099. 何で皆そんなに頑張れるんだろうな
学年対抗のリレーの時間となり、蓮真は校庭にて所定の場所に移動した。蓮真と同じスタート位置の生徒達が集まっており、皆楽しそうに話していたがリレー開始直前になるとしんと静まり返った。
『位置に着いて、よーい』
という声の直後に銃声が勢いよく鳴り、最初の走者が一斉に飛び出す。同時に一斉に自分の組の生徒や友人、家族を応援する声が辺りを轟かせた。
走者が愛花に替わると愛花は少し開けられた差を見る見る詰めて青組、赤組と抜かして僅かにトップになる。白組の方からわあっと歓声が上がる。
白組がまた赤組に抜かされたところで、赤組の走者が深言に替わる。赤組がまた白組に抜かされるも深言はペースを落とすことなく、少しでも白組の差が大きくならないよう全力で疾走しているように見えた。次の走者にバトンを渡すと体中の力が抜けたように前へ傾き、そのままコース外へ歩いてさっさと座り込んだ。
二、三人走者が替わった後、今度は玲が赤組の走者となった。赤組は白組、青組に抜かされビリだったが玲は何と他の走者より速く、他の組を抜かしてトップに躍り出た。差をそれなりに付けて次の走者へ悠々バトンを手渡し、そのままへたり込んでいる深言の隣へ移動した。様子を見るに二人で何か話しているように思われた。
蓮真の番となりコースのスタート位置を踏む。現在三組とも僅差で競走しており、蓮真と同じく位置に着いた他の組の走者の顔は目に見えて強張っている。
蓮真としては正直面倒だった。小学生のときからこういう団体で盛り上がるということに付いていけず、さして足を引っ張ない程度に力を出すことで場を凌いできた。今でもその気分には変わりない。
蓮真の近くに前の走者が近づいてきたので蓮真も走り出し、数歩走ったところでバトンが手を捉えた。
蓮真はバトンを片手に走った。僅かにビリとなっていた青組に抜かされないように走っていく。トップの赤組とも差が縮まってもう少しで追い抜けるところまで詰めた。
ここまで頑張れば別にいいか、と蓮真は判断していた。
このとき、周囲の声は気にならなかった。
さっき三人の少女達の走っている姿が何故か頭に浮かんだ。
蓮真はさらに加速し、トップを走る赤組を追い抜いた。その勢いのまま走り続け、次の走者へバトンを渡しおおせた後はドカっと腰を地面に下ろした。
(明日足が使い物にならねぇかも……)
嫌な想像をしていたとき、再び銃声が鳴った。見逃していたがどうやら決着が付いたらしい。
結果は白組が一着だったらしい。赤組が二着、青組が三着であったがアンカーの頃にはどれも大して差が無く、いつ逆転されてもおかしくない状況だったそうだ。
周囲から漏れる話し声からそう理解した蓮真はそのまま引き続き地面に座っていたが、背中から突然何かがのしかかってきて
「やったね!」
と聞きなれた女子の声が間近に聞こえた。
愛花は別の位置で休んでいたはずだが、いつの間にかこちらに来ていた。蓮真の背後から両手を蓮真の胸辺りに回しており暑苦しい。
「ああ、皆が頑張ってくれたお陰だな」
「うん、君も含めてね」
「俺は大して頑張ってないぞ」
「ああ、確かに君ならもっと速そうだね」
でもさ、と愛花は蓮真から両手を放す。
「ホントはもっと力抜くつもりだったんじゃないの?」
「……そしたら流石に周りに手抜きがバレるかもしんないだろ」
こっちとしてはクラスメイトと不要な摩擦は起こしたくない。
「ふーん」
愛花の目つきがやけに笑っているように映る。
「まあ、それでいいよ。あとさ、」
愛花は立ち上がって足についた砂を手で軽く払う。
「協力してくれてありがとう」
座っている蓮真を見下ろしながら愛花はそう言った。どんな顔をしていたのか太陽からの陰に隠れてしまい、よくわからなかった。
本日は15時にもう1話投稿します。




