085. コーヒーはスタッフが美味しくいただきました
「面白かったね」
「はい」
映画が終わり、映画館から出て少し歩いたところで洋子が話しかけてきた。その流れで少し映画の感想を話、映画館を出たぐらいのタイミングで洋子が蓮真に訊く。
「ね、これからどうする?」
「ん、特に決めてないですね」
蓮真としては解散して家で時間を潰そうかとも思っていたが
「ちょっと暑いしコンビニでアイスとか買っていかない?」
と洋子が提案する。それもいいかもしれない。
「そうですね」
「じゃ、あそこ行こうか」
と洋子はここからすぐ近くのコンビニをビシッと人差し指で示した。
「蓮真君はもう選んだ?」
洋子はソフトクリーム型に整えられたバニラ味のアイスを片手で掴んでいる。蓮真はアイスのコーナーを見渡しつつ、
「自分は氷のカップにホットコーヒーを入れて飲もうかと」
「それ生ぬるい薄味コーヒーが出来るだけじゃないの……?」
そんなやり取りの後にそれぞれ買い物を済ませてコンビニの外に出た。
日陰になる所に移動して洋子がアイスのカバーを取ってアイスを食べだす。蓮真はホットコーヒーの缶を開け、氷のカップへコーヒーを注いでいく。
「ホントにやった……」
洋子が何か呟いたように口を動かしたが、周りの喧噪で上手く聞こえない。
「今日観たアニメ、興味持った?」
「少しだけ」
「フフ、そっか」
洋子の口がニッと笑う形になる。
「相馬さんに連れてってもらわなかったらずっと観ないままかもしれないですね」
「ならいいことしたのかな」
洋子がアイスの方に目を落とし、そして口に入れる。その一口がさっきのより大きいように見えた。
「ウチに遊びに来たら原作のマンガ貸してあげるよ」
「え、幾らでですか」
「いや、レンタル業じゃないんだからお金は取らないよ」
「でも無料だなんてそんな」
「いいっていいって。もうとっくに読み終わった後だし」
洋子が蓮真に微笑みを向ける。失礼ながら洋子から年上さながらの余裕を久しぶり(いや、初めてか?)に感じた。
「もし都合が空いたら連絡しなよ。ウチまで案内するから」
いつの間にかアイスを食べ切っていた洋子は片手を腰に付けそう言った。喧噪の中でも妙にはっきりと蓮真の耳へ届く快活の声音だった。




