010. 仕方ないので自分の部屋で使おう
青蘭中学校には体育館が二軒ある。
一つはバレーボール部やバスケットボール部等が使用する大きめの第一体育館。
もう一つは剣道部等が使用する小さめの第二体育館である。
志田朋美は昼休みに第二体育館にて友達と遊んでいたが、喉が渇き水筒を取りに一旦教室へ向かうことにした。
朋美が第二体育館と校舎を繋ぐ渡り廊下を過ぎると、給食室の付近にて男子生徒を見かけた。
彼をよく見ると、この前朋美に免許センターへの道を訊いてきたあの男子のようだった。
「やあ、また会ったね」
折角なので声を掛けてみた。彼はこちらを振り向いて少し考えるような仕草をした後、返事した。
「ああ、この前の親切な方」
「そりゃどうも。こんな所でどうしたの」
彼は先ほどまで地面の方を睨め回していた。
「この辺にブ○ックキ○ップを置こうと思って効果的な場所を探していたところです」
と言うと彼は手に持っていたそれを見せてきた。
「えっと……どうして?」
「自分の給食にあの虫が混入したらと思うと不安になりまして」
「勝手に置いても撤去されるだけだから」
「えっそんなまさかご無体な」
「バレたら指導されると思うよ」
「まあ……貴方がそう仰るなら」
彼はそう言うとブ○ックキ○ップをズボンのポケットにしまった。最後の口調が少し気になったが朋美はとりあえず話題を変えた。
「ところで、君の名前訊いてなかったね」
「あれ、そうでしたっけ」
「うん。良かったら教えてもらってもいい?」
「My Name is Remma Samidare.」
「何で英語?」
「何となく」
「はあ……五月雨君は一年かな?」
「はい。クラスは二組です」
「そう。私は二年一組の志田朋美。よろしく」
「あ、やっぱ先輩だったんですね」
「あれ、知ってた?」
この学校では学年を区別するようなアクセサリは特に制服に付いていない。朋美が気になって掘り下げてみると、
「何となく自分より大人な雰囲気を感じたので」
という答えが返ってきた。後輩からそう言われると悪い気はしなかった。
「ふふ、それじゃあ用事があるからまたね」
「はい、それでは」
朋美は自分の教室へ改めて戻っていく。次に蓮真に会ったときにはまた先輩らしい余裕のある態度で接してあげようと朋美は調子に乗っていた。




