。

 そして最後、惑星の高機能環境適応化技術……通称『テラフォーミング』。


 テラフォーミングとは名前の通り惑星を地球の様にする事だけではなく、自由自在に、望んた形に惑星を改良する技術。

 極論で言えば、電気を生み出す為の惑星や漁業特化惑星なんてのも可能であった。


 これにより、人類は文字通り無限に拡張出来る様になった。

 幾ら数を増やそうと居住スペースが尽きる事はなく、食料に困る事もない。

 故に、その三大技術が人類の最終地点と呼ばれ、至宝技術と呼称された。

 多少大げさかもしれないが、少なくとも、革命的な技術である事だけは間違いなかった。


 誰でも必要な物を必要なだけ手に入れられる時代。

 川一本を戦争で奪い合う事もなく、餓死者が出る様な事もない。


 それでも戦争はなくなっていないが、それは人の持つ欲の為。

 少なくとも、生きる為に争うなんて空しい事をする時代は終わった。


 SFの物語で良く言われる『人類こそが宇宙の癌』という事も今の所起きていない。

 統一宇宙歴なんて恥ずかげもなく名乗っているが宇宙の端はまだ見えず、広大なる宇宙から見れば無限拡張が出来る程度の知的生命体など塵芥と何も変わらなかった。


 癌なんて大層な物どころか路傍の石というのが精々だろう。


 統一宇宙歴となるまでの道のりは本当に遠い物だった。

 開拓失敗、開拓先の奪い合い、居住惑星感格差と差別。

 そして……宇宙人との接触からの種族間戦争。


 特に種族間戦争は激しい物であり、生き延びる為に一瞬で人類国家は統一され国家形態が更新された。

 現在、一つの惑星に複数の国家を持つ事は許されず、また複数の大型惑星を確保しなければ国家として承認されない様になった。


 争い合う人類がそう決断しなければならない程、その戦争は苛烈な物であった。

 永い永い、戦争は。


 はじめは、まだ地球人同士で争っていた。

 宇宙に出られる様になる程度にでは、人は変われなかった。


 それでも開拓と拡張を繰り返していくと……地球人は宇宙人と遭遇して、そして戦争となる。

 その時初めて、人類同士の戦争なんて児戯であったのだと気付かされた。

 一切交渉が出来ずどうして相手がこちらを襲ってくるのかわからない。

 種族が違うから根絶以外に終わりが見えない。

 少なくとも、人類同士であるのならどっちが勝っても人類という種は残る分はるかにマシだった。


 他種族との宇宙戦争が始まってからは、本当に長かった。

 どれだけ戦っても、どれだけ負けても、一切終わりは見えない。

 どれだけ強くなっても、どれだけの犠牲を払っても、一方的な勝利は得られない。


 なにせ宇宙人とやらは無数に存在するのだから。

 宇宙人と遭遇する度に敵が増えるなんて戦争終わる訳がなかった。


 何年も、何千年も、もしかしたら何憶年という単位であったかもしれない。

 記録を調べる事さえ億劫になる程、その戦争は果てしなかった。

 多くの種族が滅び、多くの惑星が消滅した。

 それでも戦争は終わらず、このまま無限に殺し合い全ての種族が消滅するかと思われていたのだが……驚く程あっけなく戦争は終結した。


 絶対に終わらないはずの戦争が終わったその理由、その幾つかの要因が重なった奇跡を言葉にするのは難しいだろう。

 例えば、異なる宇宙人同士、異なる種族間で相互理解が深まった点。

 未知なる化物同士の根絶戦争ではなく、知的生命体として相手を認識した戦争となった事は非常に大きかった。

 異なる種族であってもコミュニケーションされ取れれば、愛し合う事も繁殖する事も可能であった。


 技術更新も理由に入れて良いだろう。

 戦争による高度の技術更新によりあらゆる種族の生活や社会が更新され、戦争の必要性や価値が極端に下がった。


 だが、一番の理由はきっと――『危機感』だろう。


 最初に、幾つあったのか、それさえもうわからない。

 だが、現在近辺星域にて国家を持つ知的生命体は……人類含め、たった三つの種族だけとなってしまった。

 皆が無我夢中で死に物狂いであったその戦争は、多数の文明を滅亡させ多くの種族を根絶した。


 行う価値がなく、互いに交流があり、そして危機感を共有して。


 そうして戦争は休戦状態となり、そしてそのまま戦争は終結する。

 三種族の代表による『三種族平等宣言』と、『三種族による宇宙統一宣言』によって。


 そうして新時代『統一宇宙歴』が幕を上げた。




 現在、人類は帝国制を採用している。

 その頂点にいるのは、種族間戦争の中で生まれた英雄の一族。

 彼らが頂点の帝国制が築かれ、そして追い詰められた人類は生き残る事が出来た。

 文字通りの救世の英雄である。


 帝国制となった理由が戦争であるという事は、戦争が終わった今帝国制である理由は何もない。

 ないのだが……二千八百年経った今でもまだ帝国制は維持され続けている。


 理由は単純。

 民主主義が戦争に打ち負かされ、帝国制が続き、知識ある国民達がある事実に気付いたからだ。

『あれ? こっちの方が楽じゃね?』と――。

 何千年という帝国主義の成功報酬が、彼らにそれを気付かせた。


 皇族側は逆に民主制を復活させようとしていた。

 それこそが人類の道の一つであり、その先を目指す事こそが人類の悲願であると考えて。

 もっと言えば、自分達が全ての実権を握る事が可笑しいと考えていた。

 そうして、民主主義復興の為色々とやってみて……皇族一同はおかしな事実に気づいた。


『あれ? どうやっても皇帝の座降りられないんだけど?』と――。


 民主制への以降どころか皇族を降りる事さえ出来ないという訳がわからない状態になっていた。

 当然、皇族はそんな事望んでもいない。

 自分達が絶対正義であるなんて考えた事彼らは一度もない。

 強権を振るうのはあくまで戦時中だからであって、平時でそんな権限さえあってはならない事だと考えていた。


 そうして人類は……『帝国制を廃したい皇族』と『帝国制を維持したい国民』によるグダグダな政権争いを、もう千年以上も続けている。


 その愚か過ぎるけれど腐敗していない逆に高度な政権騒動。

 それは非常に良質かつ上質なコメディーとなってしまい、残り二種族どちらにも人気の番組となり放映権を巡って莫大な外資を生む結果となっていた。

ありがとうございました。

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