089. そのとき爆竹を仕掛けたいという衝動が体を駆け巡った
「もしもし」
『もしもし、五月雨君? そっちから掛けてくるの珍しいね』
「来週のテスト勉強で話しておきたいことがあってな」
『え、何?』
電話の向こうの声の調子がやや変わった。
「実は他のクラスの奴らからも同じくテストを見てくれと頼まれてな」
『うん』
「どうせならまとめてと思って中田と同時に見ることにした」
『あー、なるほど。私は大丈夫だよ』
「おう、事後報告になって悪いな」
『気にしなくていいよ。教えてもらうの私の方だしさ』
「じゃ、そういうことだから」
『ん、おやすみなさい』
「おやすみ」
少しして向こうから通話の切れた音を確認した後、蓮真は各教科の教科書やノート等を鞄に整理して詰めていった。
翌日の放課後、愛花の方から声が掛かる。
「じゃ、図書室行こっか」
「ああ」
蓮真と愛花は並んで二組の教室を出た。図書室まで少し距離がある中、廊下を歩きながら愛花がこんな質問をした。
「今日一緒に勉強見るっていうのはどんな人達?」
「一組にいる知り合い二人」
「えーと、特徴とか無いの?」
「一人は本が好きで、俺と趣味が合うことが多い」
「へー、五月雨君とねぇ」
「もう一人は口が悪い」
「すごいストレートな評価だね」
「放課後は時々三人で一緒に時間を潰してるな」
「へー、そうなんだ。その二人とは図書室で待合せ?」
「ああ、一組の方は先に帰りの挨拶終わってたみたいだからもういるんじゃないか?」
「かもね」
会話している内に図書室の入口まで着いた。音をなるべく立てないように扉を開いて入っていく。テスト前日ゆえか、テーブルで問題集やノートを開いてひたすら筆を走らせる生徒が普段より多い。騒音など立てたら一気に敵意を集めそうである。
蓮真は左右を見渡し深言と玲の二人を探す。愛花は蓮真のすぐ後ろに大人しくついていく。図書室の入口から奥の方まで進むと二人を見つけた。
「おっす」
二人の近くまで寄って小声で挨拶をする。愛花の方からは何故か二人への挨拶が聞こえない。
「おう、よろし……く……?」
「ああ、どうも……?」
蓮真と愛花の方に気付いた深言と玲はそれぞれ返事をするが、同時に妙な表情を向けた。何事だろうと愛花の方を向くと愛花も二人に視線を送ったまま呆気に取られたように固まっていた。
「えっと……一緒にテストを見る相手って女子?」
数秒の間、全員黙っていたが愛花の口からそんな質問が出た。




