009. 残りは燃えるゴミに出そうかな
夕暮れの住宅地にて、中田愛花は部活を終えて下校する最中だった。
愛花が途中にある公園の方にふと目をやると同級生の蓮真を見つけた。
蓮真はどこから持ってきたのか薪の山を地面に積み上げており、満足気にうんうん頷いていた。
そして蓮真がおもむろにバッグからライターを取り出したところで愛花が公園に入った。
「何してんの⁉」
「ん、誰かと思ったら……誰?」
「中田! 中田愛花! 隣の席でしょ!」
「ああ、ごめんごめん」
「それよりも焚火しようとしてんの? ダメだよこんな所で」
愛花が窘めるように言うと、蓮真がはてと首を傾げた。
「いや、違うけど」
「じゃあこの状況は何」
「薪で作った芸術作品を見て余韻に浸ってたに決まってるじゃないか」
「何で当然だろみたいに言ってるの」
薪がなだらかな山の形に積まれているだけのオブジェに芸術性は見出せなかった。
愛花はもう一つ訊きたいことを訊いた。
「ライターは何に使うの」
「暗くなってきたから明かりに」
「早く帰りなよ」
蓮真は愛花に構わず薪のオブジェを鑑賞していた。だが数秒後、
「飽きた」
「あっそう……」
「良かったら片付け手伝って」
「何で私が……」
と返すも、このまま放っといて帰るのも気が引けたので愛花は蓮真とともに薪を拾い始めた。
拾った薪は蓮真に言われ、そばにあった薪を背負うための道具(背負子と言うらしい)にどんどん乗せていった。
蓮真が最後の一本を積んだ薪に乗せると蓮真は愛花に頭を下げた。
「ありがとう。助かった」
「ああ、いいよ別に」
「次はこの薪で木彫りを作るか」
「急に話飛ぶのやめて」
一体どういうのを作るのやら、と愛花が思っていたら蓮真が愛花に向けて
「そうだ、お前はどんな木彫りが欲しい?」
と言うので愛花はつい「え?」と返してしまった。
「だから、木彫りにどんなのがいいか。まだ何も決めてないからな」
「何それ」
愛花はふっと笑った。言っては悪いがあまり期待はできない。でもどうせなら可愛いのがいいかと即座に思いついた動物を言ってみた。
「じゃあ猫ちゃんでお願い」
「わかった。いつまで掛かるかわからんが完成させる」
「別にいつでもいいけど、待ってるね」
暗くなった公園には二人の話し声だけが響いていた。




