093. そこらの不審者より怖いよ
蓮真と筝は横並びになって、瑪瑙小学校の方まで歩いていった。
瑪瑙小学校の校門のすぐ傍には校舎を守るかのように体育館が建っており、少し奥に行くと校舎が南面している。校庭は道路側に植えられた木々によって全容を見るのは難しいが、地面に半分ぐらい埋まった色とりどりの古タイヤが校庭の外を囲っており、中央にジャングルジムが構えているのがわかる。
「ジャングルジムやタイヤがあるのか、面白そうだな」
「別にそうでもないでしょ」
「そうか?」
「翡翠小のデカい滑り台のがよっぽど面白そうだけど」
「ああ、アレな。……一回滑ったらもう満足かな」
「あ、そんな感じなんだ……」
蓮真の感想からきちんと言わんとすることを察したように、筝はトーンを落とした。似たような気分を味わったことがあるのだろう。
小学校を過ぎて道なりに歩いていくと川に辿り着く。その川に架かっている橋は渡らず、今度は川の土手に沿って歩いていく。
「ね、アンタはさ」
筝が蓮真の横をついていきながら喋り出す。
「もう夜にあの公園に来ないの?」
「ん、当面来る予定は無いが」
基本的には夜更かしになるので、昼にいくらでも眠れる長期休暇でないと中々厳しい。次にやるとしても冬休みにはなるだろう。
「そう……」
「お前は元からあそこに通ってたのか」
「うん。といっても土日で目が冴えたとき偶にだけど」
「行くようになったのは面白そうだからってところか」
「まあ、そうかな。公園とか学校とか、夜に行ったらどんな雰囲気なんだろうって思ったらどうしても行きたくなっちゃって」
「大した度胸だな」
「そりゃ最初は不安だったよ。防犯用の道具とか調べまくって大事にしてたお小遣いを使って購入して」
「ほう」
「今だから言うけど、アンタを最初に見たときも怖くてスタンガン使うか考えたよ」
「俺の知らん内に俺の身にそんな危険が迫ってたんだな」
「だからまあ、アンタが悪い奴じゃないんだろうなってわかったときは安心した」
一体何を見てそう判断したのだろうか。蓮真には心当たりが無かった。
「どうだかな。お前のこと拉致してアレやコレや企んでるかもしんないぞ」
「そんときはアンタを防犯道具の実験台にするから覚悟してね」
筝は凄く面白そうな玩具を見つけたような満面の笑顔を蓮真に向ける。今後彼女にはとりあえず逆らわない方がいい気がした。




