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我儘令嬢と飼い犬執事  作者: あらまき
4-我儘お嬢様海賊になる?

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落差から

 慌ててアメリアを部屋に戻し、そっとベッドに寝かせてから……ヴォルフは悩んだ。

 ここからどうしようかと。


 最大規模の宙船を単独で長時間脳波コントロールを行い戦闘するなんて思いつく限りの無茶。

 それは相当の危険行為であったはずだ。

 もしかしたら脳に重大なダメージが加わっているのでは……。


 そんな不安を持って、わたわたとするヴォルフ。


 一方アメリアの心配は、鼻血が服とか毛布につかないかなんてのほほんとした物。

 なにせアメリアは脳波コントロールが無茶なんていう感覚一切ない。

 そもそも無茶でも何でもない。

 何なら今でも中枢機から一キロ近く離れているのというのにコントロール状態を維持さえしている。


 しかもただ切り忘れているなんて下らない理由だけで。


「えーっと、とりあえず診断を受けたら良いの?」

 そう言って、アメリアは個室に備え付けられた医療システムを脳からダイレクトに命令し起動する。

 医療器具を持った細いアームがわきゃわきゃと走り、内部まで含めチェックをして……。


『診断結果、軽度の疲労と興奮が見られます。精神安定剤は必要でしょうか?』

 アメリアの予想通り、何ともない。

 つまり……初めての戦闘での緊張と興奮からただ鼻血が出たというだけの事だった。

「要らないわ。代わりに止血剤ないかしら?」

『鼻腔内の出血ですか?』

「うん」

『でしたら点鼻タイプの物を処方します。他に何か不安な点は御座いませんか?』

 アメリアはちらっとヴォルフの方を見た。


「……本当に、問題ないんですね?」

「うん」

「脳波コントールの極度の負荷がかかった場合脳死状態になる可能性がある。俺はそう聞いた事があるんですが……」

「そんなのよほどの時位よ」

 そう言って、ケラケラと笑う。

 巨大艦のCPUと化す事はどう見てもその極度に当てハマるのだが……平然とするアメリアにヴォルフはそれ以上何も言えなかった。


「……失礼しました。それと、勝手に部屋に入った事も兼ね謝罪します」

「別に良いわよその位」

 アメリアは医療システムを元に戻した後、脳波コントロールを解除する。

 ぱちぱちっと一瞬だけ電気が点滅した後艦はリンク前の正常な状態に戻る。

 想定通り、冷凍庫の中身が悲惨な運命を辿らずに済んだ。


「心配させてごめんね?」

 少しだけ楽しそうにそう言葉にするアメリアに、ヴォルフは溜息を吐いた。

「大丈夫でしたら構いません」

「あはは……てもさ、心配してくれて嬉しくはあるんだよ? だって……ほら」

 そう言って、アメリアは自分の手を見せる。

 その手は、小さく震えていた。


「お嬢様。それは……」

「あはは……。今になってこう……怖さが出て来ちゃったりみたいな?」

 苦笑しながら笑うその顔色は、先程の赤さが消え今度は青くなっていた。


 脳波コントロール自体は何てことない。

 鼻歌混じりにだってやってのけるし何なら寝る時ずっとつなぎっぱなしにだってなれる。


 怖いのは、戦う事、殺し合う事。

 虚勢を張って、胸を張って、偉ぶって、ドヤ顔をして……。

 だけど、アメリアが本当の意味で戦闘に介入したのは、今日が初めての事だった。

 襲われるのも、戦うのも、とても怖い。

 何より、誰かの命の責任を持つ事が、何より怖かった。


「……そう、ですね。初陣が怖くない訳ないですよね。気づかずにすいません」

「ううん。私本番に強いから大丈夫。あはは……」

「俺に何かして欲しい事はありますか?」

「え? うーん。そう言われても……じゃあ、手を握るとかお願いして良い? なんちゃ――」

  冗談という前には、ヴォルフはアメリアの手を両手でしっかりと握っていた。


 きょとんとした顔で、アメリアはヴォルフの顔を見る。

 その、真剣な表情で手を握る、ヴォルフの顔を――。


 アメリアは、自分の頬が紅潮したのを感じる。

 その照れくささに耐える事が出来なくて……つい、噴き出し笑ってしまった。


「あ、あはははは! 意外と恥ずかしいんだね」

「失礼しました」

 そう言ってヴォルフは静かに手を離した。

「ううん。変な事頼んでごめん。でもまあ、震えは止まったからありがと」

「それなら良かったです」

 そう言って、ヴォルフは椅子をベッドの傍にまで持って来て、座る。

 まるで、しばらくそこから動くつもりはないと意思表示するかの様に。


 どうやら、よほど心配したらしい。

 少しだけ、それに罪悪感を覚えるアメリアは文句も不満も言わずその献身を受け取り介護される。

 ただ……アメリアは元来ベッドでじっとしているタイプでない為……。


「ヴォルフ。何か読み物ない? タブレットでも本でも良いから」

 退屈に飽きて、そんな提案をした。

「俺に用意された部屋の備え付けで良ければ。ただ……」

「ただ?」

「お嬢様の好きな物かどうかはわかりませんが――」

 そう言った後ヴォルフが自分の部屋から持って来た物は、海賊を恰好良く描いた漫画だったり殴り合いが主体の漫画だったり、殺し屋が活躍する漫画。

 誰の趣味なのか、考える間でもなくわかる様なラインナップの物ばかりだった。

ありがとうございました。

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