収穫しよう!
体がだるい。
病み上がりでかつ未だ完治していないこの体は、まるでオイルが切れたブリキ人形の様にがたついている。
だけど、そんな事関係ない。
病み上がりでしんどい。
そんな事口にするつもりもないし、気にもならない。
苦しいと思う心以上に、ヴォルフの心は燃えていた。
アメリアを苦してしまった。
自分が軟弱にも倒れてしまったから、主を憂いさせてしまい、その笑顔を曇らせた。
ならばどうする?
そんな事、決まっている。
これから先アメリアを少しでも笑顔になって貰う為に働こう。
その為に、ヴォルフは従者となったのだから。
ヴォルフは覚悟を決めていた。
その為に生きる事。
最悪の場合はアメリアの父親であるあの腹黒侯爵にグーパン叩き込んでもう少し家族を顧みろと説教する位はやってやろうと思う程に――。
とは言え、とりあえず今は畑の様子を見る事からだが。
エアシャワーを浴びてから着替え、畑を見て……。
「……え?」
ヴォルフは目を疑った。
「あの……」
おずおずと、後ろからアメリアが現れる。
一言謝る為に。
「その、ごめん。頑張ったつもりではあるけど……ヴォルフみたいに上手く出来てないかも。ごめん。責任も取れないのに……」
その謝罪の意味を、ヴォルフは最初理解出来なかった。
というのも、ヴォルフは今大きく混乱している。
混乱したまま、首を傾げて、固まり動けなくなる位に。
収穫は今日か明日位の予定であり、だから、既に埋まった人参が見えている。
綺麗な生い茂った、だけど鋭く切れ味の高い葉がたっぷりと。
だけど、問題はそこじゃない。
ほんのわずかにだけ露見している人参そのもの。
その見えている人参が……。
「明らかに……何か……でかくない?」
敬語も何もかも忘れ、つい素でそう呟いていた。
「……え?」
「いや、こう……大きくないですか? 人参」
「そ、そう? 星鉄人参ってこういうのじゃ……」
「いえ。普通の人参の大きさですけど……」
「そうなの? 昨日畑を手入れしていた時に見たら五十センチ位あったけど……」
「は、はい? え? 嘘でしょ?」
「ううん。本当だけど……私、何か不味い事した? もしかして失敗しちゃった?」
「いや……失敗というか……いえ、何をしたか聞いて良いです?」
「う、うん。ヴォルフのノート読ませてもらって、教本読んで、その通りに。後、ちょっと大気の空気濃度調整して星鉄人参の適合環境に調整して……後は……耕した後栄養アンプルを投与した位で……」
「……いや、その……色々聞きたいですが、とりあえず俺がわかる事から、えっと、アンプルってどうしたんですか?」
「教本に作り方が書いてあったから何とかそれっぽくしてみたよ。救命キットの中にある人用の栄養剤と合成食料と水と土を加工して。……ご、ごめんなさい。素人なのに勝手な事して。必死で……」
「いや、責めてる訳じゃないです。あの教本から外れた事しなかったらそれで。だけど……それだけじゃ……いえ、とりあえず収穫してから『輸送ボックス』に積んでおきましょう。明日か明後日には回収に来るはずですので」
「う、うん。私は何をすれば良い?」
「……後は任せてと言いましたので、休んでいて欲しいのですが……」
アメリアはしゅんと落ち込んだ顔を見せた。
「め、迷惑だったよね。邪魔だよね。ごめん……」
ヴォルフは後頭部を掻いた。
「では土を落とすのを手伝って下さい」
「う、うん! 頑張る」
正直、その酷い有様の手も落ち込んだ表情も見てられないのだが……ここで追い返す事が出来る程ヴォルフのメンタルは強くなかった。
「それじゃ、いきますね」
周囲の畑を退け、カブやダイコンを引き抜く様に、ヴォルフは人参を引っ張り上げる。
思ったよりも力が必要で、ヴォルフは時間をかけ、丁寧に全力を注ぎ……ずぼっという心地よい音が響く。
そしてそれを見て……彼らはつい、声を漏らした。
「……わぁおー」
「……凄い……大きい」
五十センチどころじゃない。
それは、一メートルを遥かに超えている。
外見は人参に近いが、あまりにサイズ違いでもはや脳が認識をバグらせる程度には、訳がわからない物となっていた。
ありがとうございました。




