091. 実力テストより放課後のがキツかった
実力テストが一通り終わり、鞄を持って教室を出ようとすると「五月雨君」と呼ぶ声がするので思わず振り返った。
「一緒に帰らない?」
「ごめん、今日は免許の更新があるから」
「何の免許よ」
口から出任せの言い訳をしつつ早歩きに去ろうとしたが、愛花はもう蓮真の横についていた。承諾した憶えは無いが一緒に帰るのは決定事項らしい。
「まず、実力テストは勉強を教えてくれたお陰で無事乗り切れそうです。ありがとね」
「どう致しまして。礼は昨日とっくに受け取ったよ」
「それと、昨日会った清野さんと松田さんだけど」
「何だ」
「放課後にいつも三人で空き教室使ってたの?」
「いつもじゃないな。週に一、二回ってとこだ」
「空き教室使ってるのはホントなんだね……」
下駄箱まで着いた蓮真達は靴を履き替え校舎を出る。
「よく今まで先生に怒られなかったね」
「俺もそう思う」
「そんな他人事みたいに」
「俺らが使ってるときに見つかったことも無いしな」
「君、幸運をそこで消費しまくってない?」
道端にぼうぼうと伸びた雑草をかわしながら進む。中々に鬱陶しい。
「……私は部活で放課後行けないのにな」
愛花が呟いた。蓮真に聞かせるつもりの無いような声の小ささだったが、蓮真の耳にはしっかり入っていた。
「……お前、あの二人ともっと一緒にいたいのか」
「え? あ、うん、そうかな」
「時々昼休みでもあの教室で過ごすことあるぞ」
「あ、そうなの?」
「あそこなら一人ぐらい増えても大したことねーさ」
「ふふ、それって私に来てほしいってこと?」
「来たいと正直に言う人に来てほしい」
「えー……」
途中から調子に乗り始めた隣の女子をとりあえず牽制しておく。彼女は少しの間だけ口を閉じていたが、やがて言葉を発した。
「私も昼に空き教室に遊びに行きたい。いいかな?」
「いいんじゃねーの」
蓮真は適当に言葉を返しておく。愛花はまた少しして
「ねえ、考えてみたら空き教室って君の所有じゃないんだし君に許可取らなくてもよくない?」
「今気付いたのか」
というやり取りをした後すごく睨んできたので蓮真は目を反らした。反らした視線の先には公園があり、その隣の林の陰で暑さを凌ぐかのように烏が数羽遊んでいた。




